電動キックボードに乗って、みなとみらいの夜景を見たかった
新たなる"乗り物"に触れてみたい
私は自転車に乗ることが多いが、どうして自転車に乗りたくなったのだろうかとふと思った。
漠然とした記憶を辿っていくと、それは小学1年生ごろだったような気がする。
姉が自転車に乗り込んで、友人達と遊びに行った時、自分はというと補助輪をつけていた。走り出せばガラガラと音が鳴る補助輪。それで満足していた。
しかし、姉の姿を見て、どうも当時の自分は恥ずかしいと一丁前に思ったようで、そこから自転車に乗るんだ。と思ったようだ。
小学校1年生の自分はすぐに自転車に乗れるように動き出した。
地元を突っ切るように流れる一級河川。その近くにある河川敷で後輪に片方だけ補助輪が付いている自転車にまたがっていた。
父親から自転車の乗り方を教わり、補助輪を取り外した。ハンドルは簡単に遊び回ってしまい、何度も何度も横転した。青かった空はすっかり橙色に変わっていて、陽も町を囲う山に吸い込まれそうになっていた。
同じことの繰り返しだったが、体が垂直に伸びて、ハンドルもガタつかせず、一直線を見ていた。
砂混じりの整備された道をゆっくりながら自転車が進む。ペダルを踏めばスピードが上がった。今になってみれば、そんな当たり前のことだというのに、やけに喜んだ。
これが自転車に乗った時の最初の記憶だ。と思う。
大人になって、ここ最近見かけるようになった「電動キックボード」
自分は自転車も運転できるし、一応は自動車の免許も持っている。
少し興味が出てきた。
その理由として、自分は免許を持っているがゴールデンペーパードライバーだ。
自動車に乗って公道を走ることは滅多にない。
だが、電動キックボードは簡単そうに見える。自転車の要領にも近そうだ。
なら、次は電動キックボードに乗ってみたい。
新たな乗り物、横浜みなとみらいの中心地で自分は電動キックボードに乗り込むことにした。
ボードに乗る前に
横浜・みなとみらいは電動キックボードを試すにはもってこいの場所だった。
電動キックボードのシェアリング事業を行っている「Luup」の展開エリアだった。
Luupは東京や大阪といった大都市圏の他に、仙台や宇都宮、広島といった観光向けにもエリアを展開しているらしい。今後も展開していくようだ。
Luupに登録する際に、下記が必要となる。
16歳以上を証明できる年齢確認書類の登録(免許証やマイナンバーカードなどの登録)
クレジットカードの登録(利用料金の支払いのため)
交通ルールの確認とクイズ(12問)に正解する
年齢確認では、今何かと政治関係で話題のマイナンバーカードがあれば、暗証番号の入力とスキャンだけで登録できてしまう。
しかし、私は暗証番号をロックさせていたため、黙って免許証を登録した。
クレジットカードの登録はVISA,Mastercard,JCB,AMERICAN EXPRESS,Diners Club,DISCOVERで登録が可能。
携帯電話キャリア支払いやPayPayなどの支払い方法は2023年7月現在では使えないようだ。しかし、クレジットカード以外にも順次対応するとしている。
交通ルールは普段生活する上で覚えるべき内容が表示され、それを元にした問題が12問出題される。
この12問の中で1問でも間違えば最初からになるので注意が必要だ。
内容としては自動車学校で出題された問題に近い気がした。ただ、そこまで意地悪な問題ではない。
全ての登録・合格をすると全てにチェックマークが付き、登録が完了する。
ちなみにLuupでは電動キックボードだけでなく、レンタサイクルも行っているらしく、クレジットカードのみの登録でOKらしい。
登録に成功すると「ポート」を選択して電動キックボードをレンタルすることが可能となる。
宿泊場所近くの桜木町駅周辺には多くのキックボードを借りられる「ポート」があった。
この日、私は21時ごろまでビルボード横浜で平野綾のライブに向かっていた。
そのライブを終えた後に、ホテル近くにあるポートから借りようとしていたのだが、近くの横浜スタジアムでプロ野球が行われていたこともあって、桜木町駅周辺のポートの状況が目まぐるしく変わっていた。
