企画参加レポート「演劇をする:上演の分解」(荻原永璃さん企画)
「手探りの準備」に参加している俳優の谷田部です。
2024年6月に、手探りメンバー荻原永璃さんの企画「演劇をする:上演の分解」に参加させていだきました◎
ので、簡単にレポートさせていただきます。
いきなりの感想
まず、参加した感想を一言で表すと
「創作における ぼんやりとした不安が、明確な不安になった」です。
非常にネガティブに聞こえますが、まったくの逆で、非常にポジティブな一歩が踏めました👏✌️
参加した6月の時点で、今年2024年の10月に初めて演劇作品を企画・製作することが決まっていたが、なにから手をつければわからない不安な状態。そのため、荻原さんの企画に参加することで、いくらか先に進む手立てを見出したいという比較的はっきりした理由を持ち、会場である早稲田に向かいました。
「演劇をする:上演の分解」 企画概要
荻原さんは演出家、劇作家でアムリタという団体を主宰されており、「演劇をする:上演の分解」という企画は、「演劇をするための(あるいは上演や公演、興行のための)タスクリストの作成と共有を目的」として過去2回、開催されています。
具体的な内容を、荻原さんのtumbler記事から引用します。
当日の様子
参加者は、荻原さん、水道航路という団体をお持ちの新上さん、そして谷田部の3人。
簡単な自己紹介から始まり、荻原さん主宰団体アムリタの活動三原則を共有する時間に。それが同時に今回の集まりのルールとなる。
その後はいよいよ「上演の分解」作業にとりかかった。
荻原さんが、過去2回の分解作業によって作られた単語カードをどさっと取り出す。
カード一枚につき一項目、「演劇をやるために必要なもの(または演劇をやるための準備の工程)」が記されている。
さらにそこから、
・発生してほしくないもの
・必要な気持ち
・物理的に必要なもの
も項目が追加されている。
例えば、
「劇場を決める」と「劇場費を払う」(前払いの場合)の2枚のカードの間に追加されたであろう1枚には「覚悟を決める」と書いてあった。それがあるだけで、前後のカードの重みが増して感じ、とても面白い。
第3回目の私も、追加できそうな項目をカードに書いてリストに参加。俳優としての活動経験しかないが、その目線から数枚追加することができた。複数回、さまざまな人たちとリストを作成することで、多角的なタスクリストになっていることを実感する。
だいたいカードの追加を出し切ったところで、タスクリストを吟味し、気になる部分を荻原さんに聞く時間になった。
その流れで、参加の理由であった自身の企画公演の話をしてみる。
具体的には、
・一つの作品を作るために確保する稽古時間はどう決めているのか?
・予算に対して公演製作費をどのように内訳しているのか?
などなど。この質問に対して、主宰としての上演経験豊富な荻原さんと新上さんが、ご自身の経験を踏まえて非常に詳しく教えてくれた。
感想
ひとえに「上演をする」といってもさまざまな規模や形態が存在するため、多角的な視点でのタスクリストを作成することは非常に価値があることだとしみじみ思った。
というのも、学生時代に演劇サークルに所属し、企画公演や劇団公演を運営したことがあったが、所属サークル流の上演形態しか知らなかったため(今ふりかえると)非常に非効率な方法をもって、ありあまる熱意のみで公演をゴリ押していた自身の経験を思い出したからだ。どれぐらいゴリ押していたかというと、予算組の段階で赤字確定の公演を何本も打って困っていたくらいゴリ押し。公演企画の際は、厳しいとされる上級生の審査会議が存在し、熱意に欠けていると公演の許可が降りないこともあったが、赤字前提の予算案を突っ込まれることはなかった。
また、当時、大人の制作さんにおすすめされて財団法人地域創造が出版している『演劇制作マニュアル』※を読んだが、公共ホール職員向けに書かれたマニュアルのため、学生の私にとっては規模が大きすぎてあまり参考にならなかった。(冊子は知見に溢れた素晴らしい内容だが、それを取り入れられるようなスキルと経験がなかったため宝の持ち腐れとなったということです。今読むとめっちゃ面白い)
個人の偏った考えかもしれないが、商業公演や劇場主催の中〜大規模の公演だと企業や団体としてのノウハウが既に確立しているから、手順が明確なのかもしれない。
つまり、タスクリストを共有したい(すべき)層は、上演をするにあたっての手順がより複雑で細かいことが多いのではないかと思った。お金があれば解決することを、予算が少ない故に、別の手順を追加で挟まなければいけない、とか、人手があれば複数人でできることを1人が複数のポジションを抱えていたり、とか。
でも、意外とその複雑で細かくて回りくどい作業を他人とするっていうこと自体が「演劇をする」でもあるのではとも思う。荻原さんが公演を打つとか、作品を作る、ではなく、「演劇」を「する」と名づけているのも納得いくなぁと勝手に思ったりする。
ただ、その複雑さや回りくどさは煩雑で掴みきれず、参加前に私が感じたモヤモヤの正体でもあったので、それらをタスクリストにして共有することは、「演劇をすること」の背中を押してもらえるようなありがたい作用があった。
また、個人的には、劇団などの団体に所属しているわけではないフリーの俳優のため、このような内情をシェアしてもらえる機会は滅多にない貴重なももだった。
タスクリストそのものも貴重な資料だが、それを検討・共有する場所がとっても大切だし、「演劇をする」は他者と関わることでしか実現しないなぁとすごく当たり前なんだけど、自分の性格的には重要なことを痛感した企画体験でした。
荻原さん、新上さん、ありがとうございました◎
2024/11/22 谷田部
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※以下のブログに冊子の詳細が書かれています。http://watch.fringe.jp/2014/1103172737.html