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イオンと変人と私

自炊が好きな私は、ほぼ毎日のようにスーパーへ通う。日常に溶け込みすぎて、スーパーを思い出深い場所として選ぶ人は少ないだろう。でも私には非常に思い入れのあるスーパーがある。

約6年前、長年住んだカナダを離れ、私は彼と一緒に福岡へ移り住んできた。初めて住んだ家の近所にあったのが、誰もが知るスーパー、イオン。

カナダ人の彼は引っ越してきて初めて訪れたこのイオンを絶賛した。

「すごいよ!!お酒もたくさん置いてるし、焼き立てパンもある!とにかくお惣菜が全部美味しそう!!」

そう言って喜ぶ彼を見ながら私は「いや、どこにでもある普通のイオンじゃん!」と思った。

世界中の人たちを魅了するイオン

このイオンは住宅街にポツンと建つ複合型スーパーで、客層は近所のお年寄りや若いファミリーという感じ。都市部に存在するスーパーとは違い、ビッグチェーンといえどローカル感が溢れている

そんなイオンに私たちはたくさんの外国人たちを送り込んできた。

SNSで福岡に住み始めたという投稿をしてみたところ、いろんな人が私たちカップルに会うという口実をつけて福岡へ遊びに来た。カナダ、アメリカ、イギリス、ハワイ、オーストラリア…世界中いろいろな場所に暮らす彼の親族や友達、そして私の友達も次から次へと来福。

そして彼らを決まって連れて行くのが、先ほどのイオン。もっと案内すべきいい場所があるだろと言われそうだが、驚くほどに全員がイオンを賞賛するのだ。

カレーパンにハマってしまい、毎朝イオンに通うカナダ人。

お土産を買いあさる彼の両親。

何十分もお酒コーナーから出てこれなくなるイギリス人。

みんながイオンの虜になった。

変なアメリカ人にも神対応の店員さん

ローカル感の出ているイオンに毎回違う外国人を連れてくるので、店員さんには不思議なカップルと思われていたかもしれない。

ただ外国人を連れて来るだけではなく、文化の違いによって、お店に迷惑をかけたこともある。彼の義理の兄の話だ。

義兄はアメリカ人で、自分ルールをいくつも持っている。日本にいると”変わり者”として扱われるタイプだろう。
そんな義兄を連れていつものイオンに行った。私たちが夕飯の買い物をしている中、彼は1人フラフラと店内散策へ。(お店に入って1人フラ~っと消えるのは日常のこと。)数分後、ポテトチップスを片手に戻ってきた。

「このチップスは最高にうまい!食べてみろよ!」

彼はそう言って開封済みのポテトチップスを私たちに差し出した。

いつもの見慣れたポテトチップス。私も大好きで、美味しいことくらい知ってるわ!と心の中で突っ込んだ。そのポテトチップスの袋に手を伸ばしかけたところで感じた違和感。

いや!!待て!!コイツ今財布持ってないぞ!!ボリボリ美味しそうに食べてるこのポテトチップス、どうやって買ったんだ?!!!

私「これって支払いした……よね?」

恐る恐る聞いてみた。

義兄「いや、まだだけど?何か?」

……


っておーーーーーい!!!!それって万引きと一緒だから!!

海外だと購入前に商品を開けてしまっても、最後に買えばOKという文化がある。(と言っても大半の人はちゃんとお会計後に開封する!)どうやら、先に味見して購入したってお金を渡す行為は一緒じゃないか、というのが言い分らしい。

日本語を話せない義兄の代わりに私たちが店員さんに説明。目をまん丸くして驚いてはいたものの、最後は笑顔で「大丈夫ですよ!」と神対応してくれた店員さん。(その節はご迷惑をおかけしました。)

思い出だけを残して突然消えたイオン

2年間ほぼ毎日通ったイオン。たくさんの思い出を作ってきたのに、突然閉店してしまった。契約期間が満了したとのことで、閉店のアナウンスからあっという間に取り壊された。

あっけなく最寄りのスーパーを失ってしまい、私たちの生活は一気に不便に。近所の友達から別のスーパーを勧められて行ってみるが、どこかしっくりこない。職場の近くにある別のイオンでカレーパンを買ってみても、やっぱり違う

「どこにである普通のイオン」ではなくなっていた。閉店から3年経過する今でも時々思い出し、彼と2人でカレーパンの味について語り合うことがある。私たちにとっては二度と行くことのできない、オンリーワンイオンなのだ!

メディアパルさんの企画が自分の思い出と重なったので、昔話を書いてみました。#好きなスーパー


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