義母の生霊と闘う話③
第二話はこちら▽
怖い話
ふと愛さんに話しておきたかったことを思い出した。
「あの、ひとつ怖い話していいですか?」
『どうぞ!話しちゃいましょう!』
実は義父は現在入院中である。
体調を崩してから全身くまなく検査をしたが、それは4年も前のこと。
コロナ禍による受診控えも相まったのだろう。
義父からは不調の訴えもなかったためここ数年は最低限の訪問診療で繋いできたが、ショートステイ先で食事を度々戻してしまうようになり受診。
結果はなんと胃がんステージ4。
打つ手なし。いきなり看取りのことを考えなくてはならなくなった。
私たちは義母に行方は知らせていないものの、夫の連絡先だけは以前のまま残していた。
義両親をケアしてくれている施設やケアマネ、社会福祉協議会と連絡を取り合うためだ。
義母からは年に一度くらい唐突に『金返せ!』とか、義父が余命が幾ばくもないだとか嘘電話がかかってきて面倒ではあったものの、これのお陰で興信所を使われずに済んでいる面もあった。
今回は疲れ切った様子の病院スタッフやケアマネから先述の義父の病状とともに、義母相手では会話にならず今後の方針が決められないので来てほしい、という依頼の電話がかかってきたことにより、これが義母の虚言ではなく、事実だということがわかった。
夫は何を言われてもキレ散らかしてしまう義母に変わり義父の治療の説明を受けたり、ホスピスを探したり、斎場に葬儀のプランを聞きに行ったり、しまいに『私は説明されてない!』と難癖をつけた義母に決定したプランをことごとくひっくり返されたりしながら、とにかく慌ただしい生活を送っている。
そんな中で先日、もういつまで話せるかわからないからと義父との面会の様子を動画に収めて帰ってきた。
「動画の中でお義父さんが居なくなったあと、お義母さんをどうしたらいいかって夫がお義父さんに相談している場面があったんです。
お義父さん、それを聞いたら急に口ぶりがハッキリして
『俺が死んだら、お母さんは、そう長くないよ』
って言ったんです」
話し終わるのとどちらが先だったか、電話の向こうから愛さんの『きゃーーーーー!!!』という叫び声とともにチリンチリンチリンチリンチリン!!という金属音が鳴り響いた。
「怖いですよね…(ダウンタウンDXばりにチリンチリン鳴らすやん…!)」
『怖い!!本当に怖い!!いつもより多く鳴らしてます!!!』
「ありがとうございます(そんな正月特番みたいなサービスしてくれはるんや)」
愛さんの勢いと音叉サービスにより少し癒やされたものの、動画を見たそのときは本当に怖かった。
義父は、本当に義母を連れていくつもりなんだろうか。
縁を切ることの重み
愛さんは義母の生霊も頑張って祓ってくれたようだったが、執念が深すぎてもはや悪霊の域らしく(この異常な執念、怨念については義母の生い立ちがかなり関わってくるので、いずれエピソード追加します)
全ては祓いきれないこと、義母が生きているうちに安井金比羅宮にお参りすることを勧めてくれた。
『ぜひ旦那さんも行ってください。亡くなってからでは遅いです。
早めに対処しないと…怖がらせたいわけじゃないんですが…お子ちゃんに影響が出ます。
恨んでる相手に効果的にダメージを与えるために相手の大事なものを狙うんですよね。
多分、旦那さんも…お義母さんみたいになっていきます』
対処しないと夫が義母に取り殺されるということか…?
そして子どもたちにも被害が及ぶかもしれない、と。
上の子は私達夫婦とともに1年半義両親と暮らしてきたが、義母が一人で壁に怒鳴ったり、深夜に私達の暮らす2階のドアをバンバン叩いて泣き叫ぶなどの奇行を目の当たりにし続けた結果、発語がなくなってしまったことがある。
今はよく喋るようになったが、あのとき離れなかったら、どうなっていたんだろう。
当時の絶望はもう経験したくない。
あの写真だけで鳥肌が立つような石のトンネルを自分がくぐることになろうとは。
そこまでしないと祓えない生霊を飛ばせる義母はやはり普通ではない強さなんだろう。
最後の質問
最後にずっと気になっていたことを聞いてみた。
「はじめ愛さんに見えたのは小さな男の子を連れた女性だったじゃないですか。義母はなぜ小さい頃の夫を連れてるんでしょう?」
『確かに。なんでなんだろう?ハイヤーに聞いてみますね。
…
…
…なるほど。
小さな子って動けるし話せるけど未熟で、まだ親がいないと何もできないじゃないですか。だからこそ親にかなり酷いこと言われても、ママごめんなさい!ママ大好きって言えちゃうところがあって。
お義母さんからすると旦那さんはまだそういう感じみたいです。
何言っても最終的には好きでいてくれるし離れないでいてくれるっていう。
安藤さんは、そうならないから嫌なんでしょうね』
なんて身勝手な。
ハラスメントも甚だしい。
人生初、生霊ハラスメント。
愛さんとの通話を終えてすぐ、私は安井金比羅宮への行き方を検索した。
もう優しくなんてしてやるものか。私はこのハラスメントを決して許さない。
『縁を切ってもらうのは、それなりにみかえりが必要』
安井金比羅宮に行くとインスタに書いたところ、私を心配した手相講座の生徒さんがメッセージをくださった。
噂はよく聞くし、生半可な気持ちで行ってはならない場所なのはわかっているつもりだ。
それでも。必要なんだろうし、行くしかないのだろう。
私はこれからどんな見返りを求められるのだろうか。
チャネリングを終えて
翌日、とにかく脚が重だるく痛みまで出てきて、仕事をするにも大変な一日だった。
寝るときもまだつらく、脚の下にクッションを敷いてようやく眠りについた。
お義父さん、もう戻ってきたのか…?
不安を感じていたものの、朝にはすっかり良くなっていた。
ただの浮腫みだったのだろう。
そんな事があってから3日後
義父が亡くなった。
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