人口6000人の小さな町に、たった1日で200人が訪れる!|「100キロ歩こうよ大会in摩周・屈斜路」の魅力
北海道弟子屈(てしかが)町で、毎年7月に開催される「100キロ歩こうよ大会 in摩周・屈斜路」
私は長年、この「100キロ歩こうよ大会」の実行委員長を仰せつかっていますが、2005年に第一回大会を開催してから、早いもので今年で18年目を迎えます。
「100キロ歩こうよ大会」は、今ではすっかり、弟子屈町の夏の風物詩となりました。
毎回200名以上の方が参加され、中には鹿児島からはるばる来られる方もおられるこの大会。
なぜ北海道の田舎町に、こんなにも多くの方が毎年参加されるのか。
その理由は
「己の限界を超えた先にある、真の感謝・感激・感動を味わえる、日本で数少ない大会だから」
なのです。
辛いのに、また参加したくなる…不思議な大会
ところで、100キロとはどのくらいの距離かというと…
東京浅草から神奈川県箱根までが、高速道路を使って約100km。
大阪市から和歌山県有田市までが、約100km。
つまり、車で3時間ほどかかる距離を、ひたすら、30時間ほどかけて歩くということになります。
最初は、意気揚々とスタートした皆さんも、次第に足取りが重くなり、歩くスピードもばらばらになり、結局100キロを、ほぼ一人で歩くことも少なくありません。
心臓破りの坂、永遠に続く山道など、難所も多々ある中、夜になると明かりは一切無くなり、あたりは真っ暗になります。
時折、得体のしれない獣の声が聞こえる中、
「もう嫌だ、やめたい…でも誘ってくれた友達の為にも、ここでやめるわけにはいかない」
辛さ泣きそうになりながらも、休憩はほぼ無しで、ひたすら黙々と30時間歩き続ける。
初参加の方の多くが道中、
「友達に誘われて、軽い気持ちで参加したけれど、来るんじゃなかった」
と、何度も後悔されるにも関わらず、
翌年には、「松山さん、今年は友達を連れてきたよ!」と言って満面の笑みで再び参加される。
…なんとも中毒性のある大会なのです(笑)
感謝・感激・感動を味わえる4つの理由
「100キロ歩こうよ大会」は「己の限界を超えた先にある、真の感謝・感激・感動を味わえる、日本で数少ないイベントだ」と冒頭にお伝えしましたが、
なぜそれほどまでの感謝・感激・感動を味わえるのか、その理由を一つ一つ紐解いていきましょう。
1 北海道の大自然を目一杯味わえる
雄大な北海道の大自然を体いっぱいに感じられるところが、この大会の大きな魅力。
例えば、日本最大のカルデラ湖、屈斜路湖。
通常の観光なら、景勝地の駐車場まで車でさっと行って終わりですが、歩くとなるとそうはいきません。
なんと、6時間もかけて湖の周りを歩きます。
湖面には山々が反射してうつり、空は雲ひとつ無い青空。次第に夕暮れになり、夕日に照らされた屈斜路湖も本当に美しくて…。
通常の観光では決して味わえない景観、時間によって様々な表情を見せてくれる自然の偉大さ、美しさを存分に感じることができるのが、この大会の醍醐味です。
2 究極の状態で人の温かさを実感する
大会では、地元の皆さんがボランティアで、食べ物の用意や、チェックポイントでのサポートなどをして下さっています。
真夜中、真っ暗な夜道を、ひたすら何時間も歩く。
終わりの見えない苦しい道のり。
「だめだ、もう歩けない…限界だ…」
極限まで追い込まれた時に、向こうにぽつっと明かりが見える。
地元の人達の「こっちだよー!!頑張れー!!」という声援が聞こえて、皆さんが温かいお蕎麦や手作りのおにぎりを用意して、待っていてくれる。
涙が、自然と溢れてくる瞬間です。
ボランティアの皆さんの中には、過去に100キロ歩こうよ大会を完走した方も多く、
「辛いけど、ここを超えれば少し楽になるから、頑張って!」と実体験から励ましの声をかけてくれる一方で、逆にボランティアの皆さんも、頑張る参加者の姿に勇気を頂いて…。
与える側も受け取る側も、人の温かさを通じて、究極の「感謝・感激・感動」を味わえるのがこの大会の大きな魅力。
また、大会前後に開催される、前夜祭・後夜祭では、地元の皆さんが心を込めておもてなしをしたり、みんなでお酒を飲んだり、ゲームをしたり、色んなことを語り明かしたりして…
ここ数年、コロナで断絶されてしまった人と人との繋がりが、ここにはちゃんと残っている。
