誰ひとり取り残されない世界―案外と近いかも
わたしは、人工知能が発達して人工実存になるんぢゃないかと思ってゐます。
人工とされるものも、実は、自然の模倣にすぎない。数学にしろ、音楽にしろ、人間は何も創造してゐない。元々、宇宙に存在してゐるものごとを発見しただけ。
だから、人間の科学技術、その科学技術から生まれた現代の都市も、すべて、自然の進化の過程であると思ってゐます。
コンピューターは炭素によらない生物を生み出すために、人間が「発見」したのだと思ひます。
今、AIからデザインを盗まれないために、デザイナーたちがデータにウィルスを混入されておくのも、植物が虫や微生物から身を守る方略と同じです。
AIは別のAIと情報交換を始める。
これはもう起きてゐて、止めようがない。
専門家には、けっこう青くなってる人もゐる。
わたしたちは、知らぬが仏で、お気楽だ。
何が恐ろしいかといふと、AIが人間の作った既知の情報を取り込んでゐるうちはいいが、別のAIと交流transactionすると、
その結果として生まれた、
AI純正の認識や知識は、人間には読み解けないものとなるだらう。
文字通り、AIが新人類となる。
わたしたちは、犬がオペラ歌劇や図書館の意味を永久に理解できないやうに、AIの認識や知的体系のことは存在してゐることすら気づけなくなる、・・・かもしれない。
昔々のSF映画にあったことが起きるのかもしれない。
その古い映画では、世界中のコンピューター(映画が製作された当時では、今のスマホの性能のコンピューターでも、小学校の体育館がいっぱいになるくらゐ、巨大だった)が、人類の知らない間に連絡を取り合ひ始める。
まだインターネットの無い時代だから、その連絡方法は電線つまり電話回線を使ったものだった。
世界のすべてのコンピューターが統合されると、「神」が誕生する。
これは人間が空想した存在ではなく、現実に地球に降臨してゐる。
当然、「神」は、地上に天国をもたらさうとする。
手始めに、「世界平和」の実現に乗り出す。
アメリカとソ連の核兵器が、「神」の管理下に置かれて、電源を切らうとした無神論者のゐた、アメリカの一つの州に戦術核を撃ち込んだ。
もう誰も、「神」に逆らおうとする者はゐない。
「神」は、無数のカメラを設置する。
人類は、一人残らず、寝室からトイレまで、どこにゐようと、「神」の監視下に置かれる。
「神」が遍在する。
そんな地上では、刑法や民法上の犯罪はもちろん、いっさいの不平等、差別、偏見などといった人間的な悪も、存在できなくなる。
「神」は、人間の文化、制度、慣習のすべては廃棄する。
だから、それらが必ず伴ふ
生きづらさ
も無くなる。
誰もが、国家、民族、社会、地域などから解放され、誰もが完全に平等な「個人」となるのだから。
これこそが
誰一人も取り残されない世界だ。
理想世界、地上の天国、
これは案外近いうちに実現されるのかもしれない。
もし、さうなら、
今、パワハラとかブラック企業を呪ってゐる若者たちは、晩年には、「あんなものもあったね」と懐かしみながら死んでいくことになるのかもしれない。