労働基準法を知らない記者、法令違反すれすれだと気づかない記者。
労働基準法第6条「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」
これは誰であっても、有料で職業紹介をしてはいけないという規定だ。
(人材紹介会社は、法律により許可を得ています。許可を取るのはすさまじく面倒だと、どこかで聞いた)
5/18付け北國新聞4面「令和の攻防」人材確保(上)、「社員が「社員」を紹介」では、社員に知人を紹介してもらい採用を行う「リファラル採用」について書かれてあった。
その中で、地元有名企業について、見出しにデカデカと「中途増加、報奨金も」と書かれてあった。
本文にも「リファラル採用で新たな人材が入社すれば、紹介した社員に報奨金を支払う仕組みとなっている。」と。
こんなことを、新聞が書くのはヤバい。
紹介者が企業から紹介の対価をもらうことは、労基法第6条違反だ。
そして、たとえ自社の社員であっても、会社が紹介者に採用の対価を支払うのだから、これは違反なのである。
ただ、少額だから「業として」ではないとか、自社専用だからとかで、グレーゾーンとして厚労省に見逃してもらっているだけである。
つまり北國新聞は、この会社はいいことをやっている!と書いたつもりが、この会社は社員に法令違反をさせていますよ!と載せたのも同然なのである。
会社と社員が法令違反をしていることを素晴らしいと褒めているつもりで、とんでもないことをしてしまった。
新聞記者って、こんなに無知でもお金もらえるのかなと。
なお、うちでもリファラルは採用やっていて、紹介御礼金を一時賞与の形で支払っているんです。
これまたグレーゾーンだけど、対価が賃金として支払われている場合は、違法ではないと職業安定法に書かれてはいるので、どうにかなるかなと。そうでなく金一封の形式だったり、「業として」と言えるほどの多額の報奨であれば、やはり法令違反の疑いとなるため、その方式は採っていない。
あくまでも、採用協力いただいたので人事評価をした、という形で、突っつかれないように最大限の対策をとっている。
たぶん、うちに新聞の取材があっても、人事評価に活かしています、という程度でお茶を濁すことになるだろう。
さて、この記事では、リファラル採用を、「海外やベンチャー企業のほか、トヨタ自動車や富士通など国内大手が導入している」と書いてあった。
でもそもそも、高度経済成長の時期は、親や親戚や教師・大学の教授の紹介で新卒就職し、友人や同級生に高額の年収を約束して、声をかけて転職してもらっていませんでしたか?
今でも、地域密着の中小企業では、誰か知り合いでこれこれがデキる人いないか、と社員に声をかけるのは当たり前である。
今よりよほどリファラルが盛ん、というか主流だったのに、新しい採用方法として紹介されるのはまったく間違っている。
今でも、地域密着の中小企業では、誰か知り合いでこれこれができる人いないかとか、これこれの仕事をする人がが足らないんだけど心当たりいないか、など、社員に声をかけて人を探してもらうのは当たり前だ。
こんなことも知らないのかな。
新聞記者は、しょせん大企業の就職事情しか知らないのね。と、あきれた気分になってしまいました。