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夢幻星#22

なんだこの映画、、ありきたりすぎる展開でちっとも面白くない。
最近話題になっているらしい映画は、俺の心には全く刺さらなかった。
真珠は面白いと思っているのだろうか?
気になって隣の席を見てみると、なんと寝ていた。
おいおいマジか。いくらつまらないからって寝ることはないだろ。
起こそうと肩を揺すってみると、重たそうな瞼を開けて、
「あ、ごめん。この映画面白くないから寝ちゃってた」
なんて言ってる。
「それは俺も同感。確かに眠くなる。時間の無駄だし出よっか」
真珠の手を取り、他のお客さんの迷惑にならないように、そっと外に出た。
「途中で抜けてよかったの?映画見たいって言ってなかった?」
「うん。まぁ動画作りの参考になればなって思ったけど、面白くなかった」
「やっぱ麦くんもそう思った?うちにも全然刺さらなかった」
ああいう恋愛系の映画は女の子が好きそうな感じするけれど、真珠はそうじゃないっぽい。
「どう?最近動画作りの方は?」
首に巻いたマフラーに顔を埋めながらの質問に俺はちょっと動揺した。
というのも、ここ最近あまり動画作りに集中できていない。
真珠が県外の会社に就職するという話を美咲から聞いたのは1週間前だ。
なんで就職が決まる前に相談してくれなかったんだ!って責めたけど、動画作りに集中してるし、邪魔したくなかった。それに忙しいからって連絡とか全然返してくれなかったんだもん。話聞いてくれなかったのはそっちじゃん!って、付き合って半年で初めて言い争いになってしまった。
この場合悪いのは完全に俺である。1つのことにのめり込んじゃって、それ以外のことを蔑ろにしがちな悪い癖が出てしまった。
匠からも念を押されてたし、分かってはいたんだけど、真珠の優しさに甘え過ぎたようだ。
「まぁまぁかなぁ」
ぼそっとそう呟いた。
「真珠は映像製作会社に就職するんだっけ?」
「うん!やっぱ好きなこと仕事にしたいし、麦くんの夢の力にもなれるかなって思って」
そう元気よく答える真珠を見ていると、なんだか自分が情けなく思えてきた。
真珠は自分の好きなことを仕事にしようとしている。それに比べて俺の好きなことは趣味止まり。おまけに仕事でもない趣味に集中しすぎるがあまりに彼女との時間を蔑ろにしてしまう始末。
いい感じにクズである。
「映画途中で抜け出しちゃったし、どうしよっか?うちはプラネタリウム行きたい!」
俺の心の淀みを明るい真珠の声が一掃する。
プラネタリウムか、、悪くない。ってか、むしろ良い!
俺たちは星が由来になった名前だからピッタリだ。
「いいね!プラネタリウム!行ってみるか」
「レッツゴー!麦星見つけるぞー!」
そう言って振り上げた真珠の細い腕の袖から、一緒に買ったバングルがチラリと顔を覗かせる。
その瞬間、なんだか俺の左手のバングルが振動したような感じがした。
ん?気のせい?寒さのせい?
左手を確認してみると特にバングルに変わった様子はない。気のせいか。
真珠が就職で県外に行ってしまうまであと3ヶ月ほど。それまではちょっと動画作りはお休みにして2人の時間を大切にしていこう。
そう思い、足早に車へと向かう真珠の後を追った。

#23に続く


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