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研究の一端 海事考古学2

 次は千葉県の御宿での海事考古学調査の事例を振り返ります。振り返ると言ってもこの調査は継続中なので、調査をやっても良さそうな世の中の雰囲気を感じながら再開したいと考えております。それでは、この調査の概要をお話ししましょう。

 文末にこの研究の論文を添付しますので、詳細はそちらをご覧頂きたいと思いますが、この研究は今から約400年前に御宿沖で沈んだガレオン船サン・フランシスコ号の遺物を捜す調査を主体としています。同年代の交易船の船体が国外から発掘されていることを考えると、木造とは言え前後2つに分断した船体のどちらかが見つかるかも知れません。仮に発見されれば、確か9例目の発掘事例になるはずです。ガレオン船とは、スペイン交易で使用された貨物船のことを指しております。この船は、フィリピンからメキシコへの航海の途中で、日本近海で時化に遭遇して座礁し、文献によると船体は前後2つになり、船首部は即座に海中へ没し、船尾付近に居た大半の乗員は運良く岸近くに流されて、その付近の住民に救助されたとあります。この文献の記述から、座礁地点で没した船首部とそこから岸近くに流れてから没したであろう船尾部との2地点の可能性を探りながら調査を進めることとなったのです。

潜水調査のセオリーとしては、潜水調査時間を長くとれる浅い所から攻めてゆくパターンがありますので、先ずは海女漁がギリギリ行われていない海域から徐々に水深を深くして範囲を絞ってゆく考え方でした。

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ところが、ご覧の通りの透明度で、しかも潮流やサージが激しく、カジメが鬱蒼と繁茂している状況は非常に効率が悪いため、潜水時間は短くなりますが、もう少し調査環境が良いエリアからやるべきだとミーティング時に提案があり、このエリアの調査は時季や状況を判断して行うことになりました。では、何処を攻めるべきか?となった時これまでの概念を継承するか、あるいは覆して考えるかとなります。この時、我らのチームリーダーは覆すどころか想像を遥かに超えた領域で考えを巡らせていました。この調査を開始する段階で、予定している海域はマルチファンビームを使って海底地形がスキャンされた状態であったので、我々はその地図を頼りに場所を選定していました。そのエリアを9つに区分けしてブロック内の砂の堆積がある場所をピンポイントに調査している方針でした。
長くなりそうなので、後段にその後は分けてお話を続けたいと考えます。

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