アニメ女性キャラの髪型~「M字バング」の流行はいつ?~
ゆっくりしていってね!
今日はとつげき東北さんのとあるポストの妥当性を検証するってのをやるわよ!
実際の内容はこちら! まずは読むのよ!!
内容の健闘に入る前に、この髪型の名前をいっておきましょう。「M字バング」よ。もっとも分かりやすく露骨な例を出すと、『けものフレンズ』(2017)のサーバルちゃんの髪型ね。
キャラを可愛く見せるためのステキな前髪を描きたいけれども、だからって適当に描くと、表情をあらわすために大切な眉や瞳が隠れてしまう……。
この葛藤を解消するために、「前髪は真ん中に描くが、目の上には描かずスペースを空ける」と工夫すると、この「M字バング」になるそうよ。(ちなみに、「バング」は真ん中に延びてる前髪のふさっとした部分を指してるわ。)
さて。アニメについて――とつげき東北さんのポストの文脈に即して言うなら、「男性オタクの萌え系文化における美少女表現」――その一般論を語ると、その手の人たちから反例がバンバン飛んでくるのがネット社会の日常風景よね。
まあ、とつげき東北さんのこの書き方だと、知らない人はただ文字通りに読んで、「あれ? こんなん反例を一つ挙げれば終わりじゃね?」と考えるのは自然でしょう。(近年でない前髪の真ん中を伸ばした女性キャラか、もしくは近年であって伸ばしてない女性キャラを出せばいい。)
じっさい、ヒトシンカさんも次のように疑念を投げかけているわね。
とはいえ、さすがにとつげき東北さんも、日本の女性アニメキャラは既に膨大な数に達していて、とりわけ髪型の特徴において「真に存在しなかった何か」を探すのは不可能であることは十分承知していらっしゃるはずよ。
よって、「昔はいなかったが、今は伸ばすようになっている」とは、すなわち「昔は"真ん中の髪を伸ばす女性キャラ表現"は特に【流行】していなかったが、最近は広く【流行】している」程度の趣旨と考えられるわ。
まあ「流行」ということなら、多少の例外がいるのはむしろ当たり前で、いくつか指摘しても覆らないわね。こっちの解釈のほうが自然だから、本記事ではこれに則って検証するのだわ。
私の第一印象での妥当性
私の第一印象では、とつげき東北さんの分析は正しいと思ったわ。(そして、本記事で後述するけれど、2023年現在に改めて検証した結果においても、概ね正しいと言える。)
なぜ第一印象で正しそうに感じたかを説明するには、ちょっと回り道だけど、私について述べておく必要があるわね。私は要するに現在30代半ばの男性オタクよ。
つまり、ざっくり1990年代後半を男子小学生として過ごしていて、「地上波放送しているアニメ」を観ていたのよ。
強く記憶に残ってるのは、『るろうに剣心』や『地獄先生ぬ~べ~』『ドラゴンボールGT』あたりのド定番ジャンプアニメね。あと男子向けとして『デジモンアドベンチャー』や『犬夜叉』も加わるって感じかしら。
そんで、この小学生時代にも、私は『カードキャプターさくら』(1998)および『まもって守護月天!』(1998)、『神風怪盗ジャンヌ』(1999)、『コレクターユイ』(1999)を観ていたわ。
……今考えると、すでにして若干オタク化の片鱗が見られるわね。
この時点で分かることがあるんだけど、私が上で挙げた作品群には、とつげき東北さんが主張するところの「M字バングのアニメ女性キャラ」って「マジで居ない」のよ。特に美少女を表現したものではね。
私の原体験として「アニメ美少女」でイメージするのは、こういう系統な訳よ。
『コレクターユイ』みたいな「すごくボリューミーな前髪が貼り付いてる」感じの髪型とか、『カードキャプターさくら』や『神風怪盗ジャンヌ』の「インテーク」と呼ばれる「頭の中央部分で一部の髪が持ち上がって折れ曲がって下がる」髪型とか、あるいは『まもって守護月天!』の「立ち上げ前髪」ってやつね。
このあたりの共通項としては、「現実の髪型として再現するのは難しく、二次元イラスト特有の表現と言える」ことね。
その後、中学生~大学生時代はかなり自覚的なオタクとして生き――少しアニメから話は変わるけど――特にエロゲーを300作品くらいプレイしたのだわ。
1998年~2008年くらいの10年間に発売された有名作品はたいていプレイしているか、プレイはしていないにしてもタイトルやキャラは知ってるわね。(もちろん小学生の時にエロゲーをしていたのではなく、「少し昔の発売だけども名作らしい」と遡ってプレイしたものが多いって意味よ。)
でも、1998年~2008年の10年間のエロゲー作品では、これまたM字バングの女性キャラってほぼ思いつかないのよ。
エロゲーはキャラクターの「美少女性」がとりわけ重視される世界だから、「アニメの可愛い女の子の表現」を探るのに参照先としていいでしょう。これを今度はデータから見てみるわ。
エロゲーの統計表から見る髪型
今度は自分の体験ではなく、「エロゲー批評空間」の統計表を使うわね。
当該サイトの「各種統計表目次」から「エロゲーのみ」で「年度ごと」の「中央値順」を指定し、1998年から2008年まで「年度1位の作品」だけを以下に並べたわ。
この方法なら、私の恣意的な誘導は入らないでしょ?
「ボリューミー前髪貼り付け」「立ち上げ前髪」「インテーク」はすさまじい人数がいるけど、「M字バング」については、最後の『G線上の魔王』(2008)がギリギリ該当するかどうかってところね。これにしたって、どっちかっちゅうと、ボリューミー前髪に分け目をつけたら結果的にこうなった感じが強いけども。
いちいち貼ってられないから省略するけれども、もう少し間口を広げて、「年度ごとの10位以内」にしても、大して結果は変わらないわ。「ん~? この子はM字バング、かしら?」ってのは見かけなくはないけどね。
こう整理すると、私が「M字バング髪型のヒロインが昔(90年代~00年代)に【流行】していたという印象はない」「"いなかった"と断定的に表すと語弊があるものの、そう整理してもそんなに遠くない」って言うのも分かるでしょう。
再び、アニメのお話へ
ヒトシンカさんは、綾波レイ(1995)と平沢唯(2009)を挙げていらっしゃったけれども、じゃあ「1995年以降(または2009年以降)、綾波レイ(または平沢唯)の人気にあやかろうと、ドカスカM字バング髪型のアニメ女性キャラが量産されたか?」っていうと、それは「否」なのよね。
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