バラ売りライターがブックライターになるために〜ライターなるには日記【第3回】<裏>
東京から静岡に向かうバスの中で、この原稿を書いている──。
なんて書き出しも、随分と久しぶりである(今回はエコパでの天皇杯取材だ)。当OWL magazineは、旅とフットボールのマガジンだが、この夏以降はずっと、長距離移動を伴う取材を控えていた。コロナ禍というのも大きな理由だが、私の国内取材の集大成である『蹴日本紀行』ですべてを出し切ったというのも大きかったように思う。
どういうことか? 47都道府県のフットボールのある風景を描ききった今、次への旅に向かう踏ん切りがなかなかつかなかったのだ。とはいえ、幸いにしてコロナの新規感染者数も、全国的に下火となりつつある。まだまだ注意は必要だが、アウェイ観戦も解禁になったし、気がつけばシーズンも佳境。これからアウェイ旅に出かける方は、ぜひとも本書をお供にしていただければ幸いいである。
さて、8月から始まった当連載。「ライターなるには日記」では、<表>の部分を私自身の経験に基づいた「ライター論」を語りつつ、<裏>では若い世代のライティングのお悩み相談について、私なりのアドバイスをさせていただいている。
過去2回は、いずれもOWL magazineの若手ライターにご登場いただいたが、そろそろ一般のライター志望の方からの相談を受け付けたいところ。先月につづいて、会員限定部分に問い合わせ先を表示しているので、どうかご一報いただければと思う。そんなわけで、今回もOWL magazineの書き手の方に登場いただくことにした。斉尾俊和くんである。
なぜ今回は「さん」ではなく「くん」付けなのか? 実は斉尾くんは、宇都宮徹壱WMの前身となるメルマガで、編集アシスタントを担当してもらっていた。その後、どうしているかと思っていたら、鳥取にある実家の家業(建設会社)を引き継ぎながら、フリーの編集者兼ライターとして活躍しているとのこと。そんな彼から今回、このようなお悩み相談を受けることとなった。
「メルマガでのアシスタントを経てから、編集プロダクションで経験を積んで今に至っています。それなりに長めのルポ記事なんかも書いているんですが、いずれもバラ売りの記事ばかりでした。そんな中、スポーツ居酒屋に関する書籍の企画が持ち上がり、ついに僕もブックライターとしてデビューするチャンスが巡ってきました。そこで、徹壱さんに質問です。バラ売りライターがブックライターになるためには、何が必要なのか教えてください」
この稿の<表>で私は、ライターの生業をサッカー選手に喩えて「日々、発注された原稿を納品するのが、所属クラブでの出場。これに対して書籍を出すことは、代表のキャップ数に似ている」と書いた。
斉尾くんの場合、編集者兼ライターとして、ある程度の実績はある。つまり、J1出場50試合を超えたくらいのキャリアで、いよいよ代表入りのチャンスが巡ってきた、という状況と言えよう。
このチャンス、ぜひともモノにしてほしい。そんな願いも込めながら、以下、私なりの助言をさせていただくことにしたい。
斉尾くん、ご無沙汰です。メルマガのアシスタントをお願いしていたのは、もう6〜7年前になりますかね。その後も書く仕事を続けていることを知り、少しうれしく思えました。
斉尾くんの出身は鳥取ですね。ガイナーレ鳥取は、JFL時代の2008年から、たびたび取材に訪れていました。J2昇格の条件である4位以内に、あと一歩の5位に終わるシーズンが続いて「ゴイナーレ」なんて呼ばれていた時代です。その頃の監督は、タイ人のヴィタヤ・ラオハクルさん。「2000円で買った」という自転車で、鳥取の繁華街のあちこちで目撃されていたのも楽しい思い出です。
さて、斉尾くんのお悩み「バラ売りライターがブックライターになるために」ですが、すでに<表>でも書いたとおり、私は幸か不幸かブックライターがキャリアの出発点でした。フリーランスになって1年後、書籍デビューすることでノンフィクションライターを名乗るようになりました。ですので、ここでは「何も実績にない若者が、どうやって本を出したか」という話で進めていきたいと思います。
【以下、OWL magazine読者のみに公開】OWL magazineでは、サッカー記事や旅記事が毎日、更新されています。Jリーグだけでなく、JFLや地域リーグ、海外のマイナーリーグまで幅広く扱っています。読んでいるだけで、旅に出たくなるような記事が盛りだくさん。すべての有料記事が読み放題になる、月額700円コースがおすすめです。なお、宇都宮の新著『蹴日本紀行』は、徹壱堂でお買い上げいただきますと、著者サイン入りでお届けいたします。
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