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エシカルは「値引き」のことじゃない。セブンイレブンの食品ロス削減『エシカルプロジェクト』の違和感(エシカル100考、101/100)

セブンイレブンが5月11日より食品ロス削減をうたって、販売期限の迫った商品をnanacoで購入すると商品価格の5%のポイントを付与する取り組みを始めました。

ネーミングが『エシカルプロジェクト』。

北海道・四国などでテスト実施されていたものが、全国に広がったとのこと。

このニュースを見たとき、『エシカルプロジェクト』というネーミングにもやもやと違和感を覚えました。

「エシカル」は「値引き」のことだと全国で広く思われてしまうのでは、という危機感も感じました(僕の過剰反応ではありますが)。

ぬぐい難いこの違和感は何なのかを考え、勢いで実際の店舗にも行き、『エシカルプロジェクト』対象商品を購入して食べてみました。

まず前提として、「販売期限の迫った商品をnanacoで購入すると商品価格の5%のポイントを付与する」ことで食品ロス削減につなげようという取り組みは良いことだと思います。効果のほどは別としても、そういう課題があるんだと認知が広がるだけでも意味はある。

じゃあ何が違和感なのかなというと、僕にとってはやはりネーミングの引っ掛かりが大きい(僕にとっては、とつけた理由は後に)。

「エシカル」というのは、とても広い概念です。

「食品ロス削減」はもちろんエシカルに入ります。だからスーパーで廃棄前に割引になっている惣菜を購入するのは、社会課題解決につながるエシカルな行為といえます。

しかしエシカルには、他にも自然保護や生物多様性や脱プラスチックやフェアトレードやオーガニックや伝統やディーセントワーク(適性な仕事、やった分の対価をちゃんともらうとかも含む)やジェンダーなども含みます。

核となるのは、「つながり」と「選択」。

社会(人や地球や未来など)とつながり、その中で自分はどうあるかを選んでいくこと。難しくいえば、社会の中での当事者性であり、世の中をみんなで良くしていくための解決の一部であり続けること。

そんな核にふれているさまざまな取り組みが「エシカル」なわけです。

図にすれば、こんな感じでしょうか。

「つながり」と「選択」のエシカル

「チワワは犬である」が成り立っても、「犬はチワワである」は成り立たず、柴犬やドーベルマンの愛犬家から異論が出るのと同じ。

「食品ロス削減はエシカル」ですが、「エシカルは食品ロス削減のこと」ではない。他にもある。ましてや「食品ロス削減のための割引やポイント付与のこと」ではない。

ということを踏まえ、僕の違和感ポイントは3つです。

(1)仕事への対価は?

『エシカルシール』を貼るために、店員さんのオペレーション負担が増している。1日に8回貼るそうです。

僕はかつてコンビニ店員だったのですが、この定期の販売期限確認とロス商品の売場撤去は大切ですが手間がかかる業務でした。

ここに、「エシカルシール」を貼るというオペレーションが加わるのはかなり手間だろうと思います。

エシカルで大切なこと。人は資源です。何よりも大切な資源です。

店員さんという大切な人材=人的資源に負荷をかけるわけですが、その分対価ってどうなってるんでしょう?

稼働に応じてきちんと対価を払うのが、フェアトレードです。

オペレーションが増えているのに何の対価もないのは、搾取というはず。

「いや、そのくらいやる暇あるでしょ」「スーパーは何度も値引きシール貼り換えやってるじゃん」というのは、仕事と報酬という考えが甘いと思います。

だって、「エシカル」って名乗っているんでしょ?そこフェアにしなきゃ。

コンビニの仕事は、何の業務をするかではなくて、何時間いるかで決まるのだ、と言われるかもしれませんけど。

(2)他の重要なエシカル要素はどうなってるの?

食についてのエシカルだと、それが自然(人間を含む)と調和した食材なのかということが大切になります。

オーガニックなどが大切にされるのはそのためですし、遺伝子組み換えや添加物を嫌がる方がいるのもそのためです。

さらに容器。脱プラスチックが進み、ゴミを減らす努力を人類全体で行っている最中です。

「エシカルシール」が貼られている食品はどうかというと、こちら。

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・・・食材としてはいろいろ入っています。この食べ物が「エシカル」ですよ!と言われて、そうだね!と言える人は少ないでしょう。

容器は、とってもプラスチックです。回収についての案内などは、そりゃ当然ありませんでした。

食品ロス削減はいいのですが、この商品に「エシカルシール」を貼られるのは・・・子供じみた言い方をすれば、嫌です。

「エシカル」は広い概念、様々な要素を含みます、どれを大切にするかはその人の選択です、とはいっても、他の多くのエシカル要素と真正面から相反するものを「エシカル」と称するのは・・・、言葉の使い方を誤りすぎだと思います。

(3)食品ロス削減が伝わるの?

