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『翼あるうた <日本女流詩集>』

図書館のリサイクル棚にありました。
赤色の背に、<新川和江 編/堀文子 装画>とある。

昨年8月に95歳で旅立たれた新川和江さんを思い出し、頂戴しました。
去年のNHKの朝ドラ『虎に翼』の“翼”にも重なったのかな。

昭和46年8月に発行されている。わっ、53年前!
堀文子さんの装画は、ページいっぱいに9点もある。

収録されている詩人は16人。

与謝野晶子、深尾須磨子、竹内てるよ、林芙美子、永瀬清子、中村千尾、高田敏子、三井ふたばこ、滝口雅子、石垣りん、堀内幸枝、茨木のり子、岸田衿子、新川和江、白石かずこ、吉行理恵。

この詩集ができたとき、与謝野晶子さんと林芙美子さん以外のかたはご存命で活躍されていた。そして昨年6月、白石かずこさんも亡くなり、皆さん、鬼籍に入られました。

お一人につき、2~3作品挙げられている。

初めて知る方も多い。詩って、あっさりした言葉に作者の凝縮した気持ちが埋め込まれていて難しいものもあるけれど、自分流の読み方で、時に親近感をもって和んだりもする。

与謝野晶子の「君死にたもうことなかれ」、石垣りんの「表札」、茨木のり子の「わたしが一番きれいだったとき」、新川和江の「わたしを束ねないで」などは教科書に載っていたのもあり、50~60代以降の女性はたぶん、すっと思い出す。男性はどうかな。詩によっては反発する男性もいるよね。
 
新川さんは解説で、収録が叶わなかった20名の詩人の名前を挙げ、続けて「<つばさある精神の所有者>たちの名を挙げはじめたら、とどまるところを知らぬほどに、わけても戦後の女性詩人の台頭ぶりは目覚ましい」と書いておられる。静かに熱く思いを言葉で紡いでこられた先人への敬意ですね。

“つばさある精神”、高みを目指していくようで、ワクワクします。

♪この大空に翼を広げ飛んでゆきたいよ~、かな。
シャンソンの『詩人の魂』のメロディが浮かぶ。うっとりと流れるような曲でした。

与謝野晶子が『みだれ髪』を発表したのは明治34(1901)年、「君死にたもうことなかれ」は1904(明治37)年。かれこれ120余年が過ぎました。

新川和江さんの作品を一つ。

どこかで

コップの バラが ひらきました
ちょうど今
世界のどこかで
子どもが ふふふ と笑ったからです

きれいな 虹が かかりました
和んでいる空
世界のどこかで
子どもが うたを うたったからです

小鳥が ぱっと とび立ちました
ゆれている枝
世界のどこかで
子どもが いきなり かけ出したからです

『翼あるうた』新川和江編 童心社 昭和46年8月20日


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