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難書漢字に込められた理想〜フットボールの白地図 by OWL Magazine【第21回】岐阜県

<岐阜県>
・総面積
 約1万621平方km
・総人口 約198万人
・都道府県庁所在地 岐阜市
・隣接する都道府県 富山県、石川県、福井県、長野県、愛知県、三重県、滋賀県
・主なサッカークラブ FC岐阜、FC岐阜SECOND
・主な出身サッカー選手 森山泰行、下川健一、東明有美、松波正信、梅田高志、片桐淳至

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「47都道府県のフットボールのある風景」の写真集(タイトル未定)のエスキース版として始まった当プロジェクト。前回は、どちらかというと野球のほうが盛んな高知県を紹介した。今回は歴史と自然の観光資源が豊富な岐阜県にフォーカスする。岐阜といえば、誰もが思い浮かべるのがFC岐阜。実は私は、このクラブが東海リーグ時代を戦っている時から、おりに触れてウォッチしてきた。

 ところで皆さんは、何も見ずに「ぎふ」を漢字で書けるだろうか? そんなに画数が多いわけではないのに、普段あまりお目にかからない漢字が2つ並んでいるため、思わずペンが止まってしまう人も少なくないのではないか(県民およびJ2やJ3のファンならば問題ないだろうが)。この難書漢字を選んだのは、大河ドラマでお馴染み、あの織田信長である。

 稲葉山城に入った信長は、この地で「天下布武」を宣言。「井の口」と呼ばれていた城下町を「岐阜」と改める。「岐」は中国の周王朝の始まりである岐山から、「阜」は儒教の総本山で孔子の故郷でもある曲阜に由来。天下統一の拠点であり、学問の中心地になることを目指す。文武両道の理想を、中国の故事から選んだのがいかにも信長らしい。なお、稲葉山を金華山と改めたのも、信長である。

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 真冬の旅に出て、新幹線の車窓から関ヶ原の雪景色に感動を覚えた人は少なくないだろう。伊吹山と鈴鹿山脈の間にある関ヶ原は、日本海側からの冷気の通り道になっているため、よく雪が降る。それにしても、なぜ岐阜県で「天下分け目」の戦いの火蓋が切られたのであろうか。日本地図を俯瞰すると、その答えがうっすらと見えてくる。本土のほぼ中央に位置し、7つの県と接する岐阜こそが、東軍と西軍が激突する「中立地」に相応しい。

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 JR岐阜駅の改札を抜けて、北口の駅前広場に出ると、信長公が出迎えてくれる。初めてこの像を見たときは、思わず目を剥いたものだ。何しろピカピカの金色で、高さは台座を除いても3メートルある。「信長公の銅像を贈る会」なる団体が、市制120周年を記念して、制作費3000万円を集めて岐阜市に寄贈。2009年9月に除幕式が行われた。この信長像を見るたびに、私はいつもFC岐阜の黎明期を想起せずにはいられない。

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