作りたかった物と作る物の乖離

最近また集中的に原型を作るようになってきて、自分の作風を思い出す必要があったりするタイミングで過去作とか見直すと

「これ結構気に入ってるけどその当時どういう考えで作ったっけ?」

とか

「こんなの作った覚えないぞ…」

みたいなものに出会う。

おそらく、大半のシルバーアクセサリーブランドのデザイナーさんや原型作成する人はデザイン自体に時間を費やして、造形にも時間をかけて拘りを追求し続けた先に完成があるから覚えがないものってそんなにないんじゃないかなぁと思う。

上記の方々を完璧を求めて100点の物を1個作るのに100時間かけて1レベル上げるタイプだとすると、僕は同じ100時間で70〜90点の物を20個作って経験値稼ぐ方が結果的に4〜5レベル成長できると思ってるタイプなので作品のデザインやその製作時点での自分のレベルに対しての妥協点が割と低い。適当なものを作ってるのではなくて、その時点で全力投球してめっちゃ時間かけるのではなく8割ぐらいの力で無難に作れるレベルはこれぐらいかなっていう落とし所で作ると言えばいいのか。

デザインを0から新造するフルオーダーに関しては全力投球しなきゃ失礼な話なので別だけど、レギュラー品として作ってるアイテムはそういうスタンス。

強いていえば、バラのついたリングならバラは100点・リング部分は70点で平均85点の物を作るといった感じ。

上手くなりたい理由は人それぞれだけど、僕は憧れたアイテムに少しでも近づきたいっていう憧憬の方が強いからであって自分が作りたいとイメージするものは大体造形できるレベルには届いてる。

僕がそもそもシルバーアクセサリーにハマった根源はF.A.Lのブラッドレスクロスリングとグレイブオブエンペラーリングで、デザイナーであり原型師でもある山本さんのセンスに文字通り心を鷲掴みにされた事。マスコット的なピエロスカルには大変恐縮ながら全く目がいかず、ゴシックホラーとブランドイメージで掲げているあの作風が最高にカッコよくてひたすらネットで画像検索したりシルバーアクセ雑誌の特集ページをガン見していた。

先程例に挙げた二つのアイテム、デザインがシンメトリーで素晴らしいバランスで出来てらっしゃる。それを、ワンメイクカスタムでアシンメトリーにすると超絶カッコよくなるっていう変化がまた最高で、本当に山本さんは天才だって思う。気色悪いぐらい信者感が出たけど本心なので仕方ない。

そんな感じで作りたい衝動に駆られて始めた僕の作風は基本的にアシンメトリーなデザインばかりで、シンメトリーなものは2割も無いと思う。理由は簡単で、僕が左右で同じデザインを作っていて飽きやすい(例えるならガンプラとか作るとき、右手・右足は楽しいけど左手・左足作るときモチベがダダ下がりするタイプ)けど何よりシンメトリーなデザインはめちゃくちゃ難しい。

些細な違いがモロに出るので、ぶっちゃけるとシンメトリーなデザインばかりリリースしてるブランドさんはすごいと思ってる。そのデザインがシンプルであればあるほど難易度は高いし面倒くさいので、僕には一生無理だな…。奇しくも僕には今までシンメトリーなデザインのオーダーがほぼ来た方がないので本当にありがたいと思ってる。来たら正直に断ろうと思ってるレベルで苦手なので…。

一応自分の作るものもゴシックテイストを目指して作ってはいるけど、ゴシック建築などで調べればわかるように基本的にはシンメトリーなデザインが基調なのでそもそもこの時点で瓦解している自覚はある。ただ、作りたい理念として「他では見かけないようなデザインで自分らしいゴシック テイスト」を持って作ってるのでそこがブレなければシンメトリー感は妥協していいかなと。でもシンメトリーなデザインでいつか最高にかっこいい物を作りたいっていうのはずっと思っていて、自分の苦手と対峙してでもそこに届いた時は多分引退してもいいぐらいの達成感なんじゃないかな…。

憧れをきっかけに作り始めてブランドやってみようと思い立ってスタートしてから活動期間がまばらなので実動としては6年ほど。作りたいと思った根源と理想はシンメトリーで作り続けているものはほぼアシンメトリー、多分この乖離にはこれからも悩むしなんならもっと開き続けるかもしれないけど、それでもアシンメトリーなデザインを多く作っていくんだろうなぁと思う。自分の苦手と向き合うのは大事だとわかってるのでシンメトリーな物に挑戦はしているけど、その度に自分らしくない気がしてアシンメトリーにするっていうのを繰り返してるので、いい加減この部分をなんとかしていきたいという事を言語化したいだけの無駄日記。


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