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大雪でのギャンブル

1月6日関東では大雪が降った。この時期は、よく大雪が降るイメージがある。成人式や、センター試験で大雪が降り「あぁ大変そうだなぁ」とテレビを見て思うことが今まで何度あったことか。

その日は今年初出社をする日だった。昼前に家を出るとパラパラ雪が降り始めていて、都内へ移動しても、パラパラパラと少し雪が増えていた。そのまま雪は降り続け、気付くと窓の外を見ると真っ白になっていた。

国立競技場もこの通り真っ白だ。

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都内で雪が積もった際に一番にする行動はさっさと帰宅するである。電車が止まると、駅には人が溢れ、とんでもないことになってしまう。

積もり始めてから少し出遅れたが、16時には帰宅することにした。僕は雨や雪に強い靴を持っていない。岩手のばあちゃん家に帰る時も普通にスニーカーで帰る。もちろん雪道を歩くことは出来ない。

その日は、歩きやすいが、雨が一番染みやすい白のスニーカーを履いていた。まさかこんなに雪が降ると思っていなかったからだ。「うわ、最悪だ」と思い、足先を丸めながら、身長に雪道を歩く。足先を丸めるのは、スニーカーの先端から、雪が染み出してくるので、少しでも靴下への染み込みを遅らせる為だ。

幸いにもその日の雪はフワフワで、スニーカーに雪が付いても、振り落としながら歩いたので、ほとんど染みこむことはなかった。

駅に無事に着き、電車もまだ止まっておらず、遅延も数分程度と問題無かった。


そのまま家の最寄り駅に到着。バスは3分後に出発。バス停へは、速歩きで約2分なので急いでバス停着。すると十数人が並んでいた。「ん?人多いな、なんで?」よく見るとタクシー乗り場にも列が出来ており、「これはバスが遅れているな」とすぐに理解した。

最寄り駅には、僕が利用するA社ともう1つB社の路線バスがある。B社のバスは通常通り何本も駅に到着し、出発しているのだが、A社のバスは来ない。「なんだか前に大雪が降った時もA社は来なかったような…」

これは、A社とB社でバスの性能が違うからなのか、それとも「大雪がなんだ!お客様を運ぶのが我々の仕事だろう!雪でも何でもバスを走らせんかい!」という、B社にものすごい使命感があるのか、なぜかは分からない。


そのまま20分以上、バスが来なかった。乗る予定のバスの、次が20分後発だったので、「となると、乗る予定だったバスはどこに行ったんだ?」「どういうダイヤでバスを運行しているの?」と疑問点が浮かぶ。何より、大雪で外で20分以上待つというのは、寒くて仕方ない。

バスに乗る際も、運転手さんから「大雪でダイヤが乱れており申し訳ございません」みたいなアナウンスも無かった。

「おいおい、仕方無いにしても、形だけでもアナウンスした方がいんじゃね?」と、昔の僕であったらイライラしていたのだが、なぜかイライラすることは無かった。

20分はまだ許容範囲、あとは帰宅するだけだったので、僕のイライラのキャパ内で収まったのだろう。これが1時間待ちだと、待っている客の雰囲気はもっと殺伐をしていたはずだ。

「アナウンスが無いということは、この運転手さんは予定通り、発車しているということ?となると、やはり乗ろうとしていたバスはどこに行って何をしているの?大雪の中で神隠しにでもあったの?」と、結局バスが遅れている仕組みを理解できないまま、無事に帰宅した。


翌日は、岡山に出張だった。朝起きると、新幹線は普通に動いているようだ。

先に説明しておくと、自宅からは駅へは4つのルートがあり、全てアクセスが悪い。

①A駅、バスで20分、徒歩で53分(昨日利用した駅)

②B駅、バスで20分、徒歩で52分

③C駅、徒歩で18分

④D駅、バスで12分、徒歩で30分

岡山へは新幹線で向かうので、④D駅を利用する。9時53分のバスに乗る為、5分前に家を出た。晴れているので、日光が当たる部分は雪が溶け、日陰の部分には雪が残っている。

