ベニクラゲモドキとの遭遇
ボウシュウボラの母貝を元に戻して、ベリジャー幼生のハッチアウトに貢献できた話を前回しましたが、その同じダイビングでもう一つの嬉しい出来事がありました。それは、念願であったベニクラゲモドキの触手を広げた画像が撮影できたことです。
このクラゲは、種名と不老不死というキーワードで検索すると出てくるくらい有名な種で、日本では未記載種を含めて3種が確認されています。
三保真崎では、毎年冬になると観察頻度が上がりますが、それでも遭遇する機会は1シーズンに1〜2回程度です。サーチライトを使えば、中心の赤い部分が辛うじて見えるので認識できるのですが、撮影体制に入る頃には、光から受けるストレスで触手は表紙の画像のように縮まってしまいます。
初めて遭遇してから、ここ何年もの間、どうやったら触手が広がった状態で撮影ができるのか悩みました。ライトを使って探さなければ、発見の頻度は0に近くなります。偶然に任せて中層を漂ったところで、解決策にはなりません。フィールドで、触手が広がったカットを撮影することは無理なのか?
その機会は、ボウシュウボラの母貝を元に戻し、その5日後の観察でベリジャー幼生のハッチアウトが再開されていたことを確認した時に得ることができました。まるでそれは、海からの感謝のように感じました。多分、この奇跡の撮影機会を与えてくれたのは、母貝を通じた海からの恩恵と考えるべきでしょう。これまでも、この海で多くの徳を積んできました。それは、リターンを欲した行為ではなく、自然とこの海の情景を残したいという純粋な思いからの行為に他なりません。
行為が好意につながった出来事でした。