ポートに電動キックボードがあっても、バッテリーが「0」という場合もあるため、利用する際には必ず最新状況を確認してほしい。
電動キックボードとの邂逅
ホテルから歩いて5分のポートを選択した。充電が満タンのものだ。
選んだポートはマンションの一階部分にあった。エントランス近くの角に4台が並んでいた。
自転車よりも場所を取らないのだろう。かなり小さな場所に押し込もれているな、という印象を受けた。
並んでいる電動キックボードを見て、とある違いを見つけた。
ナンバープレートが全然違うのである。
これまで電動キックボードは原付として扱われてきた。
そのため、道路交通法も原付に準じて適用されてきた。そうなれば、ナンバープレートも原付と同様のもの。
しかし、先の7月1日の改正によって電動キックボードは特定小型原付という枠組みに組み込まれた。
改正されたことで、特定小型原付のナンバープレートが付けられるようになった。というわけである。
ナンバープレートに注目したらすぐに違いがわかる。
プレート上に記載されている内容も違う、大きさも原付に比べて特定小型原付は一回り以上も小さい。
原付と特定小型原付は車体の構造や大きさによって変わるようだが、アプリ上でそんな説明が無かった。これは少しどうだろうか。
7月に変わったばかりで対応しきれていないのだろうか。
本来なら免許がないと乗れないはずの電動キックボードが急転直下の改正によって免許なしでもOKになった。
望んでいた企業側も取り締まりをする公安側も対応しきれていないのではないだろうか。
この点は利用をする場合、ぜひチェックしてほしい所である。
いざ、ボードに乗ったのだが
電動キックボードに乗り込んでやりたいこと。
「みなとみらいの夜景を電動キックボードで巡り、写真を撮ろう!」
ただ、それは泡となって消えた。
運転のことばかりに気を取られてしまい、自分で撮影した写真は一つもない。申し訳ありません。
ここからはLuup公式サイトにある画像と共に紹介したい。
電動キックボードのハンドル上に付いているQRコードをアプリで読み込むと、キュイーンという未来的な音と共に、緑色に光った。
これはすごくカッコいいと思う。サイバー感があって良きだ。
スタンドを上げて、電動キックボードを歩道へ持っていこうとするのだが、これが想像以上に重い。そりゃあそうだ、25kgもあるらしい。
やっと人気のない小道に出て、蹴り出す。
電動キックボードは、片足をボードに乗せ、もう片方の足で蹴り出し、ハンドルに付いているアクセルボタンを押すと走行する。
このアクセルボタンが厄介だった。
これぐらいならこのスピードだろう、という想像を持って押すのだが、それ以上にスピードが出る。
ゆっくりとスピードが上がっていくのではなく、ボタンを押したら押した分だけスピードが急速に上がる。そして、推進力がすごい。
7月1日の改正によって、電動キックボードの上限速度が時速20kmまで引き上げられた。
そのスピードは電動アシスト自転車と同様らしいのだが、想像以上にスピード感を感じた。
なら、スピードを落としてゆっくり走ればいいじゃない。と、スピードを下げるのだが、車体がガタガタと揺れ動く。低速時と右左折のバランスの取り方が難しいのだ。
また、ブレーキも厄介だ。
自分が普段乗っている自転車はブレーキを掛けると強めに掛かるようにしている。しかし、今回の電動キックボードは軽くブレーキがかかる感じ。スピードを下げるには心許ない。それが尚更、不安感を募らせる。
ただ、乗り始めはそんなものだろう。初めて乗った乗り物に怖がるのは、自転車の時も自動車の時も同様だった。慣れてしまえば、こっちのものだ。と、桜木町駅近くの大通りに出た。
日曜日の夜。もうすぐで日を跨ぐというのに、流石は横浜の中心地。合計で6車線もある道路をスピードを上げて多くの車が走り抜ける。
いくら歩道寄りで走行するとはいえど、こんなところを走るのかと思えば思うほどへっぴり腰になってしまった。
