がんをめぐる冒険(30)おかげで脱毛も怖くなくなった

 おととい、20年来の友達のじゅんちゃんが乳がんで抗がん治療を始めました。彼女は抗がん剤治療で髪が抜けることに動揺し、共通の友達のひさよんに泣きながら電話してきたそうです。
 彼女はずっとアパレル業界で働き、会社を立ち上げて10年以上、社長としてやってきています。コロナ禍で服が売れなくなると、いち早くかわいいマスクを作り、ネコを飼いだすとネコ服のブランドを作ったり、常にアイデアと行動力でガンガン前に進むヒトでした。まさに安野モヨコのマンガ「働きマン」のような、リスペクトを込めてワーカーホリック(笑)。それだけ仕事に対するプライドもあるし、ファッション業界にいる身としては髪が抜けるのは耐え難いものがあります。

 私も髪が抜けるのはショックでした。もう20年以上ロングヘアで、腰までありましたから。手術の間も長い髪を編み込んで三つ編みにしていました。でも、2度の手術入院で脱毛した先輩たちにたくさん出会い、みなさんの脱毛までの話を聞いていたので、ある程度の〝心構え〟と〝諦め〟で、心は落ち着いていて、みんな頑張ってるからどうにかなるという前向き気持ちになっていました。おかげでダメージは最小限に抑えられたんだと思います。

 じゅんちゃんは、6,7年前に子宮筋腫で手術をし、切除した筋腫の中にがんが見つかったことがあります。がんが筋腫の中に包まれていて、転移もなかったという幸運に恵まれました。ところが先日、脇を搔いていたら胸の脇にしこりを見つけ、それが乳がんでした。2㎝を越えているので一度抗がん剤で小さくしてから手術をするそうで、おととい1回目の抗がん剤治療をしていました。彼女の場合は通院でがん治療が始まり、がん経験者と会っていないので、これから自分の体に何が起こるのかわからないことと、。私は自分の経験を伝えて、応援のメッセージを送りました。

 がんと検索すると怖い情報か、有名人ががんで脱毛した写真ばかりがヒットする。
 脱毛した写真のインパクトは大きくて、閲覧数は爆発的にのびるし、応援の声も届くでしょう。でも、これから脱毛する人にとっては恐怖と不安を煽るものでしかありません。でもがん患者にとって必要な情報は、脱毛する前に何を準備するべきことだったり、抗がん剤治療の情報やなかなか髪が伸びてくれずにいる間の対処法や治療中のお金のことなど現実的な内容なのではないでしょうか?
 私はちょっと先を歩いた普通の人の経験をお話することで、みなさんの心のダメージを最小限にできたらと思います。

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