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子どものもつ力を信頼する 【シリーズ・共に育つ】

子どもはすごい! おもしろい!

 乳幼児グループ(詳細はページ下部)の皆さんが書かれた成長記録を読むと、子どもの“すごい! おもしろい!”ようすが見られます。

  • イタズラをして叱られると目をそらしたり、別のものをいじり出したり…。 (1歳3カ月)

  • 父が叱ると目を合わせずに話を聞く。そして適当に返事をして、最後はおどけ顔でごまかす。 (1歳5カ月)

 都合の悪い時の切り抜け方を、一体どのようにして獲得するのでしょう。すごいですね。

  • 動物園へ行く。いつも図鑑で見ていたライオンやキリンが、なぜ目の前に! 「ほんもの?」とびっくりし、そのあとは興奮して声を出し、指さす。 (1歳4カ月)

 初めての出来事に出合った時の子ども。なんておもしろいのでしょう。毎日、発見の連続です。

子どもの持つ力

  • 姉が母に叱られて泣いていると、ティッシュを取って差し出したり、転んですりむいた所を指して「いたーい」と顔をしかめたりする。 (1歳10 カ月)

  • 最近、自転車のシートに座るのをいやがる。ある日、遠出をするので、子どもを無理やり自転車のシートに乗せた。そのうち眠ってしまい、起きたら機嫌が悪い。もしやと思い、さっき無理やり乗せたのは、あなたの安全を守るためである、と説明すると落ち着いた。 (1歳11 カ月)

 この記録を読むと、2歳前の子どもでも、周囲の世界のことや大人の思いをどれだけ深く感じ取り、また相手の気持ちに共感して生活しているかがよくわかります。そして、“もしや”と思えたお母さんの感じ方が素晴らしいですね。子どもは、大人が思う以上の理解力、共感力、発見力、想像力、冷静さ、自尊心、本当の優しさや勇気、自己形成力、好奇心をもっています。
 私自身も、子育て中に“えー、子どもってどこからそんなことを感じ取っているの”と思うことがありました。それは、ひと匙目の離乳食を、“やっとできた、食べてね”と、期待をこめて娘の口に近づけた時のこと。6カ月くらいだった娘が、プイと横を向いたのです。せっかく作ったのにと、びっくりするやら腹が立つやら…。きっと私の真剣さが、表情や体全体からにじみ出て怖いくらいだったのでしょう。それを娘は敏感に感じ取ったのだと思います。
 大人が、“オーディオブック”を聞きながら、またスマホやタブレットを見ながらの子育て。子どもは大人の気持ちが自分へ向いていないことを感じ取っています。子育てに虚しさを感じる時もあるでしょうが、子どもは、今を一緒に過ごそうとしている大人の姿勢を感じつつ育つのです。

子どもへの尊敬の念

 子どものもつ力を感じるには、大人に少しの余裕が必要でしょう。次はこれをしなくては、次は、次はとせわしい生活をしていると、子どものもつ力を感じ取れません。一歩立ち止まって、一体どうするのかな、どうなるのかなと思いつつ、困ったら子どもと一緒に考えようという気持ちでいると、思いがけない子どもの力に出合えますよ。
 子どもは守られる存在なので、大人の世話がなければ生きてゆけません。そのため、大人は、子どものもつ力を過小評価しがちです。しかし先にも書いたように、子どもには子どもなりの感じ方、考え方、表現の方法があり、大人とは違います。
 子どもなりの、すごい! おもしろい!を感じ取ること、それが子どもを一人の人として尊敬し関わることにつながるのだと思います。

榎田二三子 (武蔵野大学名誉教授・保育学)
出典: 乳幼児だより 第693号 2019年2月

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