『月曜日のたわわ』広告の炎上でゆっくりするわよ!
ゆっくりしていってね!!!!
日経新聞に掲載された『月曜日のたわわ』というマンガの広告が炎上しているわね! 広告の実物はこれよ!
Twitterではこの広告を攻撃する人たちの声であふれたわ。
一部を抜粋するとこんな感じね。
未成年も閲覧するTwitterという「公共っぽい場」で、この言葉遣いはOKなのかと思うところだけど、まあそこは表現の自由だから許していきましょう。私は寛大なのだわ。
さて。もう少し理屈っぽい人たちは、「胸の大きな女子高生を性的消費しているのが悪い!」「女子高生(の胸)をモノ化している!」とか言っているわね。
とはいえ、「性的消費」は学術的に定義された語ではないから、いまだに誰の何が消費されているのかすら謎よ。
一方で「(性的)モノ化」に関しては、一応の定義はあるけれど、上の広告のような表現では該当しないわね。
皆さんも下記の「性的モノ化」の7つの条件を見ながらチェックしてみてね。
――まあ、そもそも「モノ化」の問題は、「モノでない対象をモノとして扱う」ことであって、完全に架空の人物を描いたイラストに「モノ化」は使えねえだろって説もあるんだけど、今回は優しさを込めてこの説は無視しましょう。
外形的には、単に胸が大きめの女子高生が立っているだけのイラストだから、1~7のような強烈なメッセージはちょっと読み取れないわね。いえ、頑張ればこじつけられる可能性はあるけど、その場合は「じゃあ、あれもこれも当てはまるよね」という話になって、結局は破綻するわ。
そのうえ、「性的モノ化」は、仮に成立したとしても、常に悪いわけではないのよ。
まず、「性的モノ化」の論文を書いたマーサ・ヌスバウムさん自身も、インタビューでこう答えているわ。
つまり、「やってもいい性的モノ化」はあるのよ。
さらに、フェミニズム美学の学者であるアン・イートンさんは、「悪い(問題のある)性的モノ化である」と主張するには、一般性がなければならないとしているわ。
いきなり「一般性」とか言われても、ちょっと難しいわよね。ちゃんと説明するわ。
たとえば、イラストの中で、特定の女性キャラクターを上の条件1~7をすべて満たすような形で性的モノ化したとしましょう(どんなイラストかはご想像にお任せるするけれど、たぶんすごく酷いイラストでしょう)。
でも、そのイラストで性的モノ化されているのは、あくまで「特定の女性キャラクター」という個別の存在であって、「実在する女性の皆さん」ではない。つまり、「一般性」がないってわけ。
一般性がないなら、「女性一般」の問題にはできないわ。あくまでも「特定の女性キャラクター」だけで閉じた話よ。
よって、性的モノ化表現であっても、一般性が認められない時、少なくともイートンさんは「悪い」「問題のある」表現だとはしないのよね。
論文の中で、次のように率直に認めている通り。
もちろん、イートンさんにとっての「悪い性的モノ化表現」もあるわ。そもそも、上の論文は伝統的な西洋絵画における女性ヌード表現の「悪さ」を批判する内容だしね。
では、イートンさんは、「伝統的な西洋絵画における女性ヌード表現は、悪い性的モノ化だ」と主張するためにはどうしたか?
まず、彼女は、西洋絵画に登場する女性の外見が没個性化していることを指摘したわ。
なるほど。そう言われてみれば、どの女性もみんな豊満な体型で金髪、目や鼻といった顔の特徴にも差がほとんどないわよね。
西洋絵画で実際に登場する女性は、設定上、特定の女神だったり特定の聖人だったりはするけれど、顔や体つきといった外見で、どの女神・聖人なのか見分けるのは不可能よ。
(西洋絵画に詳しい人なら、「女神や聖人を区別するのは、人体的な外見ではなく、アトリビュートだ」と知っているかもしれないわね)
次に、女神や聖人の絵画では、「女性はこうあるべきだ」という理想や規範が表現されていることが多いわ。まあ、宗教画だしね。理想や規範というメッセージ性はあって当然でしょう。
イートンさんは、こうしたことを詳細に論じて、ようやく「伝統的な西洋絵画の女性ヌードは、まず性的モノ化表現であり、しかも没個性的、加えてた理想・規範が表現されていることから、一般性も認められる。――ゆえに、悪い」という結論にたどり着くのよ。
じゃあ、『月曜日のたわわ』広告もそうだけれど、過去のジェンダークレーマー関連の炎上事案、こういう検討に耐えられるかしら?
結論からいうと、全く無理。超・無理ゲー。
例えば、茜さやさんが提供していた次の素材画像。
一見して性的モノ化表現ではないけれど、仮に性的モノ化だとしても、茜さやさんは誰にも強制されず、自分を完全な人間だと捉えた上で「自己モノ化」しているだけだから、ヌスバウムさんによれば、セーフ。
次。宇崎ちゃん献血ポスター。
これも性的モノ化表現ではないけれど、仮に性的モノ化だとしても、「宇崎ちゃん」は没個性的な存在ではなく、この上なく人格や外見情報を付与された「個別の女性キャラ」だし、「女性はみんなこうあるべきだ」という理想・規範を代弁しているわけでもない。イートンさんによれば、セーフ。
ちなみに、ヌスバウムさんやイートンさんの論文は、社会学者・小宮友根さんが頼りにして次の記事で引用までしているわ。
……。
…………。
あの、言いにくいんだけど、ヌスバウムさんやイートンさんの論では、日本で炎上する「性的な女性表象」をまったく説明できないわ。
説明できるとしても、それは「性的モノ化」とは異なる観点によるものでしょう。
ジェンダークレーマーさんたちは、「性的モノ化」とか言って、さもジェンダー意識が高いようだけれど、たかが論文を2報を読む手間すら惜しむレベルなのね。
まー、茜さやさんはともかく、「萌え絵」ってクリエイターの女性比率が高い(女性の当事者性が高い)ことも含めて非常に特殊だから、海外のフェミニズム批評は輸入しにくいのだわ。あいつら萌え絵のことなんか一秒も考えてないわよ。
むしろ、どっちかというと、日本のジェンダークレーマーが「おしゃれだ」とか「進んでる!」と思うような欧米チックな表現物こそ、海外フェミニストは批判しているのよね。
たとえば、「アメコミの女性キャラはいい! ちゃんと配慮されてる!」とか言ってたジェンダークレーマーさんもいたけれど、ワンダーウーマンを国連名誉大使にしたら、海外フェミニストがブチギレてめっちゃ炎上したわけで。
ある概念を使って何かを批評するときは、「本当に使えるか?」とちゃんと一次情報をたどって判断しましょう。
今回はここまで!
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