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電車の乗り方とうれしい出来事
日吉駅で乗り換えの電車を待っていた。乗り換えの時間が12分もあったので、ホームでは約10分弱待った。この10分をとてつもなくもったいないと感じてしまう。電車移動はヤフー路線情報を使用しているが、もちろん乗り換え設定は、「急いで」にしている。やっと、乗る電車がホームに滑り込んで来た。僕は3号車の位置で待っていた。
昔、テレビで動体視力の強者を紹介する番組で、電車や新幹線の窓に貼られた文字を読めるかという実験のように、1号車から車内の混雑状況を目で追いながら、座れる可能性があるのか、瞬時に判断をする。
僕は、電車で座れるならば絶対に座りたいタイプで、ガラガラの電車なのに立っている人、混雑した電車で自分の前の席が空いているのに、つり革を掴んだまま座らない人の考えが、全く理解出来ないタイプの人間だ。
1号車では、7人が座れるシートに1個ずつ空席がある感じだったが、2号車を見るとほとんど空席がなくなり、「これは座れないな」とほぼ諦めた。しかし、電車がスピードを落とし止まるまでは、けして諦めはしない。ギリギリまで電車内の状況を見ながら、ベストな判断を下したい。
3号車は、つり革を掴んで立ってる人はいないが、乗るドアの反対側のドア、つまり閉まっているドアの右2個目に座っている人の前に、フードまで被った黒い姿が見えた。背丈は小学生4年生くらいだろうか。立っている人はその小学生らしき人だけだった。
乗り込む時に、僕はドアの右側。お姉さんが左側。電車内のドア横には、左側に女性が立っていた。ホームで待つお姉さんよりも僕の方が早く待っていたし、ドア横左に女性が立っているので、僕の方が先に電車内に入る。これが普通の流れと思っているのだが、世の中にはマナーとかいう概念がなく、あつかましいという言葉も知らない、残念な人がたまにいる。
お姉さんの出方を雰囲気で感じながら、ドアが開くのを待つ。ドアが開いた瞬間、お姉さんに動きを感じなかった。その一瞬で、僕が先に入るのを待っていると判断した。「なんて、ちゃんとしたお姉さんなんだ」と、こちらも一瞬で思いつつ、「どんな人か顔を確認しておけば良かったな」と思う。ちなみにここまでは、電車に右足を踏み入れた段階だ。
お姉さんのことを考えるのは、右足の踏み入れまでで、左足を踏み入れながら、まず右側の車内の状況を見て、一応左側の状況も確認する。
お姉さんが譲ってくれたので、もし左側に空いている席があったら行こうと思ったが、空いてなさそうだったので、右側に向かいつつ、先程のフードを被った背丈が小学生くらいの姿を見ると、黒いコートだけで、足が見えなかった。
「外国人の小さい子供が、キャリーケースの上に座っているのかな」と思ったが、どうやら違う。足の不自由な方が特殊な車椅子みたいなもの、(五体不満足の表紙で乙武さんが乗っているようなもの)に乗っているのかと思ったが、それも違うとわかったと同時に、答えがわかって驚愕した。
なんらかの大きな弦楽器のケースに、黒いフード付きのコートをかけていたのだ。車外から見るとフードを被った人の姿にしか見えなかったので、とても驚いた。
そこでふと思ったのが、ハライチ岩井が、昔ラジオのトークである。電車内で人が倒れたのに、誰も助ける素振りを見せない。「東京ってやっぱり冷たいな」と思っていると、明らかに酔っぱらったおじさんが、倒れた人の友達を思われる女性に、「動かしちゃだめだ!寝かせたままにしておけ!」と一人だけ大声で言っている。しかし、「女性は大丈夫です…違うんです…」と泣きそうになりながら答えていたら、倒れたのは、人ではなく、ケースに入った大きなコントラバスだったというオチのトークを思い出した。
「確かにこれは人と勘違いするわ!」と大好きなハライチ岩井に共感できたことに嬉しさを感じつつ、どこのつり革を掴むかを判断しなければならいない。僕は、座っている人と人の間の、つり革を掴むことが多い。左右どちらかの方が降車すれば座れるからだ。
しかし、次の武蔵小杉駅は、降車する人が多いことがわかっていたので、特にシビアに考えることなく、他の方に最も邪魔にならない、中央のつり革を掴んだ。中央だと、座っている人の目の前なので、もし満員電車だったら目の前の人が降りないと、座ることが出来ない。
ちなみに、右後ろには、黒いフードを被った、恐らくコントラバス?は、スッと立っているのを感じる。僕意外の人も、一瞬、「これ何?」と思っていることを、目で確認はしていないが、なんとなく感じていた。
武蔵小杉では、目の前のお姉さんは降りずに、2個右のお姉さんが降りた。車内は空いていたので、その空いた位置に座ると、目の前は黒いフードを被ったコントラバスマンがいた。勝手に男性と決めつけたが、現実世界にポケモンがいたらこんな感じなのかな、と想像させるようなやけに生物的ぽいフォルムをしている。
コントラバスマンの飼い主は、メガネをかけた男性だった。年齢は僕より若くも見えるし、同じくらいにも見える。僕から見て男性の左側、ドア横の位置には女性が座っていた。女性の頭上には、亀屋万年堂の「春の苺フェア」の広告。苺スイーツが6種紹介されていたが、僕がそそられるスイーツはなかった。ばあちゃんは、亀谷万年堂のナボナが好きだが、「何歳になると亀谷万年堂が好きになるんだろうか」とふと思った。
僕から見て、飼い主の男性の右側には、50代くらいの仲良さそうな夫婦が座った。男性の隣には奥様。座るやいなや、コントラバスマンを見て笑っていた。「なにこれ、あなた!人みたいね、ははは!」みたいな感じで笑っていた。
「そりゃ笑いますよね!」と勝手に仲間ができたみたいに感じ、嬉しくなった。
その後、男性は肌寒くなったのか、コントラバスマンから黒いコートを奪い取り、自ら羽織った。コートを剥ぎ取られたコントラバスマンは、だたのコントラバスケースとなり、本来のスリムな流線型のボディを露わにした。それはアカデミー賞のトロフィーだったり、彫刻、新幹線の先頭車両を想像させた。
そうこうしていると、降車駅の水道橋に着き立ち上がる。男性とコントラバスは、まだ乗ったままだった。「男性はどこまで行くのだろう」と思い、ふと男性とコントラバスを見たが、男性は目を閉じていて、何もヒントを得ることはできなかった。ただ、男性のメガネはレンズの上半分にフレームがあるタイプだったことに気付いた。
水道橋に着くと人が多く、皆興奮を隠しきれずざわざわしていた。「今日は東京ドームでなんのイベントがあるのかな?」と「東京ドーム イベント」で検索しながら、仕事場に向かった土曜日だった。
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