トガリモエビの産卵について
先月の話になりますが、三保真崎の2か所でトガリモエビが抱卵している状況を観察しました
これが秋の話であれば、何ら珍しいことでは無いのですが、半年遅れ(つまり真逆の時期)となると不思議に思うのも仕方がありません
複数個体が観察されたヤナギウミエラの仲間をチェックしていると、その内の1つに本種が付いていました
水中では雌であるということまでは確認できましたが、腹節に卵があることまでは気がつきませんでした
戻ってからデータをバックアップして、現像してみると抱卵している状態でした
10年ほど前に1度だけ、2月に卵を持っている個体に遭遇したことがありますが、2〜3月は浮遊期から着床(シロガヤを好みます)に移行する時期なので、不思議に感じたことを鮮明に覚えています
成長するとトガリモエビはホストに対する好みが変わる傾向があります
シロガヤ→コエダモドキ→シロアザミヤギ→ムチヤギやミゾヤギ、ムチカラマツなどのより強固な生物へと移行します
理由としては、大きさによって身を守るための擬態方法が変化するためだと考えております
これまでの観察においては、抱卵は10〜12月に見られ、年を越して観察をしたのは先にあげた1例だけです
では何故このような変化が起きたのでしょうか
これが特例なのか、あるいは今後も継続して観察されるのかでは考察は違ってきます
暖かい海域では、さまざまな生物が年に1度だけでなく、季節を通じて産卵を繰り返している種もおります
こちらの海では水温の変化が約15度あるので、生物によって産卵に適している温度帯があり、その時期に産卵をすることが知られています
当然のことながら、エルニーニョやラニーニャの影響で年差が生じますので若干の前倒しや先送りもあります
最近、色々な研究論文や文献を読んでいるとさまざまな要因によって海域のベースシフトが進行しているのでは無いかと感じております
亜温帯と解釈する方が良いのか、あるいは亜熱帯の北上と捉えるべきなのかは、気象屋さんと動植物屋さんでは違いがあるかも知れませんが、トガリモエビの抱卵をこの時期に観察して、そんなことを思った次第です
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