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2019年のラグビーワールドカップとは何だったのか?<2/2>〜「2020年」からの照射

 先日お辞めになった内閣総理大臣は、良くも悪くもさまざまな「遺産」をわれわれ国民に残してくれた。そのうち最もインパクトがあり、最も長く語り継がれそうなものが、2020年の東京五輪と、そのメインスタジアムとなる新国立競技場である。このうち後者については、当初は2019年のラグビーワールドカップ(以下、RWC)のメイン会場として、開幕戦と決勝戦が行われることが予定されていた。しかし2015年7月17日、時の総理大臣が「白紙撤回」を発表。決勝の舞台は、横浜国際総合競技場に変更された。

 早いもので、日本中がRWCの熱狂に包まれてから、丸1年が経過した。前回のコラムでは、2002年のFIFAワールドカップの記憶を照射することで、昨年のRWCについて考察してみた。今回は今年開催されるはずだった、東京2020オリパラから照射することで、RWCの価値というものを浮かび上がらせていきたい。もちろん、実際のところ東京2020はまだ開催されていない(来年、本当に開催されるかどうかもわからない)。それでも、さまざまな状況証拠から推し量ることは十分に可能だ。

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 私が着目するのが、前総理の置き土産となった新国立競技場。もしもザハ案のスタジアムが2520億円の巨費を投じて完成し、そこでRWCの開幕戦が行われていたら、どうなっていただろうか。おそらくは、われわれの記憶にあるRWCとは、かなり違った印象の大会となっていたはずだ。15年の段階で新国立が使えないことが決定した時、おそらく多くのラグビーファンは失望したと思う。しかし今にして思えば、新国立から切り離されたところで大会が開催されたのは、むしろ良かったようにさえ思えるのである。

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