がんをめぐる冒険(34)退院後は銭湯で心と体を温める

 ここ10年近く毎日銭湯に通っています。
家にお風呂がないわけではありませんが、銭湯が好きです。
銭湯のほうが温まるし、一人暮らしの私にとって、毎日通うことが運動にもなるし、近所の人と他愛もない挨拶やおしゃべりができて和みます。時には「今日はこんな取材に行った」という話を師ながら、インタビューの内容を話しているうちに普通の人の疑問点や関心のポイントを聞いて、文章の構成を考えたり、アウトプットの場としても助かっています。

 1回目の検査手術と2週間後に開腹手術で2カ月ほど湯舟禁止令が出ました。膣から黴菌が入らないようにとのことで湯舟に浸かることができず、その間は銭湯で足湯とシャワーで体を温めました。
真冬に家で足湯だとやはり温まりません。足だけ浴槽に浸かり、肩にお湯で温めたタオルをかけるとやっぱり銭湯の温まり方は違います。
 おなかに大きな傷ができても、髪がなくても、近所の人たちが話しかけてくれるので周りの人が引くこともなくいつもどおりいられました。みんなが話しかけてくれるので、自宅療養で会社に行かなくなっても気持ちが塞ぐことなく、いつもどおりでいられました。

 よく考えると、私の病気を一番近くで見ていたのはお風呂友達で、一番助かったことが多かったのもお風呂友達のおばちゃんたちです。特に、抗がん剤治療の後のうつ状態にも、お風呂に通うことでかなり軽減されたし、食べられないときにカフェに誘ってくれたりおばちゃんたちが助けてくれました。
 ちょっと前を歩く先輩が経験を話してくれるので共感できるし、みな病気の経験があるからやさしいし、ちょうどいいタイミングで手を差し伸べてくれます。
 今回特に助かったのは、お風呂友達のなおこさんとおおつきさん。
 なおこさんは彼女は60代で、娘と2人暮らし。30代前半に子宮がんで卵巣を切除し、抗がん治療を経験したそうです。当時はうつ状態になり、社交的で飲みの席が大好きだったのに一転、飲みに行っても面白くなくて、ずっとイヤホンで音楽を聞いていたそうです。なおこさんの友達がイヤホンしていても無理やり飲みに連れて行き、徐々にうつは消えていったそう。そんな経験談も聞いていると、うつになっても抗がん剤のせいだと思えます。
 経過を話すと親身になってくれて、2回目の手術後はこんなメッセージをくれました。
「少し辛いかもしれないけど、何とか頑張れば今までよりもっと楽しいことが待ってます。
ネコさんのパワーで頑張って退院してきてください。
お風呂で会いましょう」 

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