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サンライズ瀬戸・出雲は乗る前も乗った後も「奪い合い」の様相

今ではすっかり人気列車となったサンライズ瀬戸・出雲。
個室を予約するのは容易ではなく、繁忙期となれば発売1ヶ月前に全てが満席になるという、「プラチナチケット」という状態に。

まさにそれは、希望者による「寝台券の奪い合い」と言っても過言ではない状態だ。

ただ、寝台券だけでなくサンライズ瀬戸・出雲は乗った後にも別の「奪い合い」の様相が広がっていた。

サンライズ瀬戸・出雲について

このページにたどり着いた人の殆どがサンライズ瀬戸・出雲というのがどんなモノなのかを理解しているとは思うが、確認の意味も含めて特徴を並べたい。

日本では寝台列車がひっきりなしに走り回っていた時代があったが、それはすっかり過去の話となって、現在ではサンライズ瀬戸・出雲だけが定期寝台列車として運行されている。

列車は285系。1997年7月に登場、27年近く走り続けている。
個室はさまざまな種類があるのだが、それに関しては鉄道系YouTuberの動画で確認してほしい。

サンライズ出雲は東京駅と島根県の出雲市駅を結び、サンライズ瀬戸は東京駅と香川県の高松駅を繋ぐ。瀬戸は琴平駅まで延長運転されることもある。

ちなみに筆者が乗車したのはサンライズ出雲だ。

寝台券の奪い合い

そんなサンライズ出雲・瀬戸は「再注目」されている。
理由はなんだろうか。

別に日本国内で走る寝台列車が絶滅した。というわけでもない。

臨時列車として走るカシオペア号やWEST EXPRESS 銀河、クルーズトレインの瑞風や四季島も存在する。
寝台列車という存在は残り続けている。

ただ、上記の列車達は旅行代理店を介す必要があったり、高価であったりと乗りたいと思えば乗れるようなものではない。

JR東日本管内を走る四季島に関しては関東近郊を走る内容でも50万円以上も必要になる。
その高級さと比べれば、ホテル一泊分の料金を支払えば乗れて、定期的に走るサンライズ出雲・瀬戸へ注目が向くのは当然であり、必然でもある気がする。

また、昨今のコロナ禍を経験して、人々の旅行に対する考えというのも変わってきた。
新幹線や飛行機を使って高速で移動するだけでなく、確実に自分の空間を有することができて長い時間を掛けて移動する寝台列車への再評価という波が発生した。

減少傾向が続き消滅の危機に瀕していた寝台列車。
ここ最近で一気に風向きが変化してきた。旅行をする選択肢に寝台列車という選択肢が残り続けるのは良いことだ。

しかし、良くも悪くも、その風向きが第一の奪い合いである「寝台券の奪い合い」を生み出している要因となっている。

コロナ禍以前は平日であれば余裕で個室が予約できたという状態だったが、現在では平日でも確保するのが厳しい状態だというのだ。

半信半疑な気持ちを抱きながら実際に筆者もネット予約サービスのe5489から購入を試みた。
乗車日は7月17日の水曜日だ。

JRの乗車券が発売される1ヶ月前の午前10時。

サンライズ出雲の乗車日である7月17日を選択し画面を操作。5分ほど掛かってなんとかB寝台のシングルを確保。
意外とすんなり買えてしまい、拍子抜けした。

乗車日は平日。それに加えて水曜日。それもあって簡単に買えたのだろう。下手したら空席もあるかもしれない。
では、どれだけ個室は埋まっているのだろうか、と怖いもの見たさで確認をすると10時15分にはB寝台のシングルの全てが満室だった。

ど平日であっても、サンライズ瀬戸・出雲の個室を確保するには油断できないというのを実感した。
従来の駅での発売に加えてネットでも購入できることになったため、繁忙期となれば瞬殺だ。

ましてや夏休みシーズンの8月や3連休が2度もある9月にはなおのこと集中して個室を確保することが必要だろう。

個室の奪い合いをなんとか制したわけだが、この時点では第二の奪い合いが待ち構えていることに自分は気づいていない。

サンライズ出雲・瀬戸でシャワーを浴びてぇだよ

乗車日は7月。蒸し暑く、頭の毛穴から足先まで汗が吹き出す季節。
興奮度が高まる寝台列車の旅といえど体がベタつく状態でいるのはとても不快だ。可能であれば汗を流したい。それは皆が思うことである。

