夢幻星#2
鋭い日差しが麦の顔を照り付ける。思わず手で顔を覆った。
頭の上には雲ひとつない青空が広がっていた。絶好の撮影日和だ。
麦は車を走らせ広島県の宮島へと向かった。麦が住んでいるアパートから車で1時間半かかる場所にあるが、今日はここで撮影すると決めた。もう何度も撮影しているお気に入りの場所だ。
宮島の駐車場に車を停め、リュックを背負い車のドアを閉めた。日曜だから大勢の人で賑わっている。
今日はどんな動画を撮ろうか?
そう考えながらフェリー乗り場へと歩みを進め、切符を買いフェリーに乗った。中に入らずに外の椅子に腰掛けていると、ゆっくりとフェリーは宮島へと進み始めた。
宮島に到着すると改札の出口は大勢の人で賑わっていた。
人混みをかき分け宮島に降り立つと、早速鹿がお出迎えをしてくれた。麦はその姿を動画に収めると宮島をゆっくりと歩き始めた。
「今日撮影した動画をどう編集して自分の世界観を表現しようか?」
そんなことを考えながら撮影をした。
しばらく撮影した後、休憩がてら海沿いの塀に腰掛けて撮影した動画を見返す。
いつの間にか真上に登っている太陽がスマホ画面を見ている僕の頭部をジリジリと照らしてくる。
歩き回ったせいか少し汗が滲んできた。
「まだまだ素材が足りないな」
さっきから景色ばかりを動画に収めている。本当は景色だけではなく人物も一緒に動画に残したい。
でも俺は1人で撮影をしているから撮影に協力してくれる人なんていない。見知らぬ人に声をかけて動画を撮らしてほしいなんて言えるはずもない。
「誰か動画のモデルになってくれる人はいないかなぁ」
そんな独り言を呟きスマホ画面をいじっていると、
「すみません」
突然声をかけられた。
あまりに突然なことにびっくりして顔を上げると、そこにはみ知らぬ女性が立っていた。
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