トンレサップのほとりで、手作りとお母さんの笑顔に会いに行きませんか? 日本人女性がカンボジアの女性たちと紡ぐ手仕事のストーリー
世界遺産アンコールワット遺跡群のあるシェムリアップ。観光客で賑わう街中には、お土産物屋さんが軒を連ねています。しかし、多くのお土産物屋さんに並ぶ手作りの籠や民芸品はどのように作られているか、知っている人は少ないでしょう。
今回は、そんな手作りの品に惹かれ、カンボジアの女性が生み出す手仕事の場を創り出している、ゆきこさんの工房を訪ねてみました。
中川ゆき子 Nakagawa Yukiko
アジアをバックパック旅行で巡る中、カンボジアに惹かれ2005年より在住。旅行会社で働く中、お客さんとの会話でカンボジア産のお土産があまりない事に気づき、2009年にvery berryを立ち上げる。2012年にはショップをオープン。カンボジアの手作りの品を集め販売する中で、自らも良い商品づくりで女性の自立と継続した生業を目指したウォーターヒヤシンス商品のブランドと工房『パバナサラ』を立ち上げる。
目の前に広がる蓮畑と、お母さんの手仕事の日々
「作り手さんの工房と、一面の蓮を見に行きませんか?」
ゆきこさんからの最初 のお誘いはそんな言葉でした。トンレサップ湖の近く、工房で 使うウォーターヒヤシンスを収穫しにいく場所が素晴らしい景色ということで、是非にとお願いし、早速行くことに。
当日、彼女と共にトゥクトゥクに乗り込んで、現地へと向かいました。道すがら、沿道のいつものカンボジアの朝の風景が流れていくのを眺めながら、世間話に花が咲きます。
ボートの船着き場のある水上集落への細い 道を入ると、一気に昔ながらの田舎の風景が広がりました。木の杭にボートが止めてあるだけの簡単な船着き場に到着。野の花が咲く斜面をおっかなびっくり降りて、ボートに乗り込みます。今日は、作り手のお母さんが妊娠後期の大きなお腹ということで、旦那さんがピンチヒッターでボートを漕いでくれました。ゆっくりと漕ぎ出される手漕ぎボート。静かに水面を進むボートからは、岸辺でお しゃべりに興じる地元のお母さんや漁をする親子など、カンボ ジアの日常を垣間見ることができました。
作り手のお母さんと、それを取り巻く環境
ウォーターヒヤシンスは別名ホテイアオイという、カンボジアの水辺ならどこででも見ることができる水生植物です。この茎を刈り取り、細かいゴミや汚れを取り除き、乾燥させ、燻蒸して白さを出し、編み上げて一つの製品にしていきます。
こう書くと簡単な作業のように感じてしまいますが、水をたっぷり含んだ水草を刈り取るだけでも重労働。乾燥ひとつとっても、雨に当たらないように、カビが生えないように移動しながら行います。そう、全部の工程を作り手の女性の手作業だけで行っているのです。
作り手の女性たちは何ヶ月も練習を重ね、道具を工夫し、今の姿があります。
現在、作業は作り手のお母さんそれぞれの家で行っています。作り手のお母さんの一人のお宅を見学させてもらった時のこと、作業場は家の片隅にあって、家族の協力の元、時には子どもたちがやってきたり、近所の奥さんが大声で声をかけてきたり、飼っているニワトリが通り過ぎたり、とても賑やか。
家族と離れることなく、家で仕事ができるのがいいと話すお母さんは、一家の稼ぎ手として製品を作り、家族の生活を支えています。普段着でお化粧していないのよ、と恥ずかしがりながらも写真に応じてくれた彼女の笑顔がまぶしく、暮らしと手仕事がぴったり重なった、大変だけど家族と一緒に暮らせる安心感がとっても伝わってきました。
そんなお母さんたちから生み出される製品は、単なるお土産物というだけではなく、日常のファッションの一つとして使ってもらえるようなバッグや、インテリアのアクセントになるような籠なども。
混沌とした日常から生み出される手仕事の品は、とても美しくて長く手元に置いておきたいものたちばかりです。
みなさんも、ぜひ、お店に売られている商品のストーリーが感じられる旅に、出掛けてみませんか?
ベリー・ベリー very berry
中川ゆき子さんがオーナーをつとめる、カンボジアの手仕事の品を集めたセレクトショップ。お土産にも最適な小物からアクセサリー、布製品など、ゆき子さんが厳選した商品が並びます。
営業時間:10:00〜18:00 定休日なし
住所:Psah Chas Alley 1, Siem Reap
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