フェアトレード、ニューノーマル、グリーンリカバリー、インテリジェンスネット/2020年世界フェアトレードデー(エシカル100考、99/100)
2020年の世界フェアトレードデーに、私たちは何を考えればよいのだろうか。
もちろん、コロナの影響で受注がキャンセルされ、生産がストップし、材料や資金の調達もままならず、それどころか家から一切出られなかったりもする生産現場のみなさんを思いやり、励まし、出来ることを探るのは第一に重要だろう。
しかしそれだけでは近視眼的で、社会の当事者=解決の一部として、私たちが何を描き進むかという未来予想図を示し難い。フェアトレードやエシカルに取り組み続けている仲間がより主体的に行動するための、グランドデザインが欲しくもなる。
というわけで、コロナを経た2020年代のフェアトレード(≒エシカル)はどうなるのかを妄想してみた。
ポイントとなるのは、3つ。
・ニューノーマル
・グリーンリカバリー
・インテリジェンスネット
という言葉だと思う。3つとも気取ったカタカナ語だよ・・・。
(1)ニューノーマル
アフターでもポストでもウィズでも構わないけど、コロナを経た人類社会は新しい当たり前(ニューノーマル)を構築し運用していくことが想定される。
ニューノーマルの要素の一つは、「分散しながらつながる」状態だろう。
開疎化という言葉もあるそうだけど、これまで人類が推し進めてきた、アントロポセン(人新世)の集大成ともいえる「都市型密集社会」に変容が迫られる、ということだと思う。
ソーシャルディスタンスという言葉が飛び交っているが、これはちょっと言葉づかいがおかしくて、社会的な距離をとることではなく物理的な距離をとること。
物理的な距離をとりながら(分散しながら)、社会的な連携は密にする(つながる)ことがより求められていくだろう。
リモートワークが良い例で、リモートに分散しながらも成果を出すためには、コミュニケーションやエンゲージメントという社会的連携・つながりの設計がとてもとても重要となることを、そろそろ各企業も痛感してきているのではないか。
「分散しながらつながる状態」は、フェアトレードにぴったり。
アジア・アフリカ・南米や、日本国内や、世界各地に分散している生産者さんたちとのつながりを大切にし、心と金銭の還流をもつのがフェアトレードなはずなので。
この「分散しながらつながる」ニューノーマルが、妄想の前提となる。
(2)グリーンリカバリー
ニューノーマル下で人類が取り組むことの重要事項の一つは、もちろん経済の再生・リカバリーとなる。
そこでは済民なき経世に走るのではなく、私たち一人ひとりが当事者としてきちんと経世済民を行わなければならない。民、すなわち人類一人ひとりがダメージを負った状態なのだから。
そして、コロナとの共存体制が整ったあとは、再び気候危機が大きく立ちはだかってくる。待ったなしに。
人類がコロナに対して見せた共同戦線を気候危機にも張れるのか。価格が下落した化石燃料をじゃんじゃん浪費して、刹那的な大量生産大量消費大量廃棄に勤しむわけにはいかないだろう。
もちろん、旧来型の消費資本主義的ビジネスを短絡的に回して火事場泥棒的に「目先の利益」を追求する企業も多数でてくるだろう。意図的でなくても、旧来型から抜け出せないまま遮二無二頑張る組織は多数あるはず。
しかしながら、旧来型の消費資本主義の限界(環境や格差や人口や)が来ていることはコロナに関係なく変わらず自明であるものなので、ちゃんと経済ならびに社会の仕組みも転換をさせていかなければいけない。
サーキュラーエコノミーとか、グリーンニューディールとか、脱炭素化とか・・いろいろな呼び方はあるけれど、きちんとそういった転換を踏まえた経済再生、すなわちグリーンリカバリーが人類全体で必須となる。
グリーンリカバリーが人類全体で必須というのは、Aが持続可能な事業に転換してもBがしていなければ、結局は人類社会の行き詰まりは解消されないから。
ここはコロナと一緒で、AはやっていてもBはやっていないでは意味がない。自分のためでもあり、誰かのためでもある行動をするという、人類の共同戦線が引き続き求められるはず。
コロナ禍で得られた少しはポジティブなことは、1つは地球環境がきれいになったことだが、もう1つは人々に「利他性」を芽生えさせたことだろう。
医療現場やエッセンシャルワークで働く人を思いやり、休業により打撃をこうむった生産者やお店から何かを購入しようとするなど、誰かを思いやる心と行動がたくさん見られている。
そもそも外出自粛だって、自分が罹患しないためではなく、自分を媒介として誰かを感染させないための利他的行動なわけだし。
グリーンリカバリーの精神は「利他性」だと思う。
フェアトレードはこのような「利他の芽」を育むにはちょうどよい。
(3)インテリジェンスネット
「分散しながらつながる」なかで、「利他性」を保ちながら人類社会の経世済民をしていくため必要なツール。それは「つながりが実感できる仕組み」、言い換えれば「顔を見せあえる仕組み」となろう。
世界各地の作り手さん、運び手さん、売り手さん、使い手さん、引き取り手さん、リペアやリサイクルする人(ここ〇〇手って表現にできなかった)それぞれが、分散しながら顔が見えるようにつながっている状態。ブロックチェーン的イメージか。
当然それは情報空間となり、インテリジェンスネットという言葉がよい表現だと思う。
そもそも「分散しながらつながる」ニューノーマルは、インテリジェンスネットがなければ成り立たないと言えようか。
フェアトレードやエシカル、サーキュラーエコノミーなどに取り組む各位がコロナの停滞から再起動するときには、このインテリジェンスネットをしっかり組み込んでいかないといけない。
ここは各ブランド(自分のところも含めて)ずーーっと課題となっている点なのだと思う。せっかくいい物作りをして、豊かなストーリーがあっても、それらがつながらないようになっていて価値が発生しない(つながらないバラバラ情報には価値なんて無い)。
わかっちゃいながらやれなかったことを、みんな頑張ってやらないと。
オンラインでストーリーや商品や生産者を伝える試みは、流石に各ブランド行いつつあるので、ここは頑張ってお互い励ましあいながらやっちゃいましょう。
と同時に、フェアトレードなぞ関係なく旧来のビジネスを行ってきた社会の大々マジョリティーも、上記グリーンリカバリーの中でフェアトレード的要素を組み込んでいくことが希望的ながら想定される。
ついては、長年フェアトレードで培ってきた知見・ノウハウをそういったマジョリティー(大企業など)に提供していくチャンスも出てくるかもと思う。
フェアトレードといったって、様々な要素に因数分解される。環境のこと、人権のこと、価格構成のこと、再生産可能とすること、相互に顔が見えるようにすること、、。MECEでは全然ないけど、本当にいろいろなポイントがあり、知見・ノウハウがある。
それらをしっかり伝えながら、ニューノーマル下のグリーンリカバリーを行っていき、協働してインテリジェンスネットの構築につなげることが、2020年代のフェアトレードに必要なことなのではないかと思う。
裏返せば、企業にはこういった意図や形でフェアトレードやエシカルに関わるスモールビジネスを行ってきたブランド(=企業)を活用してもらいたいなと思う。
そのためのマッチング的なプラットフォームが必要なのであれば、エシカルペイフォワードという所はその役割を担えるのではないか、、、とも妄想している。