ひとり旅のような言葉。
まだ小さな頃
川に遊びに行くたびやっていたことは
石をたくさん積み上げてダムを作ること。
そこに堰き止められた水が流れを変えて
新たな流れができていく様子が好きで
しばらーくそれを眺めては
また違うダムを建設したりしていました。
そしてもっと好きだったのは
せっかく作ったそのダムを決壊させること。
堰き止められていた水が
一気に放流していくあの勢いある流れが
たまらなく気持ちいいんですよねー。
私こう見えてじつは
( 日焼けして、眉毛太くて、モジャってて )
本を読むことが好きだったりするのですが
ミュージシャンのエッセイで響くことが多く。
" 矢沢永吉 ” の『成りあがり』や
「ブランキージェット・シティ」の
『ワイルド・ウインター』
" 早川義夫 " の『たましいの場所』
" 峯田和伸 " の『恋と退屈』などなどなど。
そのなかでも
ここ数年で一番刺激を受けたのは
「RADWIMPS」のヴォーカリスト
“ 野田洋次郎 ” の『ラリルレ論』。
音楽だけではく
恋愛観や死生観についても綴られた
日記形式のエッセイです。
なんだか
言葉が旅をしているみたいなんですよね。
行き先を決めないひとり旅のような言葉たち。
「 大きな音に身をまかせて
自分の身体が、心がどんな動きをするか。
それが躍る楽しみ。
ビートによって、空気によって
その時のテンションによって違う。
違うに決まってる。
人間は常に変わり続けるその間の一瞬だから 」
「 個性なんて言葉は信じてないけど
そういうものを欲するのなら
どれだけこの溢れる情報から
身を守るか、隔離するかだ。
理解されない、笑われる
バカにされる、悔しい
そういうものがもしあるのなら
それこそがあなたの財産だ 」
「 差別は根深い。
いまだになくす術がわからない。
なくならないかもしれない。
人間が存在する限りは。
でも関係性はかえられる。
自分の卑しい気持ち、邪な感情
誤魔化したい本音を認めた上で
覆い隠すのでなく
より良くあるために何を表現するか。
口にするか。
それにかかってると思う。
考えぬいた上で発する言葉は
同じひと言でも違うと信じてる 」
そんなフリーダムに溢れた言葉のなかのお気に入り。
「 いいライブをしよう。
きっと、ちゃんと自分を空っぽにして
ステージに立てばいいライブができる。
お客さんを見て、ちゃんと反応して唄えば 」
これほんと
サッカーに置き換えてもそうだよなぁと。
いい試合をしよう。
きっと、ちゃんと自分を空っぽにして
ピッチに立てばいい試合ができる。
仲間と相手を見て、ちゃんと反応してプレーすれば。
いい練習をしよう。
きっと、ちゃんと自分を空っぽにして
みんなの前に立てばいい練習ができる。
選手たちを見て、ちゃんと反応して指導すれば。
プレーをしていても、指導をしていても
ちゃんと自分が空っぽになれているときって
言葉がなんの澱みもなくスーッと出てきます。
「頭が考え出した言葉」ではなく
「感覚から生まれ出てきた言葉」というか。
それが出てくるときって
川に作った石ダムを決壊させて
水が一気に放流していくあの感じに近いです。
スムーズに、勢いよく、心地よく。
そんな形で生まれ出てきた言葉が
周りの選手たちに響かないことはないんですよね。
それはきっと
まず自分自身にちゃんと響いてワクワクしてるから。
だから、結果などの未来にとらわれずに
ただその瞬間を楽しもうという空っぽな自分が
スタンダードになるようにしていきたいです。
まぁ、それがめっちゃ難しいのですが…
『ラリルレ論』に綴られた素敵な言葉を
最後にもうひとつだけ紹介したいと思います。
「 あなたが短所の欄に書いていたこと
それを笑いながら平気で長所の欄に
書き換えてくれる人がきっといる。
"違う" ということが "Gift" なんだと
言ってくれる人が。
僕もそうやって、助けられた 」
自分のなかに広がっている
世界の大きさに気づくきっかけは
誰かの言葉だったりすることがある。よくある。