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手探りの準備2023 振り返り(谷田部美咲)

2020年に俳優活動を再開して2年半ほど経ち、人類が半ば強制的ににコロナとの共生の道を歩み始めた2023年春頃、私は、ひとりきりで演劇活動を続けていくことにとてつもない不安を感じていました。劇団には所属せずフリーでの活動を選んでいるため、公演に参加するためには他人の企画に乗っかることしかできない受け身な状態。また、出演の機会を得た後も、生活費を稼ぐ仕事と演劇活動との両立のために、テトリスのようにスケジュールを組み合わせてなんとか乗り切るギリギリの状態。そんな時、ふと、たくさんの「もしも明日...」が頭によぎります。もしも明日、親の介護が必要になったら?子供に恵まれたら?事故で大けがしたら?新たなパンデミックが出現したら?
生活が一変するような出来事が、明日自分の身に起きたとして、現状のやり方で自分は演劇を続けられるのだろうか。どんな状況になったとしても演劇を続けていくためには、自分で企画を生み出す力が必要なのではないか。そんなことをもんもんと考えていたところ、幸運にも「手探りの準備」にお声かけいただき、二つ返事で参加を決めました。
私が実現したかった企画は「演劇を続けていくことを目的として俳優同士がゆるやかに連帯しあえる場所作り」です。やりたいことはなんとなく自分のなかに持っているのに、自分ひとりでイチから企画を立てたことがない私にとって、「自分のやりたいことに人を集める」ことに対する心理的ハードルは非常に高く、参加者を公募するまでに、なんと5ヶ月近くの時間がかかってしまいました。企画書を出しては書き直したり、やりたいことを整理しようとして結局振り出しに戻ったり...最終的には自分自身に痺れを切らしたことで企画実現の一歩を踏み出すことができました。そして、そのウジウジ期間を乗り越えることができたのは、毎月参加していた「手探りの準備」で近況報告をしたり、メンバーからフィードバックをもらったり、また、企画時のどらま館制作部チームの手厚いサポートがあったからこそです。
合計4回の参加公募の企画を達成できたことで、当初抱えていた「とてつもない不安」は、「まあまあの不安」くらいにしぼみました。不安が尽きることはありませんが、自分が声を上げたことに賛同して集まってくれる人がいたことは、これからの演劇活動のなかで大きな糧になるのではないかと思っています。
また、どらま館という劇場が、演劇や舞台作品の上演だけでなく、「手探りの準備」のように小さな小さな上演のタネを育てる場として存在として開かれていることに希望を感じます。そして今回、育てることができたタネを、私なりに大切に、大きくしていきたいと思います。
企画の浜田さん、並びにどらま館制作部の皆様、手探りの準備メンバーの皆様、1年間ありがとうございました!


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