正義中毒から抜けだそう
中野信子先生の「正義中毒」というフレーズがTwitterでトレンド入りしていました。中野先生のファンなので、元記事読んで思うことをまとめてみます。
元記事
これからは「人を許せない」気持ちが増幅していく/脳科学者・中野信子さん|MYLOHAS
「他人の言動が許せない」
新型コロナウイルスが猛威を振るうなかで、脳科学者の中野信子さんが「今後さらに増えるかもしれない」と危惧する現象があります。それは、「自分は絶対に正しい」、「他人の言動が許せない」という感情が引き起こす、激しいバッシングやハラスメントです。
相手の過失に強い怒りを感じ、日ごろは使わないような激しい言葉で罵り、完膚なきまでに叩きのめさずにはいられない――。これは「正義中毒」というべき一種の依存症状で、自分が属する集団を守ろうとする脳の仕組みが関係していると中野さんは話します。
特にSNSでいやってほど見られますよね。その理由が、何かを守ろうとするとき人は攻撃的になってしまうから――というのは納得がいきます。ウイルス感染の脅威のもと、時の政権への批判が相次ぐのは自分たちの生活を守るための正当性を持ち合わせていますからね。
だからといって、そんな時に過剰・過激といえるような批判にまで至ってしまう自分の姿は一歩引いて見てみると、果たして理想的な姿なのでしょうか。人を許せずにいる自分が、自分自身を許せているとは、私には思えません。建設的でもないですよね。
どうすれば「許せない」自分を理解し、人を許せるようになるのか。
これについては元記事の後半で中心に書かれています。
まずは、脳の仕組みです。
じつは人間の脳は、他人に「正義の制裁」をくだすことに悦びを感じるようにできていると中野さん。
とのこと。
自分が正義であると信じ、それをたてに権威をふるうことが悦びになっている。ただ、考えなければいけないのは、その瞬間は例えば快感があってもそれはひどくもろい成り立ちをしているということです。
人を否定するときに、たとえ他者を否定しているつもりでも気付かないうちに自分自身を構成する要素さえも否定している可能性があります。今の自分と否定の対象とは絶対に交わる部分がないと思ったとしても、いずれ自分が否定している対象そのものになってしまうこともありえるわけです。
例えば、権力、政治家といった要素を叩いているつもりの人が、自分自身が何かの権力(例えば大きな組織でなく、家庭のような小さな組織でも)を持つ時が来たときに初めて叩かれていた側からの視界を見ることになります。
また、
中野さんいわく、「正義中毒」の対象になるのは集団のルールを乱す人。
とのこと。
今自分のいる集団とは違う集団を叩いているつもりが、人を批難することが当たり前な土壌が醸成されればやがて叩く行為自体のハードルが下がり、集団内で分裂、対立が起き、仲間だと思っていた集団の構成メンバーからまで否定される流れが起きやすくなるでしょう。
では、そんな状況に陥らないためにはどうする必要があるのでしょうか。
元記事後半
より
どんなときに「許せない!」という感情が湧いてしまうのか、自分自身で認識する努力をしてみましょう。それができれば、自分を客観視して「正義中毒」を抑制できるようになります。
なぜ許せないのか、否定したくなるのか、自分の心の内で何が起きているのかを見つめる必要があります。これをメタ認知と言いますが、自分の心を受け止めるというのは案外難しいものです。
私が取得したキャリアコンサルタント資格を養成する講座では、実務に向けてロールプレイングというのをします。これは実際の相談場面のシミュレーションで、相談役とコンサルタント役に分かれて本当に相談を行って練習するのです。やがて相談場面の文字おこしなども行うのですが、練習をするうちに自分で自分を対象にして相談場面の想定を行うセルフロールプレイングという方法もあります。私は子どもの頃から日記をつけてきたので、これが意外にもスムーズにできました。
自分で自分の心を知るには
1.最初に抱いた自分の感情を否定しない
2.なぜそう思うのかフカボリする
3.本当はどんな自分でいたいかを見つめる
自分の心の内でわいているものを受け止めるには、どんな感情を自分が抱いても否定をしないことです。否定をしないということは、賛同することとイコールではありません。自分としては抵抗があるような感情、特にネガティブだったり欲にとらわれていたりするとやはり否定したくなります。かといってそれに賛同してしまうと、今度は恐らく自分を見失うような心境に陥ってしまうのではないでしょうか。
否定しないこと、それはただ受け止めることに尽きます。自分はそう思うんだね、そう感じるんだねと、ただそこにわいている感情をそのまま受け止めます。
例えば「これからどうなるか分からないのに自粛しろってふざけんな!」といった感情。憤り、戸惑い、苛立ち、先が見えない不安、自分を救ってくれない会社、自治体、国、あるいは家族…。感情の構成要素を見つめてみるといろいろです。
そしてその後、さらに理解を深めるために。
なぜ、自分をそんな風に思うのか。当たり前だと思えることを改めて出してみます。
「ああ、このままでお金続くのかな…」「少し前に大きい買い物しなきゃよかったかな」「でもあの時はイヤなことがあってどうしても買いたかった」「まさか給料が思ったより上がらないとは…」「こんな時親にもう少し余裕があれば頼れるのに」「子どもの時からうちはいつも…」
書き出してみると、最初に表出された感情に対してそれを構成している要素はかなり複雑です。ここでもし他人のせいにしていたり攻撃的になっている感情があったとしても、一旦出してしまった方がいいです。
さらに次のステップとして、上記のような構成要素としての思考で自分はどんな状態になっているか、例えば「自分の行いを後悔している」「甘えられる存在を求めている」「ただただ他人のせいにしたがっている」「小さい頃からのコンプレックスが刺激されている」とか、そういった自分の状態を分析してみます。
その後さらに、本当はどんな自分でいたいのか、についてもぜひ考えてみてください。本当は、「今の仕事でもっと評価されたい」「辛いときには買い物よりも誰かに支えてもらいたい」「親にも楽をさせるくらい余裕のある稼ぎがほしい」とか、否定ではなくこうなりたい、こうありたいの希望がシンプルに、素直にとらえられるようになるはずです。
これがカウンセリングの過程になります。これを自分自身に問いかけてセルフロールプレイング、セルフカウンセリングを行うことはメタ認知を進めることにつながるはずです。
中野先生は、メタ認知に40代頃までに取り組んでおくことが70台以降の認知力に差が出ることにも言及しています。社会的に旺盛に動きが取れる世代にいる間に自分自身を見つめながら過ごせることで、老年期の自分のあり方に違いが出てくるようです。
私自身20代中盤までは自分のあり方に悩み、アイデンティティを揺らがせながら模索してすごしている日々でした。30代を迎えたこれからはそれを、形作り再構成していく時期が40代頃までやってきます。さらにその後(50代前後)は新たな自分の人生の課題発見と若年者を導くという役割が待っています。人生は何とも忙しいですね…!
脳の働きを知ることは、自分の心のコントロールに役立ちます。「なぜ」自分がそう感じるのか、今まで持てなかった時間の余裕が生まれた方はこれから感染が落ち着いた後の世界を思うように生きるため、想いを巡らせてみてはいかかでしょうか!
最後まで読んでくれてどうもありがとう。