コーネリアスのインスト曲10選
2024年6月26日に、コーネリアスの最新アルバム『Ethereal Essence』が発売されるとのこと。やったー!4月26日には先行シングルとして「Sketch For Spring」が配信されています。
『Ethereal Essence』には近年のアンビエント色の強い楽曲を中心に収録されるとのことで、この機会に私の好きなコーネリアスのインスト曲をまとめてみました。
コーネリアスの「音」が濃厚凝縮されたインストゥルメンタル
デビューアルバム『The First Question Award』では、歌を前面に押し出したポップスを展開したコーネリアス。今やキャッチーなセンスはそのままに、歌モノからサウンドトラックまで、自由自在に独自の作品を手がけています。
中でも、インスト曲はコーネリアスの「音」に対する純粋な好奇心や遊び心が溢れていてとても好きです。きっとワクワクしながら曲を作っているんだろうなと、勝手に妄想が膨らみます。
そんなコーネリアスのインストから、個人的に好きな曲を選んでみました。
「QUANTIM GHOSTS」
昨年発売された「火花」のカップリングとして発表された曲。最初聴いたときはコーネリアスにあまり詳しくなかったこともありいまいちピンと来なかったのですが、一通り音源を聴いたあとに改めて聴き直したら、パンを半拍で左右に振りまくるフレーズ、徐々に音数が増えていく展開、カオスになってくる盛り上がり具合...などなど、コーネリアス独自のスタイルが凝縮されていることに気づき興奮しました。
昨年京都で開催された「AMBIENT KYOTO」の展示にも使われており、音と連動した光の点滅と立体音響が印象的でした。
「Forbidden Apple」
雑誌『Sound & Reccording』の企画で作ったという楽曲。「Apple」という男女の声と、りんごをかじる音が色んな音色で聴こえてくる、音の実験的要素を感じる曲です。この声とミニマルなトラックの組み合わせは「デザインあ」のサントラにも通じる部分を感じます。
コーネリアスはサウンドチェックのような楽曲を作るのが好きなのかなという気がしているのですが、ただの妄想です。
「clap & whistle & walking」
音楽レーベル「333discs」から2005年に発売されたコンピレーション『reaching series no.2 リズムであそぼう』の収録曲。拍手、口笛、鳥の鳴き声、フルートの音、足音を組み合わせて構成されており、これもまさに音の実験的要素を強く感じる曲です。『Point』のインタビューで小山田さんが話していた「子どもが純粋に聴いて面白いと思う音楽を作りたい」という意識がこの曲にも表れている気がします(公式サイトによると、対象年齢は「3歳〜80歳位」とのこと)。
作り方は前衛的ですが、フレーズはとても聴きやすくてコーネリアスならではのポップセンスが発揮されていると思います。
「Sketch For Spring」
2019年にリニューアルオープンした渋谷PARCOの店内BGM集『MUSIC FOR PARCO』に収録されていた楽曲。このレコードが絶対に欲しくて、メルカリで8000円で買いました。
インスト曲ながらメロディアスなフレーズと、優しい電子音に自然と心が安らぎます。実験的な楽曲が多い個人の作品とはまた違い、ニュートラルにコーネリアスの魅力が抽出されている商業用の作品も大好きです。
この曲がかかっている渋谷PARCOに行きたかった...。
「Toner」
アルバム『Sensuous』に収録されているインスト曲。コピー機の印刷中の音をそのままリズムトラックにしている実験的な曲です。コピー機とエレピ、ピアノの音がうまく組み合わさっており、意外な相性の良さを発見できます。
「これは絶対ライブでできないやろ」と思っていましたが、Sensuousのツアーでは同期を使いつつしっかり再現していてびっくりしました。またやってほしい!
「Flow」
「キムタク」の愛称でおなじみ、元SMAP・木村拓哉さんのソロアルバムに提供した曲。小山田さんいわく「不思議なご縁」があったとのことですが、どんな縁があったのかは謎です。
キムタクのアルバム曲とはいえ、キムタクが参加したのはサーフボードにワックスを塗る音のみ。コーネリアスfeat.木村拓哉と言った方が正しいくらい純度100%のコーネリアスサウンドで、キムタクのアルバムからもめちゃくちゃ浮いています。独自のスタイルを曲げないコーネリアス、好きです。
「Sonorama 1」
ライブで「何これ?」と思われる曲が作りたい、と思い制作されたという楽曲。ギター、ドラム、シンセ、シンセベースで構成されており、どちらかというとロック要素の強い楽曲です。
激しめのギターからは「I Hate Hate」や「Gum」などのメタル寄りコーネリアスのモードを感じるかっこよさ。騒がしいキメパートの最後にコーラスワークをメインにしたメロウなパートで締めくくられるという、奇妙な構成も素敵。『Point』〜『Sensuous』期のロックな雰囲気から『Mellow Waves』以降のやわらかい雰囲気への変遷を感じる部分も面白いです。
「Wataridori 2」
『Sensuous』に収録されている「Wataridori」のアレンジ違い。こちらは『Waxploitation Presents Causes 1』という、チャリティコンピレーションに収録されています。
Sensuousの方はギターと生ドラム主体のバンドアレンジになっていますが、こちらは全て電子音で構成されたアレンジに仕上がっています。
途中に入る鳥の羽ばたき音が鳴り響くブレイクが印象的。よりミニマルに、落ち着いた雰囲気になっていると感じます。
「Surfing on Mind Wave pt2」
『Mellow Waves』の収録曲。コーネリアスにしては珍しくストリングスが使われており、迫力のある音像に圧倒されます2022年のフジロック生中継で初めて見たとき、「なんだこの曲は!?」と衝撃を受けました。
キラキラしたシンセの音の中に波やカモメの鳴き声のサンプリング(プラグインかもですが)も入っていて、まさに「Waves」を冠したアルバムを象徴するかのような楽曲。激しく打ち寄せる波と、それに包み込まれる心地よさ。コーネリアスのインスト曲の中でも、『夢中夢』につながるアンビエント要素が強く表れているように思います。
「Tone Twiright Zone」
『Point』の収録曲。夜虫の鳴き声から始まる優しい曲で、聴くと夏〜秋の夕暮れに染まる草原がパッと脳内に思い浮かびます。
特にこの曲は国内エレクトロニカのアーティストに影響を与えたのではと勝手に感じており、宮内優里さんなどが作る音響系の電子音楽にも通ずるものがあるなと思っています。比較的バンドアレンジが多い『Point』において、電子音楽的なアプローチが特に印象的な曲です。
おわりに
『Selected Ambient Works 00-23』に収録されている「LOO」を皮切りに、これからのコーネリアスはアンビエントに傾倒していく予感がしており、ますますこれからの作品が楽しみです。できればサウナ用BGM集とか作ってほしい...。
※2024年6月23日追記:一部正式には事実と異なる表現があったため、訂正いたしました。