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「フレンドリー」Cornelius remixについて

9月6日、サカナクションのリミックス集『月の幻〜Remix works〜』が発売されました。

リミックスを手がけるのはFloating Pointsやagraph、YonYonなどそうそうたるメンツ。そんな中、「Cornelius」の名前を見つけた瞬間、即座に購入ボタンを押していました。

というのも、高校生くらいからサカナクションが好きだったのですが、サカナクションの「ミュージック」という楽曲のリミックスでCorneliusの存在を知りました(これがまためちゃくちゃ素敵です)。そんなCorneliusに今色々あってどハマりしているので、個人的になんとも感慨深い気持ちです。

好きなアーティストと好きなアーティストのコラボ、しかもCorneliusとの出会いのきっかけであるリミックスの第二弾ということで、心の中で叫びながら予約購入。そして何とか生きて発売日を迎えられるといいなとソワソワしながら、数ヶ月をやりすごしました。

今回Corneliusがリミックスを手がけたのは、サカナクションの最新アルバム『アダプト』に収録されている「フレンドリー」という曲です。

サカナクションにしてはサビ始まりの珍しい曲で、しかもストレートな歌詞が歌い出しから鋭く刺さってきます。

正しい
正しくないと
決めたくないな
そう考える夜

正しい
正しくないと
決めた虚しさ
そう
真っ暗になる

歌詞検索J-Lyric.netより

この歌詞を聞いて思い浮かべてしまうのは、(安直ですが)Cornelius=小山田圭吾を巡るオリンピックの炎上騒動。
もうあれから2年が経ちますが、あのときに受けたショックは大きく、事あるごとに思い出してしまいます。

なので、ここに書くことは先入観1000%の私の解釈でしかありませんが、この「フレンドリー」の歌詞は、作詞した山口一郎さんの、小山田さんに対するメッセージなのかもしれない、あの騒動に対する気持ちなのかもしれないと考えてしまいました。

批評家の佐々木敦さんがXで投稿していたとおり、今は「過剰糾弾社会」になっているように感じます。世の中の倫理観や常識から外れた物事を見つけると徹底的に叩き、破滅まで追い込む。SNSによって人々の悪意が拡散されやすく、さらに悪意が大きな塊となり個人を潰しているような実感を、あの騒動以前からずっと抱いています。

初めて原曲の「フレンドリー」を聴いたとき、まさしくそんな「過剰糾弾社会」に対する自分の気持ちと、歌われている歌詞とがリンクしました。全体的にミニマルですっきりとした、バンドサウンドを基調とした音像ですが、その分、歌詞に込められているメッセージがはっきりと浮かび上がり、ダイレクトに胸に迫ってきます。

電子音を多用していながらも、サカナクションには明らかにフォークのエッセンスを感じます。山口さんの歌詞は文学的でありながら、明確にその時々に伝えたいことがある、それを伝えるために音楽を通して歌っているという意味でも「フォーク的」です。
山口さんは詩人の吉本隆明に影響を受けたことを話しており、最近も『ことば: 僕自身の訓練のためのノート』という、2001〜2005年の言葉を記録した本を出すなど、「言葉」に強いこだわりやメッセージ性を込めて作詞をしていると感じます(それは他の楽曲を聴いていても、彼のインタビューなどを読んでいても伝わってきます)。

そんな楽曲のリミックスを、「音楽を通じて何かを言いたいのではなく、ただ『音楽』がしたい人」として佐々木敦さんも『ニッポンの音楽』という本で挙げていたCorneliusがやるのもまた皮肉というか、興味深いというか…。
しかも自身の境遇と重なり合って聴こえる言葉が綴られた曲をリミックスすることで、自分の感情と距離を置いた楽曲作りが多かった彼の気持ちを代弁する役割にもなっている感じがするし、心象風景を自身の言葉で紡ぐことをコンセプトにしたという最新アルバム『夢中夢』の延長線上として発表されたようにすら思えてきて、すごく面白く感じました(実際、おそらくこのリミックスには『夢中夢』の収録曲「無常の世界」と同じリズムトラックが使用されているのもあり、アルバムの番外編のようにも思えます。詳しくないので間違えていたらすみません)。

ビクターの昔の(?)HPに掲載されている山口さんのプロフィールに、「フェイバリットアーティスト」としてCorneliusの名前が挙がっています。実際、初めてCorneliusの『Point』を聴いたとき、生音と電子音の絡みやコード進行などに、サカナクションのルーツを感じて激しく興奮しました。Corneliusから強く影響を受けたのかなと伺えます。

そんな彼が二度、しかもこのタイミングでCorneliusにリミックスを依頼したのは、小山田さんへの感謝とメッセージだったのかもなどと、思わず感傷的な解釈をし、勝手にしみじみ思いを巡らせてしまいました。

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