生きる。
2020年3月。内定していたホンジュラスへの渡航が延期になって、「何とかなるだろう」と思ってから1年8ヶ月が経ちました。
それから自分の格闘技ブランドを運営したり、福祉の現場で働いたりして2021年1月にスコットランドでのコーチのオファーを受けました。この8ヶ月の間に、オリンピックを目指すとか国際的なコーチになるとか、そういう憧れは焦りと共に消えていって、「なんとか柔道と格闘技で生きていきたい」「大学時代の努力を無駄にしたくない」という焦燥感が心を覆っていきました。
そして、2020年12月にデルタ株の流行と共にスコットランドの話も立ち消え、ほとんど全ての可能性を諦めました。
「コロナが落ち着けば」
ポジティブに見える字面も、1年で2度も人生が狂った自分には何の慰めにもならず、別の道で生きていくための準備をしながら余生を楽しむように道着を着続けました。
お陰様で高校柔道部のコーチや道場の営利化、ブランドの業務拡大など、柔道や格闘技で少しずつながら生活できるようになって、もう海外に行く必要もないくらいどっぷりと日本の柔道界・格闘技界に浸かりながらこれからどうやって自分の仕事を大きくしていこうかと考えていました。
そして、今年の8月にイギリスのビザが降りました。
「降りるわけが無い」という気持ち、言ってしまえば記念受験的に申し込んだビザが降りて「海外に行っていい」「お前の好きにすればいい」と言われたような気分でした。
日本でやり続けるつもりだった仕事と、イギリスでこれから築けるかもしれないキャリア。どちらを選んでも自分の納得のいく選択だし、どちらを選んでも後悔する選択です。
スコットランドのジムに連絡を入れれば「フルタイムで雇いたい」と言われ、高校の大会に行けば「これは上を目指せるのでは」と言われ。
葛藤の波が毎日押し寄せる中で、僕はスコットランドに行く事を決めました。
道場の事も、部活の事も、自分が請け負っているクラスの事も、ブランドの事も、全部を同じクオリティで続ける事はできないけど、信頼できる仲間たちにお願いして託しました。大司、剛、ブライアン、飯田、央賀、比家くん、武田先生、ありがとうございます。
もしも沼田がいなくて納得のいかない事があれば、それは匙を投げた僕のせいだし、もしも沼田がいなくなって上手くいくことがあれば、それはあるべき形に成ったのだと思います。
過去に2度も色んな人を巻き込んで裏切ってしまったので、渡英する事をSNSで公表する事は今日まで控えていました。「また同じようにキャンセルになるかも」と不安がいっぱいな数ヶ月でしたが、なんとか出発の日を迎えられました。
お待たせしました。1年半ぶりに沼田哲哉を世界にぶつけてきます。それが自分が生きている証明にするために。
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