私が注目している文学系動画投稿者
今日は私の独断と偏見で、注目している文学系動画投稿者を紹介していきます。さすがに、挙げていく方の動画全てを拝見した訳ではないので、あくまで”注目している”と書きました。
※レファレンスを付けるのがしんどいので、申し訳ないのですが、レファレンスは省きます。誤りがありましたら、遠慮なくご指摘ください。
最初にYoutuberの方から紹介していきたいと思います。(最近はYoutubeにログインしていないので、あまりチャンネル登録や高評価をしておりません。申し訳ないです。)
1.文学Youtuberムー さん
1人目は、初代文学Youtuberムーさんです。「文学とは何か?」という問いを追究していくために、古典文学や近代文学を精力的に読まれている方です。
以前は海外文学(古典・近代)の作品解説が主でしたが、最近では日本文学や現代文学の動画もアップされるようになって、年を追うごとに守備範囲を広げています。どんな作品を解説されてきたのか、少し列挙してみましょう。
ダンテ『神曲』、バルザック『ゴリオ爺さん』、プルースト『失われた時を求めて』、フォークナー『アブサロム、アブサロム!』、ドス・パソス『U. S. A.』、ガルシア=マルケス『百年の孤独』、セルバンデス『ドン・キホーテ』、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』等々
いっぱいありますね。本当はまだまだ続きます。ちなみに、太字は私のオススメ解説になります。またムーさんは、太字の5作品を通して用いられた文学的手法についての解説動画も上梓されています。個々の作品解説にとどまらず、複数の作品について俯瞰的に考察していく動画を出されているのは、(私の拝見する限り)ムーさんだけかと存じます。
最近では、三島由紀夫作品の解説や大江健三郎作品の解説に注力されているようです。また、月末にはオンライン読書会も開催しています。
〈過去の読書会のラインナップ〉:村田沙耶香『コンビニ人間』、夏目漱石『草枕』、深沢七郎『楢山節考』、ドストエフスキー『地下室の手記』、
村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』
守備範囲も広く、解説の質も高いのでぜひご覧になってください。また、ムーさんは音楽や落語にも明るく、その方面からも文学を考察なさっているところにも注目したいです。
2.純文学Youtuberつかっちゃん さん
2人目は純文学Youtuberつかっちゃんです。(意図を汲んで敬称を省きます。)つかっちゃんは、主に近代から現代の日本文学を中心に書評をなさっている方で、心理学で大学院を出ています。また、自身で小説を執筆し、文芸賞に出されたという経験があるとも話されていました。作家の視点を持っておられるということですね。
チャンネルとしては、芥川賞や野間文芸賞といった日本の文学賞・文芸賞について深く掘り下げているのが特徴的です。
ちなみに、蔵書量は圧巻の7000冊! 作品の書評のみならず、「どうやって本を集めるか?」という、読書家にとっては卑近でありながらも切実な部分について解説されているので、その点にもぜひ注目してほしいところ。
見所は本棚動画ですね。出版社ごとに動画を出されています。こんな本が出ているんだ、ということが分かります。古本屋で本を探すためのヒントになるかと存じます。
3.何か分かりづらいチャンネル さん
この方の動画は最近見始めました。少々非科学的な(スピリチュアルな)面もあるのですが、日本文学にかなりお詳しいな、と感嘆してしまいました。そういう面があるからといって、無礙にしてしまうには、どうしてももったいないかと存じます。
また、文献の引用の仕方もかなり誠実で、興味深い動画を出されています。私もこの方はまだ見つけたばかりで、ほんの2~3本しか動画を拝見していないのですが。
主に近代文学を解説されている(大江『万延元年のフットボール』や古井由吉『杳子』等)のですが、哲学書や思想書なども解説されています。内容はかなりハードですが、私も少しずつ消化できたらと存じます。
4.スケザネ さん
期待のベテラン新人といったところでしょうか。チャンネル開設自体は今月(2020年12月)の話なのですが、前々からムーさんやネオ高等遊民さんの動画に出演されていました。
元々は日本古典文学を研究されていた方なのですが、近現代文学や社会科学、自然科学、芸術といった専門外の分野にも詳しく、教養がにじみ出ています。特にスケザネさんの本棚を紹介する動画(ネオ高等遊民:哲学マスター チャンネルにある)は知的好奇心の地雷原という感じがします。おかげでどれほどのお札が書籍代に飛んでいったことか。
スケザネ図書館(スケザネさんのチャンネル名)では、ヴァージニア・ウルフ『幕間』、ディケンズ『クリスマス・キャロル』、コレット『軍帽』といった小説作品の書評や、俳句や短歌の鑑賞を動画にしたものをアップされています。
ここからはニコニコ動画で活躍されている方を紹介したいと思います。
5.ゆっくり文庫 さん
読者の皆様は”ゆっくり動画”というものをご存知でしょうか? あの、フワフワした機械的な音声で何かを解説したり、劇を演じたりする動画のことです。専門的に言えば、『棒読みちゃん』や『SofTalk』という音声合成ソフトを用いた動画ということになります。
ゆっくり文庫さんは、そのような音声合成ソフトを用いて、小説等を劇に翻案した動画を出されている方です。そして、”ゆっくり文庫”という一分野を築き上げたパイオニアでもあります。
日本文学の短編や推理小説、民話、英米文学を中心に、文学作品の翻案を何年にもわたり出されています。劇という形で配信されているので、読書習慣のない方にはうってつけです。
しかし、実は、読書家の皆様にこそご覧になっていただきたい。何と言っても、翻案のセンスが素晴らしい。原作のどの部分を削ぎ落しつつ、劇として面白くするか、このバランスが巧みなのです。原作を読まなければ、翻案との違いを比較して、ニンマリすることはできません。読書家の皆様にご覧になってほしい、と申したのには、そのような事情があるのです。
また、原作によっては、小説中に書かれていない部分を足しています。結末からの未来を想像してみたり、ifストーリーを考えてみたり……。そこからまた、面白い解釈を引き出してくる。この面白さをよく実感できるのは、森鷗外『阿部一族』の翻案ですね。「阿部一族」と「異説・阿部一族」の2本ございますので、ぜひ両方ともご覧になってください。
本当は、ゆっくり文庫さんの他にも、まだ紹介していない方はたくさんおられるのですが、長くなりましたので、ここでお開きとしましょう。