そもそもこの取り組みで、食品ロスを削減しようという気運を高められ、実際に減らせるのか?食品ロスという課題があること、一人ひとりが解決に向けて取り組む行動を促せるのか?

食品ロスについても、エシカルについても、両方とも伝わらないんじゃない??と思っちゃいます。

行動経済学で「ナッジ」というものがあります。

大上段に、「食品ロスはいけない!!」と説いて行動を変えるのではなく、別にそんな意識がない人でもついつい購入などしてしまい、いつの間にか課題が解決していくような、デザインともいっていい仕掛けです。

これその「ナッジ」になってるの?

そりゃ、販売期限が近い商品を目立たせて、そういう商品を買おうという人にはわかりやすくなっている。でも特に意識がなかった人には??

そもそも、nanacoカードで購入した人にだけポイント付与という狭い対象設定なので、行動を促せるだけの誘因要素になっているのかよくわからない。

保育園のお迎えで、遅刻する人に罰金を科したら遅刻者が増えた、という有名な事例があります。

今までは申し訳なくて急いで迎えにきていたけど、金で解決できるなら後腐れなく遅刻して、金払えばいいという人が多かったそうです。人間そんなものです。

5%程度のポイントにしかならんのなら、新しいもの食べたい、という人が増えたりしないか、とか詮索してしまいます。

エシカルプロジェクトのnanacoポイントが一部寄付になったりすればいいのにね。

僕にとっての違和感ポイントは上記3つなのですが、もっと本当はあります。

1つは、(3)とやや近いけど本当に店の廃棄ロス削減につながっているのか。お店にもメリットが出ているのか?

もう1つは、コンビニのオーナー問題というか、フランチャイズ問題について。本部がフランチャイズ店舗に過重発注などをさせて経営や生活を追いこんでいる、といった問題から見て、この施策はどうなのか。

ここら辺はとても難しいので、ちょっと踏み込めません。

下記井出留美さんの記事をご参照ください。


とやかく言いつつ、まあ「食品ロス」削減の取り組みをセブンイレブンさんが全国で取り組み、発信するのはとても良いことだとは思います。

なのでもうちょっと、言葉を大事にしてほしいのに、、と思うことしきりです。少なくとも「エシカルプロジェクト」は違和感がある。

これについて、Twitterでとても正鵠を得たことをおっしゃっている方がいました。

販売期限近い商品を売り切るのに頑張るのではなく、ロスを無くすことに頑張ろう、というのはおっしゃる通りだと思います。

さらにこのプロジェクトを『食品ロス削減的ナナコボーナスキャンペーン』と名付けるというのはとってもいいし、食品ロス減らさなきゃな~、それでnanacoに加入もしちゃおうかな、と行動が促されそうです。

もやもやもやと違和感を抱えながら・・でも全国でエシカルという言葉の認知が上がって、食品ロスを削減しようという呼びかけも広がるのはまあいいことなのかな、、と自分に言い聞かせています。

今までエシカルを説明するのに、「エシカルはふんわりナチュラルきなりの服を着ることじゃない」「エシカルはアーミッシュじゃない」とか言っていたけど、これからは「エシカルは値引きやポイント付与のことじゃない」とも言わないといけないな、、、と思います。


※2020/5/14補記

井出留美さんからも「もし自分が100円のおにぎりを売ったら・・・という場面を想像してみると、私の場合はわかりやすいです。期限が迫ってきた。売り切ろう!どうしても今日じゅうに売り切ってロスは出さない!と決めたら、はたして100円のおにぎりを5円引きで売るでしょうか?しかも、全顧客の2割しかいないカード会員のみ5円引き。残りの8割は、いくら期限が迫っていても、割引ゼロです。」というコメントをいただきました。

すなわち、本当に食品ロスを無くそうと思っているのなら、そーんな間口が狭くてしみったれた施策をするだろうか??ということですね。

確かにおっしゃる通りだなあと思います。

目的が全然違うのではないか、、と勘繰ってしまいます。フランチャイズ問題が根底として大きいんじゃないかとか。。


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