夢幻星#24
春の星か、、、じゃあ今夜は見えないな。まぁ来年の春まで待つとしよう。次はプラネタリウムじゃなくて自然の星空で春の大三角を見つけたいな。
「ほんとだね。やっぱり私と麦くんが出会ったのって運命だよ。そうだよきっと」
そう言っている真珠は目をキラキラと輝かせている。確かに真珠が言った通り、俺と真珠は本当に運命の出会いだったのかもしれない。
プラネタリウムで自分達の由来となった星を見るという本来の目的を達成した俺たちは、プラネタリウムを後にした。
外に出てみると、外はすっかりと暗くなっている。しかし曇っているせいなのか、星は一つも見えない。
天に向かって息を吐き出してみると、白い煙が真っ暗な空に消えていった。
「星空見えないねー」
残念そうに呟く真珠。
それには俺も同感だ。今日こそは、というか今はなんだか星空をみたい気分だった。
「さてと、帰るか」
車に乗り込んで自宅へと走り出した。
「プラネタリウムきてよかった。スピカとアークトゥルスの関係性って本当に私と麦くんの関係性に似てたね」
「確かにあれはびっくりしたわ」
少しの間沈黙が流れた。
田舎道を走る車のエンジン音だけが聞こえる。
「でね、ちょっと麦くんに言いたいことがあるんだよね、、、」
ポツリと真珠が口を開いた。
その声はさっきまでの明るい声ではなく、少し暗い雰囲気をまとったそんな声だった。
なんだか嫌な予感がした。それは真珠の声がだんだん小さくなっていっているからなのか、この後にくる真珠が言いたいことがなんとなく予想できているからなのか。
次に真珠が話し始めるまで数秒だったと思うけど、なんだかその数秒が数分に思えた。
正直怖かった。
「うちね、就職先決まったよ」
あぁやっぱり就職の話か。時期的にも真珠の年齢的にもその話だと思った。
「おぉ、やったじゃん。おめでとう。就職祝いしなきゃな」
これは嬉しいことだ。でも気になるのは真珠のテンションが低いことだ。きっと良くない話もあるのだろう。
「どこに就職?」
俺は重い口を開いた。
「映像制作会社に決まったよ」
「まじか!」
「うん。まじだよ。美咲とその話しててね。美咲は好きなことを仕事にするんだって。それを聞いて私も自分の好きなことを仕事にしようと思って」
あれ?今のところいい話しかないな。真珠が就職が決まってしかも好きなことを仕事にしようとしている。
これほど嬉しいことはない。ないはずなんだけど、真珠のテンションが低いのが気になる。
「めっちゃ良いこと尽くめじゃん。もっと喜べよ」
「うん。めっちゃ嬉しいこと。でね、その就職先がちょっと県外になるんだ」
なるほど、真珠のテンションが低い理由はこれか。
遠距離になるのか、、、
俺は過去の嫌な記憶がフラッシュバックしてきた。
また大切な人が俺の元から離れていくのかな、、、
「おぉ、そうなんだ、、」
俺はわざと気にしないようなふりをして答えてみたけど、ちょっと無理だったかもしれない。
「私ね、前四人でご飯食べた時あったじゃん?あの帰り道に匠くんから聞いたんだ、麦くんの過去のこと。それ聞いてさらに麦くんの夢を応援したいって思った。だからちょっとでも力になりたくて映像制作会社に就職することにしたの。県外になって遠距離になっちゃうけど、今日のプラネタリウムの星を見て確信した。私たちは絶対に離れ離れになったりしない。運命がそうさせていると思う」
俺は黙って真珠の言葉を聞いていた。というより話すことができなかった。
そうか、、、俺の夢を、あの日流れ星に願った願いを実現させるために真珠は人生をかけてくれてるんだな。
真珠は離れていくんじゃない。一番そばにいて、俺の一番の理解者で、俺の夢に一番期待してくれてて、一番のファンだ。
「絶対に映像制作会社で名を上げて戻ってくる。麦くんの映像作品作りの力になって戻ってくるから、それまで待っててほしい」
少し涙声になりながらも必死に話す真珠が愛おしくてたまらなかった。これだけ信頼してくれる人は、夢を応援してくれる人は今までいなかった。
これだけ俺のことを信頼してくれているんだ。裏切れるわけがない。
当たり前じゃん。ずっと待ってる。俺だってこれからもっと頑張ってクリエイターとして名を上げてやる。
ハンドルを握る手に自然と力が入った。
真珠が就職で県外に引っ越すまであと四ヶ月ほど。
引越しやその他いろいろで、二人でのんびり過ごせる日々はもっと残り少ないのかもしれない。
この間はちょっと映像作品作りは休憩だ。二人の時間を大切にしよう。四ヶ月後からはまじで本気で頑張るから、ちょっとくらい良いよね、、、
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