思い切って車道の路肩で走ってみると、横を猛スピードで抜けていくベンツ、風を巻き起こしキックボードを不安定にするトラック。揺れ動く電動キックボード。
この猛者達とは並んで走れない。
震えそうになるハンドルをなんとか抑えて、慌てて歩道へ逃げ込んだ。
この不安感は想像以上だ。
不安感が生まれる理由というのは一体何か。
考えられる理由としては、自転車に比べて安定感が欠けている所だろうか。
自転車も原則車道を走行するが、場合によって歩道も走行可能である。
対して、電動キックボードは車道を走行するのが大前提である。
車道を走るというのに、小さな車輪で少しでも減速すればふらつく。
車との距離感は自転車に比べて近いというのに、不安材料ばかりだ。これが原因だろう。
久々の公道での走行で心臓が落ち着かない。
結果として、桜木町駅からみなとみらいに行くことは、その時点で諦めた。
ただ、新しい技術を捨てるのは惜しい
ここまで、電動キックボードに対してかなりネガティブな文言を並べてしまった。
実際にこの記事を作成する上でどんなルールがあって、どんな展開を迎えているのか調べてみたのだが、多くのニュースサイトでは電動キックボードに関連するネガティブな報道があった。
上記のニュース以外にも、女性が信号無視、ハンドル操作を誤ってスリップ、歩道を走行する男性・・・
これらの記事を見ていると電動キックボードというものが危険で野蛮な人が乗っているもの、という想像が生まれる。
特に、海外ではレンタルを廃止にしているところもあるぞ!と声高に叫ぶユーザーいたりと、中々に風当たりが厳しい。
実際に乗ってみて、自分には向いていない乗り物かもしれない。と思ったのは事実だ。
ただ、私は電動キックボードに完全な反対・否定的な考えである、とは言い切れない。
自分は車もバイクも普段乗る機会が無い。だからこそ、久々の公道に出て走行することに不安感が生じたのかもしれない。
裏を返せば、普段から車やバイクに乗るような人からしてみれば電動キックボードというのは新たな可能性に満ちている乗り物であるのかもしれない。
今回、電動キックボードをレンタルした際に思ったことがある。
自転車に比べて電動キックボードが優位な点はサイズではないだろうか。
観光業からしてみれば、大量に配置すると場所を取って邪魔な自転車。それに比べれば小さな電動キックボード。
桜木町駅周辺にはたくさんのポートがあったが、居酒屋の裏手にポートがあったり、雑居ビルの一角にあったりとスペースがそこまで必要ではないという点は注目すべき点だと思う。
しかも電動だ。自分の足が原動力となる自転車よりもパワーは上回り利便性は高い。
また、電動キックボードの普及によって、公道に対する世間の考えも変わっていくのではないだろうか。
普段は自転車に乗って駅やスーパーなどと出かけることが多いが、車道には自転車レーンが無い。
東京都内を走行していても、せっかく自転車レーンが整備されているというのに、路上駐車をしている車ばかり見かける。
歩道に入るとなれば、狭いところが多く、歩行者に危険が及ぶ。
それらの気になる点が電動キックボードの普及によって少しでも解消されていくのではないだろうか。
専用レーンが普及したら、電動キックボードだけでなく、自転車を利用する人にも大きな恩恵を与えることになる。
また、電動キックボードだけでなく自転車の危険行為の取り締まりが強化されることで交通ルールの新たな発展ができるだろう。
今は悪いところが出ている電動キックボードだが、少ししたら向けられる目は変わっていくような気がする。
僕は電動キックボードの事を…
初めての電動キックボードは少し苦いものとなった。
だから、今は電動キックボードの事を好きになりきれない。
ただ、もしも世間に普及した時には少し付き合い方を考えてあげてもいい。
その時は、安定性抜群の状態に進化していてほしい。
みんなが当たり前のように乗っている世の中であってほしい。
安心して乗れるような道路であってほしい。
もう一度、君と出会うことがあったならば、みなとみらいの夜景を楽しみたい。
と、思っている。