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現代詩「鐘」

鐘が
けたたましく
空を
ゆすっている
私の
黄色い夢の中で

装甲車が
見事に粉砕されていく世界で
収穫されることのなかった
麦が
塩辛い水に変る

涙か
汗か
海か

逃走していくラフマニノフ
燃えている
巨大な両手で
鍵盤を叩きながら
今日も
地上の愚鈍を
叫ぶのだ

もっと、もっと
鐘を揺らせ!

空中で浮遊し
暑くなるのは嫌だ
と、
呟いている
赤ら顔の少年よ。

もっと、もっと
頭蓋を揺らせ!

風か
光か
月か

螺旋階段を降りたら
きっとお気に入りの
あの子に逢えるはずだから

きっと
安寧の鐘が
鳴り響くから

世界は君のものだ
あいつらのものじゃない

鐘が
けたたましく
空を
ゆすっている
私の黄色い夢の中で

あの子に逢えたら
どうか手紙を送ってくれよ

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