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おかえりモネで感じた気象予報士と医師の似ている点

現在NHKで放送されている『おかえりモネ』という朝ドラを知っていますか?

このドラマは、宮城県で震災を経験した主人公が、将来的な危機を予報し防ぐことができる気象予報士の仕事に関心を持ったことをきっかけに気象予報士になって活躍していくというストーリです。最近では主人公は東京の気象情報を取り扱う会社に就職し、テレビ番組での報道に関わっています。

本日(2021年9月15日)放送されたエピソードでは、記録的な台風が来ているにもかかわらず雨が降っていない現在において数時間後の莫大な被害を防ぐためにどうやって視聴者に危機意識をもってもらうか、という話題がありました。
ストーリー内では医師役の坂口健太郎が気象予報士の主人公に、医療現場で患者さんに説明するために「少し先の未来を具体的に説明する」とアドバイスする場面がありました。それを受けた主人公は結果的に予想される雨量を映像で視聴者に伝えるというアイデアを思いつくに至りました。


話中でアドバイスをしていた坂口健太郎が「医者と気象予報士は似ている」って言っていましたが、今まで考えたこともありませんでしたが、今回の話を見て本当にそうだと感じました。ただ、ここでいう「医者」は病院で一対一で患者さんと接している医者というよりは、ドラマ内の菅波先生のような地域医療に関わっている医師や、今話題の尾身先生のような方たち(公衆衛生の専門家)が近いのかと思います。

今回の話をみて、気象予報とその情報の伝達は公衆衛生的なアプローチととても似ていると感じました。ポピュレーションアプローチという点では同じことかもしれません。
今回テーマにあがった「危機感のない人にどうやって危機意識を持ってもらうか」という話題は、生活習慣病の恐れがある健康行動(喫煙、高カロリーな食事など)をどうやって意識してもらってその先の非感染性疾患を防ぐか、や、渦中の新型コロナウイルス感染症の予防について重症化のリスクが低い若い人たちにどうやって訴えるかのような医療的な視点と似ているかもしれません。

公衆衛生の分野では、人が健康的な行動を起こすかどうかはその人が今どのくらい健康に関心を持っているかに依存するため、対象とする人たちがどのくらいの関心を持っているグループであるのかを踏まえてアプローチする、という考え方(行動変容ステージモデル)があります。

このモデルでは、喫煙を例にとると、禁煙を既にしているグループに対してはその行動が継続することで得するような仕組みを提供するよう取り組む一方で、禁煙どころか習慣的に喫煙をしているグループに対してはまずは禁煙することのメリットを伝える取り組みを行なう、という考え方をします。今回のエピソードで扱われていた台風の例で言うならば、放送時点で晴れているためほとんどの視聴者は台風による将来的な未来に無関心である(無関心期のグループ)と想定して、対策をしない場合の被害/デメリット(?)を具体的に伝えていたのかなと考えることもできるかもしれません。

最近読んだ別の本では、行動経済学の視点から医療現場の患者の意思決定について解説されていましたが、ここでもやはり人間は将来的な損得よりも目先の損得でその場の判断をしやすいという意思決定の癖(現在バイアス)があると説明されていました。そういった観点を踏まえると、将来的に予測される危険(台風被害)を、危険が感じにくい時点(晴天)において現実感を持ってもらえるように伝えることがいかに難しいかがわかります。

参考:医療現場の行動経済学:意思決定のバイアスとナッジ

話がまとまらなくなってきましたが、坂口さんが話の中でふと述べていた「医者と気象予報士は似ている」という発言があまりに印象的でしたのでとりあえず感じたことをまとめてみました。共感してくださる方がいてくれれば幸いです。


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