エーテルを追って(参考出典)


#むつぎ大賞2024


人々の暮らしを豊かにするエネルギーは、時代とともに移りゆくものだ。
石炭、ガソリン、電気…そして今は無公害エネルギーが人々の暮らしを支えている。
だが数十年前、これよりもすごいエネルギーがあった。
それがエーテルだ。
エーテルは火、風、土、水に代わる「5つめの元素」として世間に発表され一大ニュースになった。
すぐさまエーテル動力の自動車が発表され爆発的に売れたのを覚えている。

だが、そんなエーテルがなぜ歴史から消えたと思う?
それは簡単な話だ。
エーテルの事故で多くの都市が消滅したからだ。
かつて東京と呼ばれていた都市はエーテルの奔流により跡形もなく消滅した。
それと同じことが多くの国で起こった。
今や世界中に大きな穴がぽっかりと開いた状態だ。
使い方を間違えれば一瞬ですべてが滅ぶとわかり、多くの国がエーテルを放棄した。
だがしかしこれは世の常なのか、その放棄したものを犯罪に使うクソ野郎どもが案の定湧いてくるってわけだ。

2042年、冬。新東京

新東京、かつての「関東圏」を消滅した東京を除き再編成したこの街では
多くの違法エーテルが取引されている。
少量のエーテルを使えば人間一人を簡単に消滅させることができるためか
多くの犯罪組織がエーテルの回収や精製を行っている。
今日はその取引が行われるとタレコミがあり、凍えるような冷たい雨の中息をひそめ
相棒とともに取引現場に潜入していた。

「約束のモノは?」
オールバックの黒スーツの男が怪しい男に尋ねた。
「ええこちらに。わが組織でも上等の精製エーテルですよ。」
アタッシュケースを開け、発動防止用のコアに閉じ込められたエーテルを確認した。
・・・これで奴らを挙げられる。

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