バス停が見えた時に、一台のバスが発車していった。「ん?あれはどこ行きのバスだ?」と思ったが確認出来なかった。

バス停前の道路には雪が無い。しかし、バスは昨日と同じく時間になっても来なかった。

とりあえず待つことを選択する。だって、道路に雪は積もっていないのだ。

5分経過した。「今日も遅延しているのかよ…」幸いにも晴れているので、寒さは感じない。

まず、時刻表を調べると、乗ろうとしていた53分発の前は、9:33分発。次のバスは、10:23分発。

Twitterで検索してみても有益な情報は無い。とある駅では1時間以上待っているツイートを見つける。A社のTwitterを見ても、例えば、「34路線、60分遅延」みたいに、ただ無機質なツイートが連発されており、12万人のフォロワーがいながら、ほとんどいいねが付いていなかった。

さらにA社のサイトに行き、遅延情報を見るも、Twitterと同様で、詳細な状況はつかめない。しかし、バスのリアルな位置が分かるらしい。

乗る路線を検索すると、次のバスはまだ駅にいて、出発していない。目的のD駅の途中まで行く違う路線のバスを調べると、出発はしている。「よし、こっちに乗って行くか」と作戦を変更する。

ちなみに乗ろうとしていたバスは、どこのバス停にも表示されていない。昨日と同じ状況だ。本当にどうなっているのか教えて欲しい。

その後は、定期的にバスのリアルな位置を把握する。しかし、作戦変更したバスが一向に進まない「は?何でだよ」

ここでさらに2つの作戦を検討する。

目的のD駅へはバス停からは、徒歩で25分。しかし、この凍っている道の状況だと、かなりしんどい。

C駅へは、バス停からだと20分。しかし、途中激しい下り坂がある為、かなり怖い。そこから電車で1駅乗りD駅に着く。

バスのリアル運行情報を見ながら悩みに悩んだ。これから岡山県倉敷市に行くのだ。倉敷の会場に着くまでには、新幹線、電車、バスと5時間以上かかる。

出張の初っ端から靴が濡れる、雪で滑るリスクを負いたくなかった。

その為、悩んで判断が遅れていたのだ。もし普通に晴れていたら、迷わず徒歩を選択する。

「うぅううううー」と頭からガスが出るくらい悩んだ。ガスの中から、僕の中の邪悪な部分が出てきて、もう一人の僕が作りあげられるくらい悩んだ末に、「よし!徒歩だ!途中バスが来たら仕方ない、それに乗ろう」

時刻は10:13分。9:53分発のバスに乗る予定から、20分遅れでスタートした。


バス停からは、早速下り坂が続く。雪が無い所、もしくはフワフワの雪が残っている部分を慎重に歩く。道路も歩道も思っていたより凍っていて怖い。

序盤、歩道部分に雪が多かったので、車がいないのを確認し、雪の無い車道を歩いた。しかし、車道がカチンコチンに凍っていて、豪快に滑りそうになった。

「あぁ、もし車来て滑ったら、俺は死ぬじゃないか…。なんで朝からこんな怖い思いしなきゃいけないんだよ」と、雪があっても安全に歩道を歩く選択をする。

歩き進むと、歩道がない道が続く。トラックやバスも走るので、夜道に歩く時もかなり危険な道だ。さらに今日は、雪が積もっている。道路の端は日当たりが悪く凍っている。何度もこけそうになりながら、少しでも安全な道を探し、駅へと歩いた。


歩きながらも、ハライチのターンを聞くことはかかさない。昨夜の放送を聞きながら歩く。雪道にビビりながらも、この週の澤部のトークは特に面白かった。ニヤニヤしながら、雪道をゆっくり歩き続けた。


バスに追い越されたくないので、本当は早歩きで歩きたいが、安全な道を選び、ゆっくり歩く為、通常よりは遅いペースだ。大きな車の音を後ろから感じる度に、後ろを振り向き確認する。ほとんどはトラックで、違う路線のバスに一度追い越されただけだ。

駅までは残り約5分。「この勝負勝てるかも」と思うも、気を抜かず最後まで慎重に歩き続ける。

そして、とうとう駅が見えてきた。「よし!この勝負勝ったぞ!俺の選択は間違っていなかったんだ!」と思った矢先、僕の横をバスが通り過ぎていき、10秒後にバス停に到着した。

そのバスは、僕が乗ろうとしていたバスだった。


結局、僕は勝負に負けたのだった。1分という僅差だったが、勝負に負けた。

もしかしたら、同じバス停で待っていた人が、歩いている僕を見て、「あ、あの人、我慢できずに歩き始めた人だ。あーバス停で待って良かった」と思われたかもしれない。

こんな危険を冒して悔しい思いをするのであれば、今度からはタクシーを呼んで駅に向かった方がいいな、と2022年初めての学びとなった。


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