東欧サッカー路線から長いブランクを経て地域リーグの世界へ 宇都宮徹壱ブックライター塾(#徹壱塾)塾長ヒストリー<2/7>
写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱です。これまで27年の活動の間でノンフィクションを中心に、14冊の書籍を世に送り出してきました(参照)。
そこで培ってきたノウハウをメソッドとして体系化、2024年7月に「宇都宮徹壱ブックライター塾(#徹壱塾)」を開講しました。半年にわたる第1期を経て、2025年1月から始まる第2期の塾生募集を開始します。
当塾は「自ら取材して執筆する」ことで「書籍デビューを目指す」方に特化した講座となっております。第1期での実績を踏まえて、さらにブラッシュアップした内容で実施します。
2期生を募集の締め切りは12月15日。それまでの間、宇都宮徹壱の過去の作品を「塾長ヒストリー」として7回にわたってお届けしたいと思います(以前、掲載したもののバージョンアップ版となります)。
第2回は、東欧サッカー取材の集大成となった『ディナモ・フットボール』、そして国内サッカーの最初の作品となった『股旅フットボール』です。
<1/7>はこちら。
2002年『ディナモ・フットボール 国家権力とロシア・東欧のサッカー』(みすず書房)
前作『サポーター新世紀』から3年。2002年ワールドカップ・日韓大会に上梓した3冊目の作品が本書です。本大会のグループ分けで、日本がロシアと同組になる幸運にも恵まれ、にわかに注目された作品でもあります。
旧ソ連や東欧諸国でよく見かける「ディナモ」というクラブ名。ディナモ・キエフ(キーフ)が有名ですが、ディナモ・モスクワ、ディナモ・トビリシ、ディナモ・ベルリン、ディナモ・ブカレスト、ディナモ・ザグレブなどなど。これらのクラブを訪ね歩き、冷戦後の東欧諸国をサッカーを通してレポートする、というのが本書のテーマでした。
爆発的に売れたわけではありません。それでも、公私ともにお世話になった広瀬一郎さんから絶賛され、さらにロシア語同時通訳の米原万里さんによる書評集『打ちのめされるようなすごい本』に紹介されるなど、各方面で高い評価を受けた作品でもあります。その意味で、ブックライターとしてのキャリアに、自信を深める契機となった作品でもありました。
ちなみに版元は、哲学や科学や歴史や社会学などの専門書で有名な、みすず書房。勁草書房のSさんが移籍して私にお声がけいただいたことで、素晴らしい出版社から書籍を出すことができました。フリーランスになってから5年で3冊の書籍。順調なキャリアのようにも見えますが、ここからブックライターとして長いブランクに突入することとなります。
2008年『股旅フットボール 地域リーグから見たJリーグ百年構想の光と影』(東邦出版)
結局、4冊目を出すまでに6年かかってしまいました。長いブランクの原因は、大きく3つ。まず私自身が、ネットライターとしての仕事に忙殺されていたこと。次に、取材対象が欧州から国内にスライドする中、書籍のテーマが見えづらくなっていたこと。そして、以前と比べてサッカーの書籍が出しにくくなったこと。
3つ目が地味に深刻でした。原因は2006年のワールドカップ・ドイツ大会で、いわゆる「ジーコJAPAN」がグループステージ敗退という、大きく期待を裏切る結果に終わったこと。時代の寵児だった中田英寿も「旅人」となり、時代の潮目が確実に変化しました。このあたりから、サッカー関連の書籍は明らかに減少傾向となっていきます。
そんな中、サッカー本のサンクチュアリとなっていくのが、本書の版元となった東邦出版。そこで当時20代ながら編集者としての頭角を現していたのが、のちに「世界で最も多くのサッカー本を送り出す」こととなる、中林良輔さんでした。
中林さんは学生時代、図書館で私の過去の作品を借りてきては熟読し、「この人の書籍の編集をしたい!」と思ったそうです。そうした嬉しいオファーに対して、私が提案したのが『サッカーJ+(プラス)』という季刊誌での連載の書籍化。その連載タイトルが『股旅フットボール』でした。
『股旅フットボール』は、当時4部相当だった地域リーグから、将来のJリーグ入りを目指す全国のクラブを追いかけたルポルタージュ。V・ファーレン長崎、ファジアーノ岡山、そしてFC町田ゼルビアといった現在のJクラブの黎明期を知ることができる内容となっています。
中林さんが編集会議で提案した時、「こんなマイナーなテーマで売れるのか?」という、当然すぎる意見もあったそうです。しかし蓋を開けたら版を重ね、ついに3刷りを達成! 写真家としては、デジタルカメラで撮影したカラー写真を初めて掲載できたことにも、手応えを感じました。
国内サッカー、それも日本代表や人気Jクラブではなく、ピラミッドの中腹(ハーフウェイカテゴリー)に新たなテーマを見出したという点で、この作品の位置付けは重要です。また、6年間のブランクを経てブックライターに復帰できたこと、その後も長い付き合いとなる編集者と出会えたこと、さまざまな意味で、私のターニングポイントとなった作品でもあります。
この時の経験は、私に新たな気付きを与えてくれました。それは、過去の作品が「営業」してくれる、ということ。本を出せば「それで終わり」ではなく、新たな仕事や出会いを作ってくれるのです。「#徹壱塾」では、そうしたブックライターという仕事の醍醐味も、伝えていきたいと思います。
当塾は「自ら取材して執筆する」ことで「書籍デビューを目指す」方に特化した講座となっております。第1期は「対面での指導」にこだわってきましたが、第2期ではオンラインを併用してのハイブリッド型での講義を予定しております。
ブックライターになるメリットとは何か? 私の経験に基づいて断言できるのは、以下の4点です。
1️⃣ ライターとしてのステイタスが上がる。
2️⃣ 作品を通してファンを獲得できる。
3️⃣ 自分の仕事が読者の記憶に残る。
4️⃣ ライターとして息の長い活動ができる。
書籍を出せば、間違いなく書き手としてのステイタスは上がるし、ファンを獲得できるし、読者の記憶にも残るし、息の長い活動も可能になります。
そこに価値や魅力を見出だせるのであれば、ここはひとつ「3年後の書籍デビュー」という、やや高めの目標を掲げてみてはいかがでしょうか?
2期生を迎えての最初の講義は、2025年1月10日(金)18時30分。これまで4冊の書籍を執筆してきた、東京・西荻窪のコワーキングスペース「factoria」でお待ちしています。
塾長:宇都宮徹壱(写真家・ノンフィクションライター)
ご興味を持たれた方は、下記のnoteもご覧ください。
主な内容は以下のとおりです。
■「どんな人に向けた講座ですか?」
■「どんな学びが得られるのですか?」
■「どんな特徴があるのですか?」
■「どんな効果が期待できるのですか?」
■「6カ月で学ぶ11のメソッドとは」
■ よくある質問にお答えします
■. 宇都宮徹壱ブックライター塾(#徹壱塾)第2期概要
<3/7>につづく。