真潮根は魔性の根
結果的に初回の調査を除いて、その後はこの隠れ根にトライし続けました。あまりウェイティングが長くなると全く潜らないのも何なので、浅い所へ移動して調査をするのですが、そんな時は大体同じような感じで浅場も潮流が尋常じゃないほど早くて、調査が進みません。また海が時化て船が出せないときは、海岸線で金属探知機を使った調査や文献資料を探しに大多喜城に行ったり、関連する場所を訪れたりしていました。チームリーダーは外国人研究者を招聘するくらい語学が堪能なので全く意思疎通に問題が無いのですが、潜水用語以外は挨拶程度しか英語表現のできない自分としては、慣れるまではこの環境は苦痛以外の何ものでもありません。相手が何を言っているのかが分かっても、それに対してどのように表現したら良いのか、タイムラグが少なくなるまでに時間を要します。基本的に、そのような環境が苦手ではないので飄々としていますが、自分の言いたいことが話せるころには調査は終わるので(笑)全然成長しないのでした。何度か会議でリーダーが抜けて、私が全てのアテンドをしなければならない日がありましたが、それはもぉ笑うしかありません。それでも皆さん人格者の集まりなので非常に優しくて、和菓子が食べれる喫茶店に行きたいとか、行った先の和菓子屋でこの原料は何だとか、これをもっと食べたいとか、ディナーは海鮮が良いとか、この魚は?調理法はどうなんだとか、沢山いろいろな質問を次から次へとしてくれるので非常に良い勉強になりましたとさ(笑)。
話を調査に戻しましょう。魘されるくらい怖い思いをしてまで潜った真潮根でしたが、それと比例するだけの成果も期待も無くなってきました。何が怖いって、減圧停止で持っているロープを離したら、自力では元に戻れないような潮の流れ、直近を数千トンクラスの船が通過して行く時の爆音と航跡波の影響、表面が濁って光が届かない海底40mでライトを頼りに遺物を探す緊張感(これは割と好きな方)などです。加えて一番怖いのが、今まで絶対にやりたくないと思っていた状況でも潜ってしまう事です。もちろん、経験やスキル、装備がともなってきたからなのですが、麻痺している感覚、あるいはそれさえも忘れている自分やメンバーが怖いのです。最後に潜った昨年の11月の第4回目の調査は、リーダーと2人だけで潜りましたが、真潮根には入らず従来のエリアで可能性のある場所をピンポイントで調査してみました。その時の印象から方向性を見直すことにして、再度船上からの測深器を使った調査を依頼することにしました。そして科研費の助成は2018年度で終了して、次からはEUからの助成金を利用させてもらうことになりました。できれば年度内に1度調査ができる体制が整ったらトライしたいと考えております。
この調査における潜水法研究の成果論文はこちらになります。
http://www.scc.u-tokai.ac.jp/iord/bulletin/files_for_bulletin/TOKAI38-17-24_TetsuCP.pdf
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