聖剣伝説 Visions of Mana エピローグ解説

vomの終わり方はあやふやでよくわからない、とか救いは無かった等のコメントを見かけたので、エピローグ部分をかみ砕いて日本語で解説してみた。


マナの聖剣によってディアフォロスを打ち倒した後、マナの樹の女神は「大いなる愛を育む者」として彼を許し、さらに遠い未来で転生輪廻したセルリアとの再会を堅く約束する。女神はディアフォロスを憎んでいたわけではなく、むしろ初めから深い理解と慈しみの眼差しを向けていたのだ。なお聖剣そのものは、ディアフォロスの失われた右腕の代わりと同じく、マナの樹の一部が具現化したものであった。
その後、ヴァルはライザ、オーリン、そして友達――御子たちと別れの時を迎える。だが、エンディングの断片的な場面が示すように、彼らの絆は冒険の後も途切れることはなかった。

数十年の時を経て物語は静謐なティアナ村へと場面を移す。老境に達したヴァルは穏やかに最期の時を迎えようとしていた。彼を見守る村人たち――結ばれた人との間に授かった子や孫たちなのか、生涯独身の身で集った弟子たちなのか、あるいは慕い寄り添った村人たちなのか定かではないが――の姿からは、元御子にして魂のモリビトであった老ヴァルへの深い愛情が伝わってくる。そして窓際で静かにカーテンを閉める女性のその仕草にはどことなくコーダのキャラクエストでティアナ村の溶岩まんじゅうを薦めた幼い少女の面影を思い起こさせるが、思い違いかもしれない。これらの場面は魂石がマナの樹へ捧げられることはなかったことも静かに物語っている。

ヴァルが亡くなった次の瞬間彼は聖域のマナの樹の前で目覚め、若かりし日の姿に戻っていることに気付く。そこで女神の守護者コーダとの静かに最後の別れを交わすが、それは先祖への敬意と感謝が溢れた瞬間でもあり、同時に引継ぎでもあった。

突如、薔薇色のフラミンゴの群れが舞い上がり、その光景にヴァルが見とれた瞬間、樹の麓にマナの樹の女神の姿が現れる。見る者にやさしさが伝わってくるあの特徴的なたれ目の澄んだ空色の瞳、開いた額の髪型に紫の花を添えて。ヒナが新たなマナの樹の女神として転生した姿だった。時代遅れになってしまった――かつての女神とコーダ、そして御子たちの魂石による古い循環――は終わりを告げ、新たな時代の幕が開いたのだ。

マナの循環はコーダが第5章で語ったように「モンスターを倒すことでマナを巡らせる」という原初の姿に立ち返る。ディアフォロスなき今、世界の崩壊の危機は去り、人々が争いを避ける限り、神獣も静謐を保つだろう。とはいえ旧女神の警告の通り、新たなディアフォロスや大臣の出現に備えねばならない。またいずれ彼らの力では太刀打ちできない試練が訪れるかもしれない。その時には新たな英雄と女神が現れることだろう。だが、その時まで先人たちのように、何千年、何万年という時の流れの中で、情熱家のヒナとお人好しのヴァルは、熱意と愛を保ち続けながら永劫の中を見守り続ける。ヒナが大好きな、そしてヴァルと御子たちが救おうとしたクィ・ディールの世界と連綿と続くこの世界の伝統と風習を。

物語の最後で新たな守護神が世界樹の女神を抱きあげくるりと踊る。それは第1章で冒険に出る前の祭りの二人の姿と重なり合い、物語は完全な円環を描いて幕を閉じる。

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