そんな、サンライズ出雲・瀬戸にはシャワー室が備わっており、それぞれ3号車と10号車にある。

JR東海のページより引用。

そのシャワー室を利用するためには330円のシャワーカードを販売機で購入する必要がある。

シャワーカード。使用済み。
Wikipedia:JR西日本285系電車より引用。現在は値上げが行われ330円。

サンライズ出雲・瀬戸の各定員は158名。
町中にあるビジネスホテルと同レベルの人数が同じ列車に乗り込んでいる。全員がシャワーを浴びることができるタンクは備わっていない。残念ながら不可能に近い。

となれば、何が起きるか。
それはシャワーカードの奪い合いである。

乗った後もまた奪い合い

7月17日。当日の最高気温は33度、列車が発車する21時台でも気温は29度だった。
それに加えて全身を包むかのような、ジメジメとした空気が山手線のホームから東海道新幹線のホームの端まで広がっていた。
すっかり汗が全身から滲み出てきている。顔はギトギトで腕からは玉汗が吹き出て、ベトベトと不快感が凄まじい。
こうなったなら、もう意地でもシャワーカードが欲しい状態だ。

サンライズ出雲・瀬戸は9番線から発車する。発車時刻は21時50分。

その前に列車は21時25分頃に東京駅へ入線、そこから数分後に扉が開く。という情報をネットで見つけた。
そうであれば入線時間10分前でホームに立っていれば確実にシャワーカードを入手できるだろう。と考えた。

構内図中央の9と10番線ホームから発車。9番線から発車するのが基本だが、極稀に10番線から発車することもあるらしい。

ホームに上る前に個室内で食べる夜食をJR東日本管内で展開されているコンビニ「NewDays」で確保。ビニール袋と浮足立つ感情を持って、そのままホームへと向かう。

シャワーカードが買いやすい号車があるらしい

とある情報をネット上で見つけた。
それは、サンライズ瀬戸・出雲のシャワーカードを購入する際に、シャワー室のある3号車と10号車の扉から入るのではなく、
隣の4号車と11号車の扉から乗り込むと買いやすい。らしい。

理由として、3号車と10号車の扉から入ると「ソロ」の通路を通って、ミニラウンジを通って、やっとシャワーカードの販売機にたどり着く。

それに対して、4号車と11号車の扉からだと、トイレを抜けて扉を抜けると販売機という流れでたどり着くので速い。

3号車と11号車には「ソロ」個室があり、狭い通路に「ソロ」へ入ろうとする人が密集していて、避けて通る必要と距離があってと時間を要する。
比較的早くたどり着けるため、買いやすい。ということだ。

私はその情報を頼りにサンライズ出雲側である11号車へ向かうことにした。

*この購入方法の注意点として、シングルデラックスやサンライズツインの個室が並ぶ号車でもあるため、そちらへ向かう人を邪魔することだけは避けるようにしたい。

ホームには異様な光景

21時10分頃。
ホームに上ってサンライズ出雲側の号車へと歩いていくと、途中でサンライズ瀬戸側の4号車付近を通りかかった。
ホーム上にサンライズの乗車位置が貼られているのだが、4号車の前にはすでに数名が並んでいた。

もう並んでいるのか…?
焦燥感が生まれ、人目を憚ることもせずに足早にホームを進む。
5、6、7、8と足元にある乗車位置の数字が重なっていく。そして、11号車。

乗車位置には1人の男性が立っていた。そして、その後ろにはすでに10名ほどの人が待っていた。

その時点で21時15分頃だった。

シャワーカードは何名まで買えるのだろうか?

入線時間前に並べば余裕で購入できる。そんな甘ったれた予想は完全に外れた。

1番前に並んでいた男性は半袖短パン、小さなバックパックを背負ってという格好。旅慣れた雰囲気が漂っていた。
もしかしたら21時ごろから並んでいる可能性がある。

自分が到着した段階で前には10名ほど。数分が経過した後、1人が列から抜けた。1人分進むが、ただ買えるかどうかの保証がなく、どぎまぎし続ける。

さて、ここでの問題は「サンライズ瀬戸・出雲のシャワーカードは何枚まで在庫があるのか?」というところである。

ネットという広大な情報の大地を歩くと各編成「20枚まで」という情報が転がっている。
つまり、サンライズ瀬戸で20枚・サンライズ出雲で20枚の合計40枚が売り出されていることになる。
ただし、この情報はJRが公式に公表しているわけでもなく、不確定な情報であることに注意したい

