13. 声 ききとりから 主婦 五十一歳
うちの子も、もう二七になったんだがね、その子が野深の小学校を卒業したとき、市街の中学校へやったらいいといわれたんですよ。だけど、市街の中学といったら遠いから自転車買ってやらないといけないでしょう。それで近くの上野深の中学へやることにしたんですよ。
上野深の学校へ行ったら「アイヌ、アイヌ」って、みんながバカにするから行きたくないっていうんです。
だけど「アイヌでもなんでもいっしょうけんめい勉強すれば、バカにされないのだからがまんしていきなさい。」といってやったんですよ。
そのころ、アイヌの子が学級に四人いたのですね。
うちの子は、学校へ行っていいかげんたったと思ったら、泣きながらもどってくるんです。
「どうしたの?」
と聞くと、
「学校へ行く途中、アイヌきた、アイヌきた、こらアイヌ、ここはおまえのくるところでないぞって‥‥。」
それだけでなく「ゴリラ」とかなんとか、とんでもないこというんですって。
教室の中にはいるとね、
「アーイヌがきたから、教室の戸をあけろ。少し教室の空気を入れかえなきゃ、教室の中くさくてかなわんぞ。」
といって、教室の窓をあけるんですって。
そんなようにいじめておいて、お昼のごはん食べるときになったら、
「アイヌ、おまえ、なんでその弁当食べるんだ。ホー」
ってね。
うちは田んぼがあったから、米のめし持っていったでしょう。だから、そういってバカにするのね。バカにする人たちの弁当といったら、開拓にはいった人たちなもんだから、ひえなんだってさ‥‥。
休み時間、ひとりで教室にいて勉強していれば、
「おう、アイヌの頭の毛は、馬のしっぽと同じだ。」
といって、頭つかんでぶたれるんですって。
それでもわたしは、
「おまえ、どんなにいわれても、しんぼうして学校へいってくれ。」
って、毎日、だしてやったんですよ。
*** 1 今日まで生きてきて
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