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「北欧モデル」と「非犯罪モデル」の科学的検討~進捗報告~

【更新履歴】
2023年2月19日:作業中の様子を配信した(本問題の整理をしながらパワーポイント作成)。アーカイブ動画前編後編。(※記事本文には変更なし)

ゆっくりしていってね!

軽い気持ちで「北欧モデルの是非」に手を出したら、めちゃくちゃな事になっているのだわ……。

最近更新ができていないし、特にマガジンにご登録頂いている皆様に申し訳なくなってきたから、途中経過を報告させて頂くわね。

山のように増えていく資料、資料、資料……。北欧モデルに関する政府系の評価報告書はクソ長いし(平気で200ページとかある)、論文もアホみたいな量があるのだわ……。

さて。1999年のスウェーデンで、「売春は非犯罪だけど、買春は犯罪とする」という法律が複数の国家に広まり、「北欧モデル」(Nordic model)と呼ばれているわ。日本でも一部のフェミニストが、「日本にも北欧モデルの導入を!」と叫んでいるわね。

実際に導入したのは、ノルウェー(2009)、イングランド(2009)、ウェールズ(2009)、アイスランド(2010)、カナダ(2014)、北アイルランド(2015)、フランス(2016)、アイルランド共和国(2017)、イスラエル(2019)って感じ。

これらの政府も検討の上で導入しているから、一応の根拠や理屈があるし、「北欧モデルを導入して良かったです」という内容の評価報告書も公開しているわ。

スウェーデンは、2010年に最初の評価報告書を出し、その後、北欧モデルへの批判に応じた再評価報告書も2019年に提示しているわね。スウェーデンは1999年導入→2010年評価→2019年評価だから、10年ごとにやってる訳ね(まあ2019年のやつにはTenth periodic reportとタイトルにあるし)。

フランスも2019年に同趣旨の評価報告書を出してる。

さらに欧州議会も乗っかって、北欧モデルを大筋で褒める形の評価報告書を公開しているわよ。

……これ、いまザーッと簡単そうにリンクを並べたけど、スウェーデンの2010年のやつとか政府公式サイトでは公開終了になってて、インターネット・アーカイブを漁って見つけ出したから、わりと「読む以前の手間」もかかってるわ。

あと、2010年のスウェーデンのやつ、スウェーデン語だからね。もちろん、フランスのやつはフランス語。

こうした「北欧モデル」への褒めそやしの一方で、売春も買春もどちらも犯罪としない、いわゆる「非犯罪モデル」も提唱されているわ。私は現状の検討ではこっち支持よ。

セックスワーカーの当事者団体が北欧モデルを非難して、非犯罪モデルを支持するのは、まあ当然のなりゆきだけど――更にここに医学・疫学関係のガチ勢が超全力でベットしているのよ。

特に医学系の超一流学術論文誌であるThe Lancetは2014年に"HIV and sex workers"というシリーズで7つの論文と5つのコメントを公開し、「北欧モデルの撤廃」および「セックスワークの全般的な非犯罪化」を強く求めたわ。

なんでかって言うと――いや上に「HIV」って書いてあるけども――非犯罪モデルはエイズを大幅に抑止する効果が期待できると明らかになったからよ。また、エイズ以外にもセックスワーカーが暴力や危険な性行為(コンドームを着けない等)に晒されるのも防げるとしているわ。

またThe Lancetの論文によれば、

・「北欧モデル」はセックスワーカーに対する警察のハラスメント("買春者"を逮捕するための付きまとい、監視など)を引き起こしている。

・結局は売春側の女性も司法に処罰されている(セックスワーカーが何人かでアパートの一室などの同じ施設に集まると「売春宿の運営」となり、それは売春女性側でも罪になる)。

これらせいで客へのセックスワーカーの交渉力はガタ落ち。危険な客を見分ける時間もなく(警察に見つかったら商売にならなくなるから)、もらえるお金も少なくなって、先ほども述べたコンドーム着用拒否などの危険行為にも応じざるを得なくなっている。

・よって、「危険な客」から暴力に晒されるし、HIVに代表される性病にもかかる。しかもそのことを自己申告できない(今後の商売に差し障る)。結果、北欧モデル支持者が言う「脱出ルート」(売春から足抜けさせる社会支援)も機能していない。

――等とデータから示しているわ。他にも複数の深刻なリスク、デメリットがあるけど、いったんこれくらいにしておくわ。

さらにThe Lancetは、2018年にもデータを更新した総説論文を出版し、北欧モデルがいかに公衆衛生の観点から受け容れがたく、非犯罪モデルが緊急に必要かを改めて主張したわ。

The Lancetは、繰り返すけど、本当に超一流の学術論文誌よ。インパクトファクターは80近くあるわ。自然科学系でいえばScienceやNatureのレベル。ここに論文が採用される以上の医学系の研究業績って、もう残りは「ノーベル生理学賞を受賞した」とかそんなんよ。

これと並行する形で、世界保健機関(WHO)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)、そしてアムネスティ・インターナショナル、SWARM(セックスワーカーの当事者団体)が非犯罪モデルの積極的支持を発表。

まー、なにしろThe Lancetが全面的に味方になってくれてるから、めっちゃ強気に出られるのだわ。とりわけ北欧モデルの推進者になっている「じぇんだーがくしゃ」に、The Lancet掲載クラスの論文を否定する科学的議論ができる訳がないのよ。

データの収集もその解析も、それに基づいた予測モデリングの作成も全く比べ物にならない。

ちなみに、The Lancetのセックスワーク関係の論文は、簡単な登録さえすれば全文をHTMLで無料で読めるから、Google翻訳にでもDeepL翻訳にでもかければ、簡単に日本語になるのだわ。ちょっと抜け落ちは出るけど、大意はつかめるでしょう。

私は英辞郎の有料会員に入会しなおして、スマホにジーニアス英和辞典も最新版を入れ、翻訳のクオリティアップを図っているところよ。

また、2015年に北欧モデルを採用した北アイルランドは、その4年後である2019年にやっぱり評価報告書を出したんだけど、その内容はざっくり言えば「北欧モデルなんてやるべきじゃなかった」というものだったわ。

――ともあれ。

大量のデータとその考察、さまざまな論点があるから、まとめるのに時間がかかっているのだわ。

とはいえ、いまこの記事で、特に重要な文献情報は示したから、私の更新をまたずに挑戦してみるのもいいと思うのだわ。

もちろん、私は私はまだまだ頑張るわよ!

――でも、本当に時間がかかりそうだから、これよりは軽い(これより重いテーマも思いつかんが)別のテーマの記事更新を挟んで、マガジン登録者の皆様に損をさせないようにする予定よ!

お待たせして大変申し訳ないけれど、応援してくださると嬉しいのだわ!

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