思いついたままに書き綴る千文字小説

2021/01/27

さぁさぁ皆様お立ち寄りー
寂れた商店街に人集りを作る威勢のいい声
さぁさぁ奥さん見てってよー
威勢のいい声を発するのは30代後半くらいの男性
おっと、そこのべっぴんさんー
そうそうあんたのことだよ。
見てってよー。

まったく調子のいい褒め言葉で女性を中心に集めていく。
ある程度人が集まったところで彼は実演を始めた。

今日のお客さんは運がいいねぇー。
今年一番のとっておきだよー

今年一番?
まぁ、そうだよね。

今日は1月14日

今年が始まってまだ14日しか立ってない。
誰がこんな胡散臭い販売に騙されるんだろう?

私はそのことに少し興味が湧いて人混みに参加してみることにした。

ほらほら! 見てよ。お嬢さん!
とってもきれいな金の玉。
これを持つだけで運気は最高潮

ばかばかしい。
金の玉を持っただけで運気が上がるなら人生こんなに苦労しない。
もうこれって実演販売じゃなくて詐欺なんじゃない?

あれあれ? そこのお嬢さん
私が怪しいって思ってる?
こんな玉なんて誰が買うかって?
あっはっはー! 全く図星、誰も買わねーよー

げっ……話しかけられた……
しかも自分で売れないとか言ってるし……
興味本位でめんどくさいことに首を突っ込むのはだめだなぁ……

私を疑うお嬢さん
あなたがこの場で得すれば、この玉の効果は本物かもねぇー。
はっはぁー! 周りの皆様もそうでしょうー?
私が効果のない商品を売ってると思うでしょぉー?
さぁさぁ実験やってみよー。

ちょ、ちょっとまってよ……
なんで私が巻き込まれてるの……
しかも実験台だし。
まぁいいや……適当に済ませてさっさと逃げよっと

さぁさぁお嬢さんこれ持ってー

無理やり持たされた金色の玉はずっしりと重い

それを持ったまま目を瞑ってねぇー。
私が3つ数え終わったとき、お嬢さんに良いことがあるかもよぉー

ばかばかしい、そんな事ができるならこんな胡散臭い商売してないでしょ。
あんた自身がそれを証明してるじゃない……

心のなかで暴言を吐きながら目を瞑る

ほーらいくよー
ワンツースリー

どうせ何も起きなっ――
え!?

目を開けて一番最初に目にしたのは、ひらひらと落ちる一万円札
信じられないことが起こって立ちすくむ私の足元に静かに落ちた。

ほらほら! どうだい!
ほんとに運気がやってきたー

今ならこの玉たったの十万円!

十万円であなたの人生バラ色だよ!!

はい!! 私買います!!
誰よりも先に購入宣言をしたのは私だった。

金の玉を買ってから4年ほど経つけど……
私はあの一万円以来、何も起きていない

もしかして……
騙されたの!?

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