漫画家と出版社・テレビ局の確執:芦原妃名子さんの事件に寄せて
ゆっくりしていってね!
漫画や小説等を原作といて映像化するにあたって、原作からの「改悪」がよく話になるし、また内部的には権利関係で揉め事が起きがちよね……。
作家さんは出版社・テレビ局に比べると弱い立場にあり、自分の意向を映像化作品の内容にはなかなか反映させられないし、またそれで収益が上がっても、作家さんに支払われるのは固定額の著作利用料のみよ。興行収入が何十億円であったとしても、100万円ほどが相場だと言われているわ。
ずっと問題となっている話だけど、1月28日に漫画家・芦原妃名子さんが自死され、「テレビ局によって原作を意に沿わない形で改変されたことを苦にした結果ではないか?」と疑われていることで、再びネット界隈で議論が交わされているわ。
とはいえ、自死の原因が本当にその件なのかは分からないわ。また、上記が原因であったとしても、芦原妃名子氏と出版社・テレビ局の担当者との間に具体的にどのようなやり取りがあったのかも不明。
「悪代官のようなテレビ局にしてやられた可哀想な作家さん」というような――まあ、テレビ局の体質を考えるといかにも有り得そうではあるけれど――部外者からは憶測の域を出ないストーリーを描くのには、少し慎重であった方がいいでしょう。
個別具体的な「本件」に関しては、謹んで哀悼の意を表するだけにしておくわ。
そして一般論として、本件に寄せつつもご自身の体験を語った漫画家・佐藤秀峰先生のnote記事を紹介させて頂くわ。
佐藤先生の件についてもご心情察するにあまりあり、同情を禁じ得ないわね……。私なんかが言うのもかえって失礼だけれども、大変な思いをされたと思うのだわ。
佐藤先生が半フィクション(という表現が適切かは分からないけれど)として、新人漫画家と出版社との確執等を描いている漫画『描クえもん』も読ませて頂いたわ。
でも……うん。
佐藤先生が書かれた当該記事、まともな社会人が読んだら、「この漫画家の主張はあまりにも意味不明で、常軌を逸している」と評されかねないというか、ぶっちゃけ私も記事内容に加えて『描クえもん』の知識をプラスした上で何とか呑み込んだレベルだから、僭越ながらちょっとそのへんの指摘をしておくのだわ。
実際、ためしに私の会社で仲良くさせてもらってる課長さん(※マンガには全く詳しくない)に読んでもらったんだけど、「あの、手嶋君、この人、え、何を言ってるの? 何が言いたいの?」とガチで困惑したリアクションをされたわ。
※課長さんは別に冷血漢という訳ではなく、部下の面倒見もよく、お仕事も誠実にこなす善人よ。
まず、次の文章。
「「映画は水ものだから企画段階では真剣に考えなくて良い」という編集者の言葉を真に受けていたら……」部分は、佐藤先生としては少々騙されたというような論調に感じるわね。
ただ、弊社でも新商品の企画は次々に上がるものの、実際に商品化にこぎつけるのはごく一部だし、それは出版・テレビ局でも同じでしょう。課長さんと「別にこれで出版社サイドの悪意ある嘘とまで推測することはできんよなぁ……」と解釈一致。まあここは細かいけどもね。
より大きな問題はそれに続くところで、「契約書で許諾を得ることが決まっているのに守られませんでした」という指摘ね。もちろんそれは契約違反であり、よろしくない。
でも、更に読み進めると、「映像化の契約書に判を押すことを要求され」「映像化は名誉なこと」と思い、ハンコを押した上で原作使用料として200万円弱を受け取ったとあるわ。
ここで私もちぐはぐな印象を受けたのだわ。
だって、契約書が作成され、説明も受けてハンコを押し、お金も受け取ってるのよ? だったら少なくとも『映像化』の部分に関しては、著作権者の許諾を得るという約束が誠実に守られていたとしか、当該記事の情報だけでは分からないでしょう。
もちろん、だからこそ、タイトルでも内容でも「嫌でした」(≒後悔しているという感想以上のことは主張できない。契約関係について自分側が甘すぎた。)と述べるにとどめていて、佐藤先生は自覚していらっしゃるのでしょう。
これは『描クえもん』を読めば、特に「分かっていらっしゃることが分かる」のだわ。また本作だけでなく、各所で同趣旨のことを述べているしね。
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