「人っていいな」と思える、温かい空間。
だからまた皆さん「来年も参加したい!」と思われるのだと思います。
3 当たり前のことが当たり前ではないと気付かされる
普段の私達にとっては当たり前のこと。
例えば、
近くにコンビニがあって食べ物が買えること。
電気がついて夜でも明かりがあること。
車や公共交通機関を使って、どこへでも自由に行けること。
舗装された道を歩けること。
この大会では、全てが、当たり前ではなかったことに気づかされます。
有り難いという言葉は「有ることが難しい」と書きますが、「無い」という経験をして初めて、その「有り難さ」が分かる。
日本には、夜でも明るい街中を50キロ、100キロと歩く大会もありますが、それとは違い、何も無い大自然の中を歩くからこそ、「有り難み」を心の底から感じられる。
これも弟子屈町の「100キロ歩こうよ大会」の良さなのです。
4 己と徹底的に向き合い、達成感を味わえる
一人で歩いていると、色んな思考が湧き上がってきます。
まさに「自分と向き合う100キロ」と言っても過言ではありません。
「もうやめちゃおうかな…十分頑張ったじゃないか」
「いや、ここで諦めちゃだめだ!必ずゴールするんだ!」
心の中で様々な葛藤が生まれながらも、自分の人生と徹底的に向き合います。
「今までの自分の人生は、全て中途半端だった。これだけはやり切ろう」
「あの人が励ましてくれたから今の自分がある、だから頑張ろう」
時に無心になりながらも、一歩一歩、歩みを進める。
本当に苦しく、辛い100キロを歩き終え、最後にゴールしたときの皆さんの表情を見ると、「達成感」という一言では言い尽くせない…
まるで自分の中にある大きな壁を乗り越えて、一回り大きく成長されたような印象すら覚えるほど。
とはいえ、たとえ完走できなかったとしても「感謝・感激・感動」はその方の中にしっかりと残りますし、
どのような結果であれ、みんなで「おめでとう!」と称え合えるのが、この大会の良さだと思います。
100キロ歩こうよ大会の裏側
「感謝・感激・感動」を味わえる素晴らしい大会だとはいえ、運営する側は実際は大変です。
みんな本業がありながらも、ボランティアで、18年間もこの大会を続けている。これは並大抵のことではないと思います。
また今年は、コースを大幅にリニューアルしましたが、実際に様々な道を車で走りながら、距離を計算し、景観はそのままに、より安全・安心な道を歩いていただけるよう設計するのは、本当に至難の業でした(笑)
実は、大会運営メンバーが、2021年の東京オリンピックの運営に携わったのですが、彼がこんな風に話していました。
「規模が違うだけで、オリンピックの運営も、100キロ歩こうよ大会の運営も、やっていることほぼ一緒だよ。それほど僕達はすごい運営ノウハウを持っているよ」
と。
つまり私達は、毎年オリンピックを開催しているというわけですね(笑)
そこまで大変なことを、なぜ18年も続けているのかと聞かれると、それはやはり、参加者の皆さんからの、喜びの声と期待。
「参加して本当に良かった!」
「また来年も頼むよ!」
こうした言葉が、また私達運営メンバーに、来年もチャレンジするパワーをくれるのです。
また、この大会を通じて得られた多くの出会いも大きいですね。
弟子屈町にいるだけでは絶対に出会えなかった、東京や大阪の経営者の皆さんの存在に、私自身大きな刺激を受け、成長の機会を頂いています。
こうして書いている間にも、多くの皆さんのお顔が思い浮かんで…皆さんのお力添えで大会を開催し続けられていること、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
これから先、何歳まで自分が運営メンバーを続けられるかはわかりませんが、今後の私の役割は、運営の後継者を育てること。
参加者の皆さんに弟子屈の魅力を伝えながらも、未来の運営メンバーもどんどん増やしていきたい。
これからも、弟子屈町からの地域創生を、皆さんとワンチームで頑張っていきたいと思います!
2023年の100キロ歩こうよ大会のエントリは、3月10日より開始となります。
200名の定員に達し次第受付終了となります。
こちらよりお早めにお申込み下さい。
→https://www.100kmwalk.net/summary/entry/