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ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー【キャリアコンサルタントの本棚】#9
【本:ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー】
2019年に出版された、作者プレイディみかこさん自身のイギリスでの実生活をベースにしたエッセイ。(プレディさんは日本人、夫はイギリス人、そして息子の3人家族)。様々な賞も受賞され、出版当時から、気にはなっていた本なのですが、今回初めて手に取りました。(そして、何でもっと早く読まなかったのか、を後悔しました。)
イギリス社会で、人種も貧富の差も、ごちゃまぜの元底辺中学校に通いはじめた僕(プレディさんの息子)のリアルな日常が描かれているのですが、深刻な話も含めて、プレディさんの文章が小気味良く、いずれも読みやすい話となっています。各章立ては次の通り。
1 元底辺中学校への道
2 「glee/グリー」みたいな新学期
3 バッドでラップなクリスマス
4 スクール・ポリティクス
5 誰かの靴を履いてみること
6 プールサイドのあちら側とこちら側
7 ユニフォーム・ブギ
8クールなのかジャパン
9 地雷だらけの多様性ワールド
10 母ちゃんの国にて
11 未来は君らの手の中
12 フォスター・チルドレンズ・ストーリー
13 いじめと皆勤賞のはざま
14 アイデンティティ熱のゆくえ
15 存在の耐えられない格差
16 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン
多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどうくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんはおもう
生徒たち(そして親)の間で、当たり前のように、人種差別、貧富差別が当「起こる」学校生活。加えて、LBGTQを初めとするジェンダーギャップなども描かれています。イギリスという国は大変なんだなあ、と思いながら読み進めていくと、日本(自分たち)について、改めて考えさせられる章にぶち当たりました。
10母ちゃんの国にて
プレディさんが息子を連れて、故郷、九州に夏休み帰ってきた時の出来事が綴られている章です。一つは、レンタルビデオ屋での、「身分証明書」を巡巡る、店員と交わされる会話について。
自分が属する世界や、自分が理解している世界が、少しでも揺らいだり、変わったりするのが嫌いな人なんだろうと思った。日本に戻ってくるたびにそういう人が増えているような気がするのは、わたしが神経質になりすぎているからだろうか。
そしてもう一つ、居酒屋にて、中年男性の酔客に絡まれるシーン。
日本に誇りを持つ日本人ならそれじゃいかん。あんたも日本人なんやけん、日本人の心を教えんと、日本の母とは呼べんな
自分が生まれた国の人が言った言葉を息子に訳してあげられないほうが、私にはよっぽど悲しかった
この章に関しては、目の前に光景が浮かぶようでした。(あるあるのような)一方で、見たくないものを見せられた気分。とても嫌な気持ちになりました。そして、この章の終わりに書かれていたのが、上記の文。他の章とは違ったトーンで書かれた悲しい一文。
読み終えた後に、これは今の日本でも起こっているような「日常」ではないかと思い始めました。私たちのもっと身近に起きている事象なのではないか、そこに気づいていない(目を向けていない)だけではないかと。
日本における「ダイバーシティ(多様性)」、今後ますます拡大していくと思われますし、乗り越えて行かなければならないものだと感じています。そして、その過程での軋轢や葛藤を、私たちは、これから目にしていくのだろう、と思います。
本書、おススメします。ぜひ読んでみてください。