勝負のとき

21時25分ごろ、サンライズ瀬戸・出雲が入線。
その後10分後に扉が開いた。
列はゆっくりと進み、1人が中へ。また1人が中へ。と繰り返していく。

自分も11号車のデッキへ足を踏み入れる。遠くの方でチャラチャラと硬貨が落ちる音が聞こえる。
前にはまだ5人以上が並ぶ。

ゆっくりと進み、一人ひとりが購入していくと自分の番に。お金を入れるとピピーという音と共にカードが吐き出された。

なんとかシャワーカードの奪い合いを制した。

シャワーカードを手にするための心構え

たかが旅行にどうしてそこまで神経を尖らせる必要があるのか。という野暮ったいことはさておいて、シャワーカードを購入するうえで心がけたいことを上げていこう。

1. 並ぶのは21時から

確実に確保するならば、入線時間の遥か前の21時に並ぶことをおすすめしたい。正直、21時から並べばほぼ確実に購入できるはずだ。
その間に数本の列車が抜けていくので遠く見つめるのも乙なものだろう。
ただ、夏場や冬場といった外で長時間並ぶには厳しい場合もあるので、体調と相談の上で判断しよう。

2. 硬貨を用意する

シャワーカードの販売機は1000円札と硬貨を利用できる。ただし、お札の場合だと釣り銭切れを知らせる「紙幣受入禁止」というランプがあり、そのランプが点灯していると紙幣を利用できない。
自分が購入するタイミングで紙幣以外のお金を持ち合わせておらず、買えなかったという顛末は笑えないので確実に330円を硬貨で用意しておきたい。
ちなみに、列に並んでいる人の殆どが乗り込む前に硬貨を握りしめていた。

3. 思い切ってA寝台個室を取る

心構えでもなんでもない、ウルトラCの対策。

B寝台であるシングルやソロといった個室よりも上級クラスに位置する、A寝台個室「シングルデラックス」を予約するとシャワーカードが1枚貰える。
それを利用する、という手法。

ただ、シングルデラックスはB寝台のシングルやソロ以上に予約が困難であり、シングルデラックスを狙うがあまり他の個室を予約できなかった。なんてこともあり得るので中々に厳しい。

4. 買えない可能性を考え、近郊の銭湯・スーパー銭湯を利用する

サンライズに乗り込む前にシャワーを浴びることを諦めてしまうのも一つの手だろう。

東京駅近郊は電車に乗り込んで30分程度移動すれば、何件か銭湯・スーパー銭湯が点在している。

ちなみに、東京駅近くにある銀座エリアにも「銀座湯」という銭湯がある。

東京で入るのはちょっと…という場合でも出雲市駅前にもスーパー銭湯がある。さっぱりした後に出雲大社へお参りに行く。というのも良いかもしれない。

サンライズ瀬戸の始発駅である高松駅周辺には吉野湯という銭湯もあるようだ。

「なんか寝台券を買うのも、シャワーカードを買うのも大変そうだから新幹線か飛行機で移動して一泊したほうが満足度は高いんじゃない?」と思ってしまいそうだが「夢溢れる寝台列車の旅」のためには乗り越えるべき山であることは頭に入れておきたい。

サンライズ瀬戸・出雲に乗る人達に幸運を

これから迎える8月は夏休み・帰省シーズンの真っ只中。9月には3連休が2回も控えていてサンライズ瀬戸・出雲の乗車率は90%を優に超えるだろう

そうなれば、寝台券やシャワーカードは今回紹介した平日の状況よりも厳しいものが広がっているだろう。

ただ、寝台券を確保できたなら、普段見ることのできない夜景を横になりながら見たり、混雑するホームを眺める優越感に浸ることができる。

東京駅出発してすぐ
疲れた顔を見せるサラリーマンを尻目に列車はコンクリートジャングルを駆け抜ける

そう思うと、寝台列車のために神経を尖らせるのもまた非日常的と良いと思うのだけど、どうだろうか。

今回の拙文があなたの寝台列車の旅に少しでも役立てられたなら、嬉しい事だ。


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