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「近く」と「遠く」を行ったり来たり。

司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を
初めて読んだのは、確か20代前半のとき。

それまでの読書では味わったことのない
大きな衝撃みたいなものを感じました。


『 人間というものは
 いかなる場合でも好きな道
 得ての道を捨ててはならんのじゃ 』


『 人間は何のために
 生きちょるか知っちょるか。
 事をなすためじゃ。
 ただし、事をなすにあたっては
 人の真似をしちゃいかん 』


読み進めるにつれて
終わってほしくない気持ちは募りに募り。

そして最終巻に突入する日の朝、決めました。


「 よし、最終巻は
 この本のラストに相応しい最高な環境で読もう!」


じゃあ、どんなところが相応しい環境なのか??

それまでのストーリーを思い出しながら
頭をよぎった風景は「山あいの宿」。

うん、それだ。

すぐに宿泊できる荷物を用意して
電車に乗り、東京都で唯一の村「桧原村」へ。

イメージに合う趣のある宿を取ることができました。

1人で泊まるには少し広い炬燵のある和室。
窓の外は木々が生い茂り
聞こえてくるのは、鳥の鳴き声と川のせせらぎだけ。

我ながら、素晴らしい選択をしたなと。

露天風呂に入った後
部屋で夕食を取ることにしました。

山菜が豊富な和食のコース
飲み物は瓶ビールで始め、その後に日本酒を。

まさに自分がイメージしていた
『竜馬がゆく』のラストに相応しい最高な環境
これで心置きなく最終巻を読むことができる…


気づいたら、朝でした。


温かな炬燵の中
お腹は満たされアルコールもいい感じにまわり
そのまま見事に爆睡してしまい。

結局その宿では1ページも読むことができず
読み終えたのはまさかの帰りの電車の中という
あり得なさすぎる結末に。

でも、やっぱり最高だったんですよねぇ。

ただ面白かったという感じではなくて
なんかこう、ワクワクが止まらない感じというか。

もうかなり昔の話しですが
普通車の自動車免許を取りに行ったとき
やんちゃな雰囲気全開だった教習所の教官が
こんなことを言っていました。


「 いいか、運転をするときは
 近くを見てたらダメなんだぞ
 怖いかもしれないけど
 遠くを見ながら運転するんだ 」


「 怖くて近くばかり見ていたら
 車は真っ直ぐ走っていかない。
 逆に、怖くても遠くを見ていたら
 真っ直ぐ走っていける 」


「 近くを見ていたら遠くは見れない。
 でも、遠くが見えていれば近くは見えるんだ。
 だから勇気を出して遠くを見るんだぞ。いいな? 」


そう、『竜馬がゆく』を読んだとき
「遠く」の景色が見えていたんですよね。

自分の人生をかけて向かっていきたい景色が。

それはハッキリとした景色ではなくて
言葉でも言い表せない景色でもあるのですが
確実に自分が向かっていきたい景色ではあって。

ただ自分の場合
日々のやることに意識が行きすぎて
いつの間にか「近く」ばかりを見てしまって
「遠く」にあるはずの景色が
全く見えなくなってしまうことが多いのです。

で、再び遠くを見られるようになるのは
海外にひとり旅をしたときや
やっぱり歴史小説を読んだときなんです。

『三国志』や『水滸伝』でも遠くを見れたなぁ。

でも歴史小説って長いものが多いから
読むための時間が必要だし
何より読み切るだけの覚悟が求められる。

だからじつは
なかなか手に取れてこなかったのですが
もっと気軽に歴史のことをインプットできて
同じように「遠く」の景色を見られる
素晴らしい歴史ものコンテンツを
今年に入って教えてもらったんです。

YouTubeやSpotifyで配信中の 「 コテンラジオ 」



もう面白すぎて、移動中に聴きまくり。
とにかく一度聴いてみてほしいです。
通勤のときに聴いたりしたら最高かなと。

吉田松陰や高杉晋作
諸葛孔明、三蔵法師もよかったですが
個人的に一番オススメしたい回は「ガンジー」
心が澄んで泣きそうになってしまいました。



「近く」と「遠く」を行ったり来たりしよう。
行ったり来たりできることを選んでいこう。


『 人の世に、道は一つということはない。
 道は百も千も万もある 』


『 世に生を得るは、事をなすにあり 』


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