夢幻星#6
宮島での撮影を終え帰宅した麦は、早速動画の編集にとりかかった。
パソコンを開き、iPhoneで撮影した動画をairdropでパソコンへと取り込む。
動画の構成はずっと昔から考えていたものなので、動画が完成するのにそんなに時間がかからなかった。
早速真珠さんに完成した動画を送ろうとスマホを手に取り、LINEで「村星 真珠」という名前を探したが、途中で手を止めた。
麦はスマホの時間を見て目を疑った。
朝の4時と表示されている。
動画編集に夢中になり過ぎて気がつかなかったが、思っていたよりも随分と時間が経っていた。
動画完成までそんなに時間はかからなかったと思っていたが、そんなの嘘だった。
好きなことをして夢中になっている時というのは、体感時間が異常に短くなっているものである。
やばい。3時間後には仕事で起きなければいけない。
麦はアラームを7時にセットし、布団へと潜り込んだ。
次に目が覚めたのは上司からの電話がきっかけだった。
どうやら7時にセットしたはずのアラームは、無意識のうちに切ってしまっていたようだ。
時刻は8時を表示している。仕事が始まる時間だ。
上司に、「すぐに向かいます」
と電話越しに頭を下げ、急いで準備をして部屋を飛び出した。
昨日いい事があったから、それの帳尻を合わせるようにバチが当たったんだ。
そんなことを考えながら会社へと向かった。
案の定上司にこっぴどく叱られてしまい、仕事も猛烈な睡魔のおかげで満足にする事ができなかった。
昨夜のテンションが嘘かのように随分と落ち込んで帰宅した。
部屋に戻ると昨日編集で使っていたパソコンが、そのままの状態で放置されていた。
あぁそうだ。早く真珠さんに完成した動画を送らなきゃ。
LINEを開き、村星 真珠という名前を探す。
【昨日はありがとうございました。動画が完成したので送りますね!】
という文章と、昨夜作った動画を添付して送信ボタンを押した。
疲れがどっと体に押し寄せてくる。
宮島で一日中撮影をした日からほとんど休めていないこの体は、早く寝ろという信号を送ってくる。
すぐにシャワーを浴び布団に入ることにした。
布団の中でスマホのアラームを設定していると、真珠さんから返信があった。
【動画ありがとうございます!撮影楽しかったですね!完成した動画友達に自慢しますね】
少し笑みが溢れた。
【よければまた一緒に動画撮影しましょう】
そう返信して布団に潜り込んだ。
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