放課後城探部 二百二十二の城
大阪城の大きな京橋口の直ぐ側に古びた煉瓦の建物が建っていて私は訪ちゃんに従って煉瓦倉庫沿いの門跡を潜ると煉瓦の建物を見上げた。
「なかなかの年代物の建物だね。」
私は訪ちゃんに振り返ると訪ちゃんは
「千貫櫓や乾櫓には負けるけどな。」
と笑うと
「煉瓦の建物は大阪砲兵工廠の残された建物やな。明治時代に作られたらしいで。」
そう説明してくれた。
大阪砲兵工廠・・・
名前からして当時は大砲などを作っていたのだろう。
それにしても大砲を作るにしては少し狭い気がするな・・・
「大砲って戦争に使うものだから大きかったんでしょ?意外に狭い場所で作っていたんだね。」
私がそういうと流石に訪ちゃんは声を出して笑って
「あははっ・・・そんなわけ無いやろ。普通に考えて工場は別の場所やで。ここはたくさんあった施設の中の残された一つや。」
訪ちゃんがそう言って笑うものだから私はプクッと顔を膨らませながら
「私だってそれくらいのことは想像つくよ!ただ気になったから聞いたんだよ!」
そう言って顔を赤くした。
実際は腹が立って顔が赤くなったわけではなく、恥ずかしくて顔を赤くしたのだが私が少し不機嫌な風に見せたので訪ちゃんは少しだけ申し訳無さそうに
「流石にそうやんな・・・ごめんごめん。」
と手を合わせて謝ってくれた。
恥ずかしさを隠すために怒ってみせたんだけど・・・ごめん訪ちゃん・・・
私は手を合わせて謝ってくれた訪ちゃんの姿を見て内心そう思う・・・
「この外堀沿いをまっすぐ東に向かって京橋方面に歩いていくと大阪城公園駅に着くんやけど、この煉瓦の建物の北側に走る淀川沿いを大阪城公園駅までズーッと大阪砲兵工廠が続いてて大阪城の東側は全部大阪砲兵工廠の工場やってんて。大阪城公園駅の側に電車の車庫があるんやけど現在の駅の敷地は工場の跡地らしいで。」
訪ちゃんはそう言って両手をぐっと広げてそう教えてくれた。
私は大阪城はまだ本丸から東側にまだ足を運んだことがない。
なぜかと言うと行く用事がなかったからなのだが、それだけではなく、大阪城の東側は大手門や千貫櫓、乾櫓が残されている西側と比べるとどうも駅への通り道という感があって行く機会が少ないのだ。
「大阪城の東側が緑地だったりドームがあるのはそれが理由なんだ・・・」
「うん、大阪砲兵工廠は大阪大空襲の時に集中的に爆撃されたんや、大阪城の石垣に残されてる機銃跡とかはそれが名残やねんけど、念入りに空爆された結果、多くの工場だけやなくって民間の建物も破壊されたんやな・・・」
当時は日本各地は多くの空襲に曝されていたけど大阪ではまさにこの場所が攻撃の的だったのだ。
「昔の話やから、うちにはようわからんけども、わかることは今はこの建物は廃墟になってしまっているって言うことやな。」
訪ちゃんはなんだかしみじみとしてそう言った。
「勿体無いね。せっかくの建物なんだから博物館とか美術館の分館とかに使えばいいのにね。」
他の建物がどうだったかはわからないけど少なくとも私には今残っている建物が物凄く立派に見えたから使われていないことが勿体無いと感じる。
「そうやな、何かには活用してほしいよな。すごく立派な建物やし・・・」
訪ちゃんの言う通り古びて劣化している姿が見て取れるとはいえ、明治時代のモダンな雰囲気を漂わせている建物は物凄く立派で美しい。
「このまま朽ち果てる前になんとかしてほしいもんやな。」
訪ちゃんがうなずくと少しさみしげな佇まいを持つ煉瓦の建物を二人で見上げた。
しばらくして訪ちゃんはおもむろに口を開く
「さ、青屋門に行こうや。」
「うん、そだね。」
私は訪ちゃんと顔を見合わせると二人でうなずいて大阪城の外堀沿いを青屋門に向かって足を傾けるのだった。